生まれた時からな
でも、そうは言っても完全に体が透明で素っ裸ってのはどうにも落ち着かねえな。だから川の泥を手に取って、全身に塗りたくった。その上で、でかい葉があったからそれを何枚かちぎって、葉脈ってのを抜き取って糸代わりにして腰ミノ風にまとめる。俺でもこの程度のことはできるんだよ。
すると、俺の見てる前で、トカゲみてえのが鳥に捕まって、そのまま食われた。
ふん、鳥が食えるんなら、そんな強え毒はねえってこったな。
そう察して、俺も手近な木の幹にとまってたトカゲみてえなのを捕まえて、そのまま頭から齧ってやる。正直、美味いもんじゃねえが、十分に食えるな。これで食い物は何とかなりそうだ。
『そんな躊躇なく生でトカゲを食えるとか、おかしい』
ってか? そうだな。俺は<普通>じゃねえよ。生まれた時からな。
聞いた話じゃ、母親の胎から出てきた途端に、看護師仕様のメイトギアの指をへし折ったそうだ。大人の男でも、素手じゃそう簡単には折れねえロボットの指をだ。そんな赤ん坊が<普通>なワケねえだろ。
で、医者によると、俺の筋肉はゴリラ並かそれ以上なんだと。
いや、筋肉だけじゃねえな。体のつくりそのものが野生のゴリラ並ってこった。だから俺の親は、世話をすべてロボットに、メイトギアに任せてた。その所為もあって俺は、そのメイトギアを自分の母親だと、六歳くらいまで思ってたよ。
もっとも、それで何か困ったことがあったかと言やあ別になかったけどな。
両親は金だけは出してくれてたしよ。
だが、俺を見る目はいつもどっか怯えてたってのは、今なら分かる。まあ無理もねえか。自分の家に野生の獣がいるんだぜ? 怒らせてキレさせたらそれこそ首だって引きちぎられかねねえ<猛獣>だ。だから学校にも通えなかった。ずっと講師仕様のメイトギアがつきっきりの自宅学習だ。他所様の子供を怪我させるかもしれねえしな。
筋力を抑える薬とかも投与されてたらしいが、それも学校に上がるはずの歳の頃には耐性がついちまってほとんど効かなくなっててよ。
大して運動もさせてもらえてねえのに衰えるどころか順調に筋力は育ちやがる。しかも、何食ったって腹も壊さねえ。自分じゃ覚えてねえが、何でも庭でバッタやカマキリを捕まえてはオヤツみてえにムシャムシャ食ってたそうだ。それでも寄生虫とかにやられたこともない。
中学に上がる歳の頃には、抑えてても無駄だってえことで、逆に発散させるために軍の施設でロボット相手に格闘訓練をするようになったな。
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