どこまでふざけた真似を

こうやってはっきりと姿を見ればそれこそ<子供番組出てくる怪人>ってえ印象が強かったが、同時に、


<正真正銘、生身の獣>


ってえことも確信した。だからこそ勝てる。ぬめる川底に足を叩きつけるようにして踏み込み、存分に腰のひねりを活かして拳を叩きこんでやる。


「ゲハッ!!」


正面にいた奴は声を上げて水中へとふっとんだ。だが、これでも死んでねえだろうな。そういう手応えだった。


だがそんなことに構ってる暇はねえ。間髪入れずにその隣にいた奴にも同じように拳を叩きこんでやったが、こっちも水中に吹っ飛んだだけで<死んだ手応え>はなかった。


まったく、頑丈な奴らだぜ。


最後の奴には、拳を叩きこむ態勢が作れなかったことで、腕を掴んで引き寄せ、頭が下がったところに頭突きをくらわしてやった。


が、これまた、


「硬えっ!!」


頭突いた俺の方が目の前に星が飛び散ったじゃねえか! まったく!




でもまあそれでも、<ワニ怪人>共はどうにか退散させることには成功したようだ。


勝利の余韻に浸る暇もなく、俺はとにかく川岸へと上がった。濁った川の中にいたんじゃそれこそ他にどんなヤバい生き物がいるか確かめることもできやしねえ。


殴り合えるサイズの奴ならなんとかなるだろうが、<カンディル>とかのヤベえ肉食魚辺りがいたら一巻の終わりだ。いくら俺でも小さくて数の多いのを相手にはしてられねえからな。


こうして何とか岸に上がったところで俺はようやく、自分の体の異変に気付いた。


「なんじゃこりゃあっっ!?」


いや、ホントにそうとしか言いようがねえんだよ。何しろ腕も足も腰もイチモツも全部『透明』なんだからよ。それも、


『なんとなく透き通ってる』


とかってえレベルじゃなく、ガラスみてえに綺麗に透明なんだ。


神様だか何だか知らねえが、どこまでふざけた真似をしてくれるってんだ。


ただ同時に、『透明』ってえことで頭によぎるもんもある。


『まさか、<あれ>が関係してんじゃねえだろうな……』


<あれ>


コーネリアス号が故障して不時着した惑星で俺達を襲った、


<透明な何か>


そいつが真っ先に頭に浮かんだよ。


とは言え、今の段階じゃ何も分からねえ。詮索するだけ無駄だな。


ってなわけでそれは後回しにして、まずは安全の確保だ。ワニ怪人の方はもう追ってこねえようだが、いかにも<ジャングル>ってえ密林がすぐそこまで迫ってやがるし、そっちにも当然、ヤベえ肉食獣の類はいるだろう。ワニ怪人がいるってえなら、<トラ怪人>もいるかもしれねえ。<イノシシ怪人>もいるかもしれねえ。


さて、次はどんな出し物を見せてくれるんだ? おお?


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