第70話 最終決着! vsドラゴン
勝負の行方は最後の一撃にまでもつれた。俺かパパレのスキル、どちらかがドラゴンへ叩き込めば勝てる。逆に2人とも不発に終われば俺たちの負けだ。
「俺が先に行く。パパレは俺に続いてくれ」
「了解だよっ、お兄ちゃん」
俺は剣を構え、パパレは棍棒を構え、ドラゴンへと対峙する。
「ルージュちゃん、もしも、もしもだけど俺とパパレが倒されたら降参してね」
「ううん、私だって冒険者だよ。2人の後は私に任せて。シンヤ君に貰った短剣だってあるんだし」
ルージュちゃんも短剣を持ち、身構える。
「ふぅ、じゃあ最後まで3人で頑張ろう!」
威力が増すよう近距離から〈烈風斬〉を放ちたい俺は、間合いを詰めようとダッシュする。
ドラゴンは近づこうとする俺を振り払うため、前脚を振り下ろし踏み付けにきた。ドラゴンの前脚を受け流そうとして振り上げた剣とドラゴンの前脚にある鋭い爪が交差する。
凄まじい衝撃だ。剣はその衝撃に耐えられずガキンッ!という音を発して折れてしまう。
「ここでかよ!」
剣が折れた事により俺は斬撃である〈烈風斬〉を繰り出す事ができない。俺の攻撃は不発に終わった。
しかし、俺たちにはまだパパレがいる。俺に注意の向いたドラゴンに向かって、後方から走り込んできたパパレが飛びかかる。
レアスキル「雷鳴の乱撃!」
パパレが最後のスキルを発動しようとしたその時。
『ワシの読み通りだ』
ドラゴンがそう呟き、パパレと同時にスキルを発動する。
ノーマルスキル『樹海氷穴、氷霧』
パパレのレアスキル〈雷鳴の乱撃〉とドラゴンのノーマルスキル〈樹海氷穴、氷霧〉が互いに打ち消し合う。
2つのスキルの威力は互角だった。どちらの攻撃も相手へは達しない。
最後の希望だったパパレの一撃もドラゴンへは届かなかった。
ドラゴンも最後の力を出し切り、俺たちの攻撃を防ぎきったと思っているのだろう。動きが緩慢になった。
俺は、動きが緩慢になったドラゴンの懐に入っているというのに攻撃するための武器がない。これほどもどかしい事はない。
あと一撃。あと一撃なのに、その一撃が遠い。
俺はドラゴンの足元で、パパレの攻撃を見守りながらも色々な考えが頭を巡っていた。
パパレから預かっている棍棒を〈持ち物〉から取り出す? 間に合うのだろうか。間に合ったとしても棍棒では斬撃である〈烈風斬〉の威力が落ちてしまう。やはり剣でないとダメだろう。
その時、俺とパパレの攻撃が不発だったの見たルージュちゃんがドラゴンへ立ち向かおうとしていた。ルージュちゃんが手に持つ短剣がキラリと光る。刃先が青白く光る短剣だ。
「そうだ! ルージュちゃんの短剣!」
ルージュちゃんに向かって俺は叫んだ。
「ルージュちゃん、短剣! 短剣、貸して! こっちに投げて!」
「えっ、短剣?! 分かったよ、シンヤ君。それっ」
ルージュちゃんは足を止め、手に持っていた短剣をすぐさま俺の所へ投げてくれた。
この短剣を買った武器屋にいた軽そうな店員はこの短剣はドラゴンをも倒せると言っていた。セールストークだとしても、この状況でドラゴンを倒せなかったらあの武器屋にクレームだ。
俺はルージュちゃんに投げてもらった短剣を手に取る。ドラゴンが短剣を手にした俺を見てギクリとした表情を見せる。しかし、もう遅い。
「これで終わりだ!」
短剣を手にした俺はスキルを発動する。
ノーマルスキル「烈風斬!」
青白く光る刃先が一層輝きを増し、真空の刃がドラゴンを襲う。
『グオオオオオオッッ!!』
ドラゴンに最後の一撃を加えた。ドラゴンは身体から力が抜け崩れ落ちた。
ドラゴンから先程まで感じていたオーラがなくなった。
俺たちは、ついにドラゴンを倒した。
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