転生！リセマラ勇者〜神様は世界を救う転生者の事を考えているの？エアプなの？〜

第64話 試金石！ vs岩イノシシ

　俺はそろそろドラゴンと戦いたいと考えていた。

　ここで〈次元の神秘〉で転移して岩イノシシから逃げるのは簡単だ。

　しかし、俺たちパーティーは『ポメポメ山』でレベルアップし、精神面でも成長している。

　その証拠に強者のオーラを放つ岩イノシシを目の前にしても、俺、ルージュちゃん、パパレ、誰一人として臆していない。

　俺は、『ポメポメ山』中腹最強の魔物である岩イノシシを相手にどこまでやれるのか、試してみたいと思う。

　岩イノシシとの一戦をドラゴン戦へ向けての試金石とする。

「ルージュちゃん、パパレ。岩イノシシを倒すよ。搦め手はなしで正攻法でいくよ！」

　俺は２人に決意を示したつもりだが。

「お兄ちゃん、搦め手ってなに？」

「えっ、今そこ気になる？　えっと、弱点を突いたり、セコい事しないで正面から戦おうって感じかな」

「そっか、了解だよっ。お兄ちゃん、セコい事が好きなのに珍しいね」

「えっ、パパレ、俺はやっぱりセコい事が好きって思われてるのかな」

　味方であるはずのパパレに機先を制されたが、俺は気合いを入れ直し岩イノシシと対峙する。

「ルージュちゃん！　パパレ！　最初から全力でいくよ！」

「了解だよ、シンヤ君！」

「お兄ちゃん、一番最初はパパレがいくよーーっ！！」

　パパレが棍棒を構える。小さなパパレがより低く小さく身構える。

　レアスキル「雷鳴の乱撃！」

　ゴオオオオオオンンン！　という爆音に岩イノシシが少したじろぐ。

　パパレのレベルアップと共に爆音はより大きくなり、棍棒を纏う雷も大きくなっている。

　パパレは小さく屈めていた身体を弾き出すように真っ正面から岩イノシシに突っ込んだ。まさに俺の言葉通り真っ正面からいった。スキルの効果もありスピードアップしたパパレは一瞬で岩イノシシとの距離を詰め、岩のように硬質化した頭部を棍棒で殴りつけた。

　殴打と電撃による二重のダメージが岩イノシシの頭部を襲う。

　岩イノシシは少しヨロっとしたが、ブルッと頭を振りすぐに態勢を立て直す。

　俺も見ているだけではない。間髪いれずスキルを放つ。

　ノーマルスキル「烈風斬！」

　パパレが真っ正面から岩のような頭部を攻撃したので、俺もそこを狙う。

　真空の刃が岩イノシシの頭部へ命中する。しかし、俺の〈烈風斬〉ではほとんどダメージを与える事ができないようだ。岩イノシシは平然としている。

　今度は岩イノシシが俺に向かって突進してきた。下顎から突き出た鋭い牙が俺に向かってくる。

　そこへ。

　ノーマルスキル「氷弾！」

　サイドからルージュちゃんの援護射撃だ。氷の礫が岩イノシシの頭部に命中し右眼付近を凍らせる。

　その攻撃により足が止まる岩イノシシ。

　俺は足の止まった岩イノシシへゼロ距離から。

　ノーマルスキル「烈風斬！」

　再び俺は〈烈風斬〉を放つ。

〈烈風斬〉は、遠距離から真空の刃を放つ事が出来る便利な技だが、ゼロ距離から真空の刃を放つ事により威力が倍化する事を俺は発見していた。

　ゼロ距離から放った〈烈風斬〉は、岩イノシシの頭部にある岩のように硬質化した一部分を削り取った。

　俺たちはスキルを駆使し連携して岩イノシシを攻めたてる。

　しかし、中腹最強の岩イノシシ、闘志は衰えない。

　俺たちの攻撃を屈強な身体で耐えて、体当たりで反撃してくる。

　鋭い牙による致命傷は避けているものの、俺たちも徐々にダメージが蓄積していく。

　しぶとい岩イノシシに少し気が逸ったパパレが不用意にスキルを発動しようとした。

　ノーマルスキル「倍そ‥‥、グエッ」

　パパレが岩イノシシに弾き飛ばされた。

「パパレ！」

「パパレちゃん！」

　小さなパパレは軽々と吹き飛ばされ宙を舞って笹原にドサンと背中から落ちる。

「‥‥‥痛てててて」

　ヨロヨロと起き上がろうとするパパレを見たルージュちゃんが慌てて回復スキルを発動。

　レアスキル「仁恕の回復！」

　これでＨＰとＳＰが回復し、一息つける。

「パパレちゃん、大丈夫？」

「うん、お姉ちゃん。ありがとう」

「シンヤ君、パパレちゃん見て。岩みたいだった頭部がボロボロになってきているよ」

　硬質化して岩のようだった頭部だが、俺たちの攻撃によりヒビ割れ崩れ、ダメージが見て取れる。

「あと少し頑張ろう！　ルージュちゃん〈氷弾〉で牽制した後、俺とパパレで最後の攻撃といくよ」

「分かったよ、シンヤ君」

「了解だよっ、お兄ちゃん」

　３人で連携して岩イノシシへ攻撃を再開する。岩イノシシも丈夫な身体、豊富な体力で粘り強く反抗してきたが、何とかギリギリで押し切る事ができた。

　岩イノシシが自身の敗北を認め、ヨロヨロと山の奥へ撤退していく。

「ふぅ、２人ともお疲れ様。ギリギリだったね」

「何とか倒せて良かったよ。私、もう限界だよ」

「やったね。お父さんに言ったらビックリするよっ」

　俺たちはギリギリではあったが、『ポメポメ山』中腹最強の岩イノシシを倒す事ができた。

　ピコン！『称号〈ポメポメ山５合目の覇者〉を獲得しました』

「おお、なんか称号をもらった！」

「私も」

「パパレも」

　岩イノシシを倒した事によりルージュちゃんとパパレは２つ目の称号、俺は初めての称号を獲得した。

　役に立つ称号ではないが、嬉しいものだ。