第53話 制圧! ゴブリンの森
「ル、ルージュちゃん!」
ルージュちゃんが俺から引き離されてしまい、一瞬にして絶対絶命のピンチになってしまった。俺も死にたくはないし、パパレを危険にさらしたくはない。しかし、それでもルージュちゃんを置いて逃げるなんて絶対に出来ない。俺は覚悟を決めた!
パパレに周囲のゴブリンの相手をして時間を稼いでもらい、その間に俺がゴブリン総大将からルージュちゃんを取り戻す。
俺はルージュちゃんを睨んでいるゴブリン総大将を睨み返す。
「ルージュちゃんを返せ!」
俺はゴブリン総大将へ斬りかかろうとした。
決死の覚悟で斬りかかろうとしたのだが、もの凄く違和感があり攻撃の手を止めてしまった。
何やらゴブリン総大将の様子が変だ。
「‥‥‥パパレ、ちょっと攻撃するのを待って」
ゴブリン総大将はルージュちゃんを本当に睨んでいるのだろうか。
それよりもルージュちゃんに尊みを感じているように見える。
もしかして変態ゴブリンなのか。変態ゴブリンの総大将なのか。
「ルージュちゃん、こっちに戻って来て」
「えっ、う、うん」
普通に戻ってきた。
「ルージュちゃん、帽子とマスクを取ってゴブリンに手を振ってみて」
「えっえっえっ、帽子とマスクを取って手を振るの?! わ、わかった。やってみるよ」
ルージュちゃんが帽子を取り、マスクを外す。今日のルージュちゃんはふんわりミディアムヘアを後ろで束ねたポニテバージョンだ。
ポニテバージョンのルージュちゃんが変態ゴブリン総大将に手を振る。戸惑っているので手の振りが小さい。そのせいでまるで高貴な方が庶民に手を振っているように見える。
キラキラしながら手を振るルージュちゃんを見て、ズザザザザっと変態ゴブリン総大将が平伏した。
それを見たゴブリン隊も一斉に平伏した。
そうして、森に俺たちの敵はいなくなった。俺たちはゴブリンの森を完全制圧した。
◇
ピコン!『称号〈ゴブリン将軍〉を獲得しました』
「えっえっえっ、ゴブリン将軍?!」
ルージュちゃんが何やら凄くビックリしている。
「どうしたの?」
「今、メッセージが表示されてね、称号〈ゴブリン将軍〉を獲得しましたって。えっえっえっ、私、ゴブリン将軍になったのかな?」
「へー、ルージュちゃんだけ称号を獲得したんだ。ルージュちゃんにゴブリン総大将が平伏してたもんね。良かったね、ルージュちゃん」
「お姉ちゃん、いいなー。ゴブリン将軍、カッコいいなー。パパレもゴブリン将軍になりたかったなー」
「私はこんな称号いらないよ‥‥‥」
ルージュちゃんはゴブリン将軍になった。
◇
「ゴブリンたち狩り難くなったね。将軍様が住民を虐殺したらダメだよね」
「えっ、将軍様って私の事かな。将軍様はともかく、私もこの森のゴブリンはもう戦いたくないかな」
「パパレもこの森のゴブリンはもういいかなー。帽子もマスクも暑いし。お兄ちゃん、最後に奥にいるドラゴンとこに行っとく?」
「パパレはアグライアさんの話を覚えてないの? レベル20以上でもダメなんだよ。俺なんかやっと半分になったところだよ」
ゴブリン狩りも潮時なので一度〈ステータス〉を確認してみる。
冒険者シンヤ
【レベル】10
【HP】149
【SP】125
【物理攻撃力】123
【物理防御力】105
【魔法攻撃力】114
【魔法防御力】96
【魅力】263☆
【幸運】110
【スキル】才器の光彩(発動中)、烈風斬
冒険者ルージュ
【レベル】13
【HP】119
【SP】206
【物理攻撃力】79
【物理防御力】91
【魔法攻撃力】152
【魔法防御力】214
【魅力】675☆
【幸運】41
【スキル】才器の光彩(発動中)、仁恕の回復、氷弾
【称号】ゴブリン将軍
冒険者パパレ
【レベル】14
【HP】152+
【SP】179+
【物理攻撃力】221+
【物理防御力】131
【魔法攻撃力】159
【魔法防御力】116
【魅力】145
【幸運】194
【スキル】雷鳴の乱撃、火球、倍速撃
なんだかんだで俺はレベル10になっていた。短期間の割にみんなそこそこ強くなってきたが、ドラゴンを倒すにはまだまだ力が足りない。
「冒険者ギルドへ行って他のクエストを探してみようか」
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