第2章

第45話 レベルアップ

 一角ウサギにオオトカゲを倒し続けて疲れてきたので、街へ戻る事にする。転移のレアスキル〈次元の神秘〉の出番だ。


「そろそろ街へ帰ろうか。パパレは家が近いから自分の家に帰る? それとも俺たちと一緒に『ヨイヨイ』に来る?」


「パパレも『ヨイヨイ』に行きたいですっ」


「OK。じゃあ3人で『ヨイヨイ』へ行こうか。俺のどこかに触れていてね。触れていないと一緒に転移出来ないから」


 一緒に転移する条件を2人へ伝える。


「分かったよ。シンヤ君」


 ルージュちゃんが右腕に掴まってきた。ボリューム感のあるとても柔らかいものがちょっと当たっている。


「はーい、お兄ちゃん」


 パパレが左腕に掴まってきた。小ぶりながらとても柔らかいものがちょっと当たっている。


 あれ? 何だこの状況は。どこかに軽く触れてくれれば良いと思って気軽に言ったのだが、可愛い女の子に両腕を捕まれている。2人とも思った以上に体を密着させてきた。これは役得が過ぎるのではないか。


「シンヤ君、これで大丈夫かな? 置いてけぼりは困っちゃうよ」


「お兄ちゃん、これでいい? 転移楽しみだなー」


「はぁ、はぁ、ふぅ、ふぅぅ」


「あれ? シンヤ君、大丈夫?」


「い、いや、大丈夫。このスキルは精神を集中しないといけないからね」


 慌てて答えたが、実際のところは全く大丈夫ではない。このままではルージュちゃんがキラキラに見えてしまう。パパレにはロリコン呼ばわりされてしまう。早くスキルを発動させなければ。


 レアスキル「次元の神秘!」


 フワッと身体が軽くなったかと思ったら、次の瞬間には『ヨイヨイ』の神殿にいた。

 転移した場所が見た事のない部屋だったので少し戸惑ったが、その部屋から出てみると見慣れた『ヨイヨイ』の神殿内だった。


「本当に一瞬で戻って来たね。便利だね、これ」


「もう『ヨイヨイ』なんだ。凄いね」


「さっきまでオオトカゲと戦ってたのに神殿にいるっ!」


 さすがは400thアニバーサリー特別スキルだ。まだ『ヨイヨイ』で〈次元の神秘〉を身につけた人は誰もいないようで、物珍しそうに俺たちを見る冒険者たちがいた。


「あんちゃん、〈次元の神秘〉を引いたのかい? 豪運だな」


「ありがとうございます」


「俺は【神界の本棚 利用券】が1枚あってつかったけどダメだったぞ」


 俺は1枚どころが何千連、引いたか分からない。それでもほとんど出なかったので、排出率が相当絞られているのではないかと疑っているぐらいだ。まあ俺はスキル本選択券で貰ったから良いのだが、普通に期待して引いている人が気の毒でならない。


 その日はルージュちゃんを家まで送って、俺とパパレは宿屋『踊るトカゲ亭』で同じ部屋に泊まった。



 ◇



 『ポメポメ』に近い湿地帯と草むら地帯で俺たちは一角ウサギやオオトカゲをコツコツと倒し続けた。移動はレアスキル〈次元の神秘〉で大幅に短縮できるので効率が良い。


 そのうちに俺はレベル5になり、一角ウサギやオオトカゲの集まりが悪くなってきた。


「うーん、オオトカゲは寄ってくるけど、一角ウサギは全然こなくなってきたね」


「お兄ちゃん、強くなっちゃったね‥‥‥」


 パパレが残念そうに言う。レベル上げをしているのだから本来なら強くなって喜ぶべきなのだが、俺も一角ウサギが寄ってこなくなり少し寂しくなっていた。


「シンヤ君、別の場所へ行ってみる? どこか魔物がたくさんいるところはあるのかな?」


「そうだねぇ、そろそろ別の場所でも良いかもね」


 ルージュちゃんの問いかけに俺が思いついたのはゴブリンの森。変態&ロリコン&多様化ゴブリンがいる森だ。少しは強くなった俺たちなのでゴブリンたちとも渡り合えるのではないだろうか。危なくなれば〈次元の神秘〉で撤収すれば良い。

 ゴブリンの森を含めて次のレベル上げ候補地を検討するために、現状の戦力を確認してみようと思う。


 まずはレベル5になった自分の〈ステータス〉を確認してみる。


冒険者シンヤ

【レベル】5

【HP】94

【SP】75

【物理攻撃力】63

【物理防御力】55

【魔法攻撃力】59

【魔法防御力】55

【魅力】138⭐︎

【幸運】60

【スキル】才器の光彩(発動中)、烈風斬


 こうして〈ステータス〉の数字を見たところで、ゴブリンと勝負になるのかはさっぱりわからない。前回ゴブリンの森に行った時の〈ステータス〉は覚えていないが、現状がレベル3の時より弱いという事はないだろう。ゴブリンとも良い勝負になるはずだ。というか、勝負になって欲しい。


 比較のためにもルージュちゃんとパパレの〈ステータス〉も聞いてみる。個人情報保護法のため本人に聞くしか確認方法はない。


「ルージュちゃん、今の〈ステータス〉を教えてくれるかな?」


「いいよ。〈ステータス〉はこんな感じだよ」


冒険者ルージュ

【レベル】9

【HP】91

【SP】154

【物理攻撃力】55

【物理防御力】63

【魔法攻撃力】108

【魔法防御力】150

【魅力】475⭐︎

【幸運】29

【スキル】才器の光彩(発動中)、仁恕の回復、氷弾


 ルージュちゃんは【魔法】系と【魅力】が高い。【魅力】に至ってはすでに勇者になる条件を満たしている。どういう事なんだ。

 【物理】系や【HP】は俺の方が高くなっている。その2つは俺の方が伸び率が良いという事なのか。


「パパレも今の〈ステータス〉を教えてくれるかな?」


「お兄ちゃん、パパレの強さを見たいの? はいどうぞっ」


冒険者パパレ

【レベル】10

【HP】118

【SP】137

【物理攻撃力】159

【物理防御力】95

【魔法攻撃力】115

【魔法防御力】84

【魅力】105

【幸運】142

【スキル】雷鳴の乱撃、火球、倍速撃


 そういえばパパレの〈ステータス〉は初めて見た。【物理】【魔法】共に攻撃力が高いようだ。これにレアスキル〈雷鳴の乱撃〉があれば、強い魔物でも良い勝負になりそうだ。


「パパレ、つえーな」


「やっぱりパパレは強い? あっははー」


「2人とも〈ステータス〉を教えてくれてありがとう。今の俺たちに合ったクエストが無いか冒険者ギルドで探してみよう」


「そうだね、シンヤ君。良いクエストがあるかもしれないね」


「パパレもオオトカゲは飽きちゃったし、違うクエストがいいな」


「よし、ちょっと早いけど今日は『ヨイヨイ』に戻ろうか」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る