第34話 厳しい条件
1人で緊張しながら城のすぐ近くまで歩いて来た。遠くから見て巨大な事は分かっていたが、近くで見る巨大な城は想像以上の迫力だった。見上げるような高い外壁は威圧感の塊だ。
巨大な城ではあるが出入り口は数カ所しかなく、その出入り口は厳重に警備されていた。厳重な警備ではあったが、城兵に神界の仕事人メンバーズカードを提示して中へ入れてもらう。
ルージュちゃんに聞いたところによると、王都にあるこの城は政治や軍事を一手に引き受けているこの国の中枢らしい。当然、城の中は厳重に警備され、働く人たちも規律正しく行動している。緊張感が漂う雰囲気は今まで行ったどの場所ともまるで違った。
それも国王様や王女様もこの城にいるのだから当然ではある。もっとも俺は国王様と王女様の顔と名前も知らないわけだが。
城の様子を見て、こんな場所で待っているレイナス様とは一体何者なんだろうと期待と不安が増してきた。城兵に案内されて、俺はいよいよレイナス様の待つ部屋の前に来た。
「俺は神界の仕事人、俺は神界の仕事人、俺は神界の仕事人‥‥‥」
緊張が限界に達した俺は自分に暗示をかけて、レイナス様の待つ部屋へ入室した。
「あわわわわ、は、は、は、はじまして。レ、レ、レイナス様。お目にかかれて、こ、こ、こ、光栄です」
今回は暗示も効かず、まるでダメだった。ろくでもない第一印象を与えた事だろう。パーティーメンバーになってもらうための条件以前の問題だ。
「ふふっ、あなたが神界の仕事人のシンヤさんね。そんなに緊張しなくてもよろしくてよ」
レイナス様は綺麗な金色の長い髪、白く透き通った肌、とても清楚な雰囲気だ。そして驕った感じもなく優しそうな人だった。
威圧感のある貴族のお嬢様ではない事に安心し、少し落ち着きを取り戻した。
「は、はい。ありがとうございます」
「お話は聞いておりますわ。私をパーティーメンバーにしたいそうですわね」
「そうなんです。ぜひ俺たちのパーティーに入ってください」
「そうね。貴方はこの〈カリスマの腕輪〉を装備できますかしら? 並の方では難しいかもしれませが、この腕輪を装備できる程の人物なら喜んでパーティーに入りますわ」
そう言ってレイナス様は俺に〈カリスマの腕輪〉を渡してきた。俺はよく分からないまま〈カリスマの腕輪〉を装備しようとするのだが、〈カリスマの腕輪〉に拒否されて腕を通す事ができないでいた。
不思議に思っていると、視界にメッセージが表示された。
〈称号『カリスマ冒険者』が必要です。称号『カリスマ冒険者』は【魅力】1000以上で取得可能〉
称号『カリスマ冒険者』とやらに【魅力】が1000以上が必要だと?! 俺は慌てて今のステータスを確認した。
冒険者シンヤ
【レベル】3
【HP】72
【SP】55
【物理攻撃力】82⭐︎
【物理防御力】39+
【魔法攻撃力】37
【魔法防御力】33
【魅力】35
【幸運】42+
【スキル】武神の加護(発動中)、火炎斬、電撃
今の【魅力】35って。いやいやいや、【魅力】1000以上とか無理過ぎだろう。俺は絶望した。
「この腕を装備するには【魅力】が1000以上も必要なんですか?!」
「そうね。私の上に立つのなら、そのぐらいの人物を要求いたしますわ」
「そ、そうですか。この世界には【魅力】1000以上なんて人がいるんですね」
「結構いますわよ。そうね、有名なところですと、ちょうど今、王都に来ている勇者パーティーの3人は『カリスマ冒険者』の称号を持っておりますから【魅力】1000を超えてると思いますわね」
「そうなんですか! あの勇者パーティーの3人は『カリスマ冒険者』持ちなんですか!」
さすが人気ナンバー1の勇者パーティーだ。どうりでルージュちゃんとパパレも凱旋ライブに行ってしまうわけだ。
「あと、もう一つ条件がありますわ」
まだ他にも条件があるのか。【魅力】1000以上だけでも心が折れそうなのに。
「はい、なんでしょうか?」
「この私の隣りにいる聖騎士オリヴィアも同行させてもらいますわ。宜しいかしら?」
聖騎士が同行? あれ? この条件はとても良い話ではないか。条件というよりは、特典ではないだろうか。
「はい。それは、もちろん歓迎です」
白く輝く美しい鎧を身に纏ったいかにも強そうな聖騎士がレイナス様の隣りに直立している。この聖騎士が協力してくれるなら願ってもない事だ。レイナス様をパーティーメンバーに出来れば実質、2人増えるようなものだろう。
これなら厳しい条件も納得はできる。
しかしパーティーメンバーになってもらうには【魅力】1000以上が必要。この条件をクリアしないといけない。
今の俺では全く話にならないので、〈カリスマの腕輪〉は、ひとまずレイナス様に返却した。
「今すぐには無理なので、出直してきます」
そう言って俺は部屋を出た。俺は最後に言ったレイナス様の言葉を聞き逃していた。
「楽しみに待っておりますわ。私も早くここから出たいもの」
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