第30話 王都でトラブル
王都『ライナライナ』へ到着する頃には日が沈みかけていた。
しかし、さすがは王都という事で至るところに街灯があり、白い石畳みのせいもあって、とても明るい。
王都『ライナライナ』は、王都を象徴するかのように中央に白い巨大な城が建っている。城には王族が住んでいるらしいが、俺たちには関係のない話だ。
「デッカい城があるね。ていうか、ちょっとデカすぎない?」
城は王都中のどこからでも見える程の大きさで、他の建物とスケール感が違っていた。
「でも王様が住んでいるし、守っている騎士団の人もたくさんいるし、お城は大きい方がいいんだよ」
ルージュちゃんが色々と城の説明をしてくれた。
「ふーん、そうなんだ。城はとにかく重要な所なんだね」
「パパレもお城は大きい方がいいと思うよっ」
「パパレは大きい方がカッコいいと思ってるだけでしょ」
そんな話をしながら、俺たちは王都の商業区画を歩いていた。
王族や貴族が住む王都『ライナライナ』は、魔物の侵入を防ぐために強固な外壁に囲まれている。その外壁に近い方が宿屋や飲食店、武器防具屋を始め多種多様な店が立ち並ぶ商業区画となっていた。馬車が停まった北門付近にもたくさんの宿屋や飲食店があった。
その商業区画で俺は宿屋『踊るトカゲ亭 王都店』を探している。俺の気に入っている『踊るトカゲ亭』は、『ヨイヨイ』にある本店が好評のため、2号店を王都へ作ったと聞いていたからだ。
「ルージュちゃん、パパレ。今日は遅いから宿屋へ泊まって、何かするのは明日にしよう」
「「はーい」」
「この近くに『踊るトカゲ亭 王都店』があるはずだから2人も探してみて」
歩きながらキョロキョロと周囲を見るのだが、どの店も高級感がある。行き交う冒険者や旅人も立派なヨロイや煌びやかな服装をしている。
どうにも庶民感の漂う俺たち3人は場違いのようだった。
宿屋『踊るトカゲ亭 王都店』を探しながら歩いていると、俺は
「君たち、何をしているのかね?」
俺は突然、何人もの
「あわわわわ、あ、あの、怪しいものじゃないです」
「えっえっえっ、私はメ、メ、メンバーです」
「パパレはお兄ちゃんに連れてこられましたっ」
パパレ、間違ってはいないけれど、その言い方は良くない気がする。
「なに? 連れてこられた?! お嬢ちゃん、大丈夫かい。それにメンバーとは何のメンバーだ?! 怪しい組織か?!」
「あわわわわ、ほ、本当に怪しくないです」
「先ほど城がどうの、王様がどうのと話をしていただろう。何を企んでいるのだ? ちょっとこっちへついて来い」
俺たちは屯所へ連れて行かれ、カツ丼のようなものを出されて尋問された。そして答えているうちに不審者というより、迷子扱いをされた。
「‥‥‥坊や、何か身分証明書はないのかい?」
身分証明書と言われて思い出した。そういえば、俺は神界の仕事人でメンバーズカードを持っていた。〈持ち物〉から神界の仕事人メンバーズカードを取り出し、強面の騎士に見せた。
「なんと、神界の仕事人でしたか。不審者や迷子扱いをして申し訳ありませんでした。キョロキョロしていましたが、どうされましたか?」
不審者で迷子という認識はまんざら間違いではないなと思いながら、落ち着きを取り戻した俺は『踊るトカゲ亭 王都店』を探しているだけだと言う事を伝えた。
「それでしたら、案内させてもらいますよ」
「ありがとうございます。これ食べ終わってからでいいですか。美味しいですね、これ」
急に余裕の出た俺はカツ丼のような食べ物を完食した。パパレは話に加わる事もなく黙々と1人で食べていたので先に完食し、ジュースのような飲み物を飲んで寛いでいた。
◇
騎士の案内で『踊るトカゲ亭 王都店』に到着した。
『踊るトカゲ亭 王都店』は『ヨイヨイ本店』とは違い、高級感が漂う外観だった。
神界の仕事人という事を思い出した俺は、高級感に負けずメンバーズカードを手に堂々と入店した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます