ユマ姫観察日記
ユマ姫が晒し者にされる帝国陣内。
幻想的な美しさを誇る美姫の生活を一部始終見ていられる環境は、兵士達を浮き足立たせるのに十分だった。
そんな落ち着かない陣内で、人一倍落ち着きが無い男が居た。
下級士官のデルトンと言う男。彼はユマ姫に首ったけ。非番となればいつも牢の周りでユマ姫を見ていると噂になるほどだった。
ある日デルトンは、糧食の在庫チェックの最中、上官に呼び止められる。
「オイ、お前」
「なんです?」
かったるい様子を隠そうともしない上官から、デルトンは一冊のノートを手渡される。
「コレは?」
「日誌だ、つけておけ」
「はぁ……」
上官を前にして、気の抜けた声が漏れた。
不満な訳では無い。デルトンはこう言う仕事があるのも知っているし、下士官として記録係の教育だってちゃんと受けている。
しかし、こう言ったモノは進軍する時から同じ人物が一貫して書くのが常識だ。
そうでなくては記述にブレが生じてしまう。
現在、帝国軍は領内に侵略してきた王国軍とにらみ合いを続けている。一時は王国内に切り込んだモノの、橋での決闘に敗れ押し込まれている。
しかし、そのドサクサに敵陣からユマ姫を奪取、王国は人質を前に攻めあぐねている。
……早い話、戦況は二転三転し、もはや終盤に差し掛かっている。この期に及んで記録者の交代など、間尺に合わない。
「勘違いするな、お前が書くのは普通の従軍日誌ではない」
「と、言うと?」
デルトンが首を捻ると、上官は何も言わずにノートの表紙を指差した。
「ユマ姫観察記録? なんですコレ?」
「さぁな、テムザン将軍からのお達しだ。将軍はユマ姫の魔法の力と
「それは? ずっとユマ姫を見ていて良いと言う事ですか?」
大好きなユマ姫の事。デルトンは前のめりに上官に詰め寄った。
軍の中心にデンと据えられたユマ姫を捕らえた檻。
少女の一挙手一投足を観察する事は、男だらけの軍の中で数少ない癒やしである。それが大手を振って、ずっと見ていられると言うのなら、これ以上楽しい仕事はないだろう。
しかし、上官の命令は無慈悲だった。
「勘違いするな。記述は交代制。休憩時間などを利用して記述する。手当は出ない。以上だ」
「それじゃあ余計な仕事が増えただけじゃないですか」
「そう言うな、今だって四六時中ユマ姫を見てるだろうが」
「そりゃ、そうですが」
好きでやってるのと、仕事でやるのでは違う。そう言うと、上官も納得した。
「なぁに、最初に『フォーマット』を作るだけだ。その分の評価はする。後はユマ姫を好きな奴が交代で、気になった事を書いていけば良い。真面目な仕事って程でも無いさ」
「そんなモンですか……」
納得が行かなかったが、デルトンはしぶしぶノートを受け取った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 三の半刻 デルトン・グスマン軍曹◇
ユマ姫は遅めの朝食を摂っている。献立は目玉焼きにベーコン。ふわふわの白パンだ。ドコから配給されたのか、やたらと良い物を食べている。
更に驚くべきは、そんな何気ない朝食を観察している兵の多さだ。
すり鉢状の底、朝食を静々と食べるだけのユマ姫をぐるりと取り囲む格好で、皆が思い思いに観察している。
ハッキリ数えた訳では無いが、ざっと千人は居るだろう。
一体、何がそんなに楽しいのかと兵達に尋ねてみたところ。まず、貴婦人が料理を食べる姿を見るのが新鮮との返答があった。
確かに、我々一兵卒が貴人と、それも一国の姫と言われる存在と同席する機会など皆無だろう。あったとしても、マナーを気にして食事が喉を通らないに違いない。
しかし今回、姫は虜囚で、晒し者にされている状態だ。一方でコチラは憚る事なく、くつろぎながら好きにお姫様を観察出来る。
娯楽感覚で千の兵士に見世物されて、さぞユマ姫は惨めな思いをしているだろうと考えた。
しかし、違った。
良く見ると、ユマ姫の周り。机を並べてお行儀良く食事を摂っている一団がいる。
ロアンヌの騎士達だ。
恐れ多いが事情を説明し、騎士にも話を聞く事にする。
答えてくれたのはラグノフ。騎士団の副長を務める人物だった。
どうも、彼らはユマ姫と共に食事をして、マナーの美しさに感銘を受けたと言うのだ。
――いえね、我々は騎士として最低限のマナーは身に付けていますが、何処かそんな物よりは剣の腕を磨くのが本道と、礼儀作法にうるさい連中を馬鹿にしてさえいました。何の役に立つのかとね。
しかし、こうして食事を摂るユマ姫を見ていると、その所作の美しさに息を飲みましたよ。なるほど、マナーって奴は美しいのだとね。それで、マナーを勉強するために、こうして机を並べていると言う訳です。
つまり、彼らはユマ姫を参考にマナーの勉強会をしている訳だ。
良く見れば、ロアンヌ以外の騎士や士官、本国からの文官も混じって机を並べて食事をしている。
文官に言わせれば、帝国式のマナーを披露して、騎士団に顔を売る絶好のチャンスと言う訳だ。考えたモノである。
そこで、ユマ姫の食事がやたらと豪華な理由も判明した。
出入りの商会が、最高級の食事を無償で提供しているのだ。
なにせ千人も観察している。ユマ姫と同じモノを食べたいと考える人間も少なく無い。十分に元が取れると言う訳だ。
そうで無くても、マナーを学んでいる騎士達は揃って同じ物を食べる必要がある。それだけでも利益は十分と語っていた。
私もユマ姫と同じ食事を貰ったが、銀貨が飛んでいく値段だった。
上官には補填をお願いしたい。
「この締めはなんだね?」
記録を見せると、上官は最後の一文にうんざりした様子だった。
「そんぐらいは出して下さいよ」
「銀貨だと? クソッ仕方無い。しかし、フォーマットは出来た。コレを参考に他の兵士にも書いて貰おう。檻のそばに記録スペースを作り、ノートを設置するんだ」
「大丈夫ですかね? 私が言うのも何ですが、ユマ姫が好きな奴が何を書くか……」
「まさか? 扱いは従軍日誌の一種だ、余計な事は書かないだろうよ」
しかし、上官の狙いは大きく外れる事となる。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 五の半刻 ホフダス・ラーティン伍長◇
ユマ姫が檻の中で運動を始めた。
体を鈍らせない為と言い、肩を丸出しの姿で腹筋や屈伸運動を繰り返すと、肌に珠の汗が浮かんで非常に色っぽい。
……子供と思ったが、不思議な色気がある。
もっと間近で見ようと近づくも、騎士達に阻まれて近づけない。
やつら汗を浴びようかって距離を独占してやがる。
ロアンヌの騎士達はいつもユマ姫の周囲に集り、職務を遂行していないのではないかと愚考します。上官殿、奴らの処遇について御一考を。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 五の半刻 オタヌ・ピッグス伍長◇
僕は近づく事に成功しました。
ユマ姫の汗の匂い。少し甘い香りがしました。研究対象にするべきと愚考します。
汗の滴る脇。舐めたいと言う気持ちが抑えられません。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 八刻 クォンザ・ブルーノ軍曹◇
夕食を食べるユマ姫の姿に癒やされる。
張り詰めた瞳が、美味しそうなお菓子を口にした瞬間。僅かにほころぶ。
その瞬間を見たくて、自分の食事そっちのけでずっと観察してしまった。ユマ姫が食べているビスケットと同じ物を購入したが、私には酒の方が良い。
ユマ姫と酒を飲んでみたいが、そんな日が来ないだろう事は私も理解している。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 九刻 オタヌ・ピッグス伍長◇
ユマ姫のお風呂! 見えないのに見える!
薄衣越しだと言うのに、その艶姿がハッキリと目に浮かぶのです。恐らくは魔法。目に浮かんだ光景と差がない事を確認する許可を願います。
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 一刻 オタヌ・ピッグス伍長◇
ユマ姫の寝顔可愛い。ほっぺたぷにぷにしたい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ナニコレ?」
翌朝、デルトンから日誌を渡された上官は、偉ぶった言葉も忘れて思ったままの言葉を漏らした。
「何って、ユマ姫観察記録ですよ」
「いや、なにこれ? 滅茶苦茶ではないか」
「だから、言ったでしょう? 文字が書けるだけの士官に期待し過ぎですよ」
「しかし、思った以上に酷いな。コレを将軍に見せなければいけないのは私なのだぞ?」
「ご愁傷様としか言い様がありませんな」
「人ごとと思って……」
ぼやく上官を見送ったデルトンだったが……
「コレで良いそうだ」
「本当ですかい?」
「ああ、まぁ鼻で笑っておられたが、恐縮して漏れがあるよりマシだと」
「へぇぇ、好きに書けって? 紙とインクも安くないだろうに」
「それぐらいは出すから、好きに書けと。ロクに賃金も出さないのだから、内容に無理は言わぬと仰せだ」
「話せますねぇ、そんなんで良いのなら書きたがる人間は大勢居ますよ」
「そういう物か?」
上官は首を捻るが、ダルトンにしてみれば観察記録をつけたと言っただけで、見せろ見せろと周囲の催促が凄かったのは経験済み。
(それにしても書かせろとうるさかったオタヌに渡したのは失敗だったが)
皆も見回りや訓練の時間、ユマ姫がどうしていたか知りたくて仕方が無かったのだ。
ちなみにテムザンが許可した理由だが、テムザンはユマ姫に洗脳能力があるのではと疑っていた。
魔女にその様な力があると言う事はうっすらと気が付いていて、ユマ姫も同類とするならば、ロアンヌ騎士の入れ込み様も説明がつく。
そして、洗脳する過程や方法を探るには、熟考した上の文章よりも書き殴った様な乱文の方が向いていると考えたのだ。
斯くして、ユマ姫観察記録は同好の士による情報交換日誌と変貌する。
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 三の半刻 デルトン・グスマン軍曹◇
今日の朝食はサラダ? ドコから手に入れたのだろうか? 商人に問い詰めても、出所は教えて貰えなかった。
パンケーキにシロップ。こんなもの、帝都だって中々手に入らないのだが……流石にこいつはオカシイぞ?
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 五刻 グルタ・ボンズ伍長◇
ユマ姫が昼も歌を歌ってくれた。
一般的な聖歌だったけど、歌うときに後光が差して見えた。きっと天使の生まれ変わりだ。
そして、商人がなんと楽器を売っていた。私には弾けないので断ったが、講習もしているみたいだ。しかし、お金が足りない。
一緒に演奏したいな……私も楽器を習いたい。
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 六の半刻 ナリクム従軍絵師◇
ユマ姫が兵士達に語りかけている場面をスケッチしました。
<<ページが破られている>>
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 八刻 クォンザ・ブルーノ軍曹◇
今日もユマ姫可愛い。また酒を買うお金で、お菓子を買ってしまった。
私のようなオジサンが食べても仕方が無いのでプレゼントしたいと大声を出したら騎士団に睨まれた。
猛烈に恥ずかしくなったが、ユマ姫は笑わなかった。食べたいけれど、お菓子ばかりを食べると豚になっちゃいます。と顔を赤らめて拒否されたけど、その仕草も可愛かった。
ユマ姫ならブタでも良いのに。近寄ると花のような香りがした。
可憐だ。
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 九刻 オタヌ・ピッグス伍長◇
今日も! ユマ姫のお風呂! このために生きてる!
ナリクム殿ォ! お風呂の絵を描いて!
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 九刻 クォンザ・ブルーノ軍曹◇
おらよ、ブタ!
<<ページが破られている>>
◇帝国暦1028年 前夏月二十二日 九刻 オタヌ・ピッグス伍長◇
ブヒィィ! 恩にきるぅぅぅ!
◇帝国暦1028年 前夏月二十三日 一刻 オタヌ・ピッグス伍長◇
誰だ! ユマ姫のイラストを引き千切った奴は! 殺すぞ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ナニコレ???」
今度こそ、上官は混乱していた。
「ナニって、ユマ姫観察記録ですって」
「いや、ページが破られているではないか。それに、内容も酷い」
「ページを破った犯人は捕まえました、部屋で気持ちよくなっていたので半殺しです。但しページは汚れてしまっていて」
「聞きたくはないが。犯人はオタヌって奴か?」
「いいえ、奴はページを破る様な真似は絶対にしないですね」
「そうなのか……」
上官には理解出来なかったが、デルトンには解る気がしていた。
ユマ姫を大切に思っている人間ほど、何かを傷つける事を極端に嫌う。儚いユマ姫は、ちょっとした暴力で壊れてしまうと思わせるのだ。
「しかし、暴走してページを千切る者が現れるのは問題だな」
「日誌を傷つけたのですから、三日はメシ抜きでその辺に転がしておきますよ。普通の従軍日誌なら吊られても仕方が無い所です」
「それもそうか、馬鹿は最悪殺しても構わん。ふざけて見えてもテムザン将軍も目にする日誌なのだぞ」
「それなんですが、ユマ姫の記録を付けたい者が多すぎて、いっそ従来通り真面目に書いた日誌の他に、誰でも自由に書ける日誌と二冊用意しても良いのではないですか?」
「まぁ、書きたい奴に書かせるに限るか。そうすれば本当の日誌から乱文も減るだろう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇帝国暦1028年 前夏月23日 二の半刻
寝起きのユマ姫の顔を見る事に成功! お目々擦ってるの可愛いぞぉ!
◇帝国暦1028年 前夏月23日 二の半刻
顔を洗ってるとき、まだボーッとしてるのな。
◇帝国暦1028年 前夏月23日 二の半刻
キリッっとした顔になった。気品溢れる横顔をスケッチ。
<<ミミズがのたくった様な絵が描かれている>>
◇帝国暦1028年 前夏月23日 二の三四半刻
下手くそな絵を載せるな!
◇帝国暦1028年 前夏月23日 三刻
上の奴、細かい事言うなよ
◇帝国暦1028年 前夏月23日 三刻
可愛いのを可愛いと言ってナニが悪い! 今日の朝食はバゲットにソーセージを挟んでチリソース?
辛いソースらしいんだけど見た事が無い料理。だけど、高い。
なぁみんな、お金出し合って食べないか?
◇帝国暦1028年 前夏月23日 三刻
上の奴、お前に文句言ったんじゃなくて、下手くそな絵って言う奴に文句言ったの。好きに描けよ、小さい絵なんだし。
◇帝国暦1028年 前夏月23日 三刻
俺も味があって好き。絵の事ね。
9.帝国暦1028年 前夏月23日 三刻
誰に何を言ってるか解る様に、通番を付けようぜ。
10.帝国暦1028年 前夏月23日 三の四半刻
>>9 いいね、コレ。
11.帝国暦1028年 前夏月23日 三の半刻
チリドックって料理らしい。三人で分けたから一口だけだけど、辛いけどスゲー旨い! 食べなきゃ損ってレベル。安くならんかなぁ。
12.帝国暦1028年 前夏月23日 三の半刻
千個単位で一括購入すれば安くなるらしい。四半銀貨以下になるとか。
13.帝国暦1028年 前夏月23日 三の半刻
>>12 千とか無理だー
14.帝国暦1028年 前夏月23日 三の三四半刻
>>13 そうでもない、ウチの隊。共同で一括購入狙ってる。
15.帝国暦1028年 前夏月23日 三の四半刻
>>14 マジかよスゲェ! スナフキーン商会ってとこやり手だなぁ。
16.帝国暦1028年 前夏月23日 四刻
スナフキーンのメシ、見た事無いレベルでウメェもん。
17.帝国暦1028年 前夏月23日 四刻 14
なんか、メシだけじゃなくて今日からウチの隊はユマ姫の周りで訓練するとか。
18.帝国暦1028年 前夏月23日 四刻
>>17 お前の隊ドコよ?
19.帝国暦1028年 前夏月23日 四刻
>>18 多分グリダムスのトコ。二百人ぐらいの隊だけど、グリダムスは新し物好きだし。ロアンヌとも仲が良いんだよ。
20.帝国暦1028年 前夏月23日 四刻
訓練って何するんだ?
21.帝国暦1028年 前夏月23日 四刻
本日から騎士団の素振り型の確認の訓練にユマ姫が参加する事になりました。
グリムダス隊も檻の周囲で素振り千本と、腕立てをするらしいです。
>>19 グリムダス隊です。間違えない様に。
21.帝国暦1028年 前夏月23日 五刻
ユマ姫とのくんれんうらやまし。
23.帝国暦1028年 前夏月23日 五の半刻
>>22 通番間違ってるぞ、文字も怪しい。士官じゃないだろお前。士官以外は閲覧書き込み禁止だから。
22.帝国暦1028年 前夏月23日 五の三四半刻
訓練終わったけど、良いもんじゃないぜ。
すり鉢状の場所で、頭を下にして腕立てするの負荷が凄い。ユマ姫にかっこ悪い所見せられないからサボれないし。
でも、拡声の魔法でガンバレガンバレって、大声で応援されると燃えるよなぁ。
24.帝国暦1028年 前夏月23日 五刻
>>22 お前も通番間違ってるぞ。
ユマ姫は素振りも腕立てもすぐに音を上げてたな。皆さん凄いですね! って言われて、張りきっちゃったよ。あんなに腕立てしたの初めて。
25.帝国暦1028年 前夏月23日 六刻
>>23と24
死ぬ程羨ましいんだけど? あと>>24は時刻を間違えてる。通番はともかく時刻は絶対に間違えないでくれ、情報が錯綜する。
26.帝国暦1028年 前夏月23日 六刻
それより知ってるか、訓練の後、背中が痒いってユマ姫が侍女に背中を掻かせてたんだけど、見た人居る?
27.帝国暦1028年 前夏月23日 六刻
人払いされてたけど、ユマ姫が背中の痛々しい鞭の跡を晒してたよ。ユマ姫は見せて良いって言ってるけど、騎士達が見せたくないらしい。
28.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
声だけでも聴いとけ、すり鉢全体に届く声だぞ。喘ぎ声にしか聞こえない。
29.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
想像で絵を描きました。
<<やたらと上手い絵が描かれている>>
30.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
>>29 上手ぇ!
31.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
スゲェな、絵が描けるの羨ましい。
32.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
侍女も可愛く無い? なんか巻き髪でキツそうな見た目だけど。
33.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
誰だろうね。
34.帝国暦1028年 前夏月23日 六の四半刻
スゲェな、絵が描けるの羨ましい。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 七の刻 デルトン・グスマン軍曹◇
ちょっと待て、お前等!
コッチは本誌だ。情報交換は別紙でやれと言っただろうが!!
フォーマットを滅茶苦茶にするな!
書き込むのは一旦止めてくれ、上官を呼んでくる。
35.帝国暦1028年 前夏月23日 七刻
アッチは別の隊が使ってるぞ。後で見せ合う予定。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 七の半刻 デルトン・グスマン軍曹◇
馬鹿が! と言いたい所だが、テムザン将軍に確認をとったが、コレでも問題ないらしい。
37.帝国暦1028年 前夏月23日 八刻
>>36 勝手に自分のフォーマットで書くなよ。
◇帝国暦1028年 前夏月二十一日 八刻 デルトン・グスマン軍曹◇
もういいや、好きにして。俺は知らん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ゲルの様な幕舎の中で、日誌をめくるテムザンが居た。
「ほぅ、そうかそうか……」
デルトンが放棄したユマ姫観察日誌であるが、テムザンは、これはこれで軍隊の生の声が聞けると嬉しく思っていた。
そればかりか、ユマ姫の洗脳能力についても日誌の記述からアタリが付いたとほくそ笑んで居た。
その過程で最も重要視したのが、デルトンや上官が困惑した、オタヌと言う男の気持ち悪い記述なのだから、何が起こるか解らない。
「汗、香り。コレが肝じゃろうな」
テムザンが洗脳の鍵として注目したのはズバリ、体臭。
汗の臭いを切掛にユマ姫は周囲を洗脳している。だから、訓練を行い汗の臭いが届く範囲に騎士団を留めているのだと判断する。そう考えると、最初の湯浴みを抜け出したのも怪しいと思える。
ユマ姫は自らの体臭を維持しようとしているとテムザンは考えた。
そして、テムザンの命でユマ姫の湯浴みの回数が増えた。
信頼出来る侍女を派遣して、一日二回のお風呂タイム。
言うまでもないが、ユマ姫の信者が増えただけに終わった。
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