初恋を知らないこじらせ女子が初恋を知って奮闘するお話
ポンポン帝国
第1話 初恋……?
「もっとハキハキしなさい!」
小さい頃から親にずっと言われてきた事だ。
そんなの私だってわかってる。けどどうしようもないんだよ……。それが私なんだもん。
私はいつも、端っこにある自分の席で恋愛小説を読んでいる。別に恋愛小説が好きって訳じゃない。だけど、私には想像出来ない、そんな事だからだからどうしても気になってしまうのだ。
私には特別仲がいい友達っていないけど、耳を澄ませているだけで、自然と会話が聴こえてくる。
「えー! まだ初恋した事ないの??」
「ないない。そんなアケミこそ初恋とかした事あんの??」
これは同じクラス? うん、同じクラスだった筈、であるアケミとゆかいな仲間たちによる恋愛話ってやつだ。こんな端っこにいても聴こえる位に大きな声で自分達の恋愛話してて、恥ずかしくはないのかな? まぁ私的には恋愛を知る参考にさせてもらうからいいけど。……参考になるかわからないけど、聞くだけならタダだもんね。
「モチロン! 今カレのタケルがは・つ・こ・いの相手なんよ♪」
それ、前のカレの時にも言ってた気がしますけど?
「ギャハハ! マジそれな!」
どこがそれな、なの? 確かあの時の会話聞いてた筈よね??
私の心の中でのツッコミなんてなんのその。高笑いをしながら初恋? 話を続けている。
「もうタケルに会った瞬間、そう、気が付いた時には好きになってたの!!」
「そうそう、初恋って気が付いたらなってるもんだもんね」
あぁ、それはよく私が読んでる恋愛小説の中でも起きてるなぁ。転校生がやってきて、一目見てきゃっ! みたいな? まぁこうやって小説と照らし合わせて同じような感じなんだからそれはきっと事実なんだろう。参考資料の片方ががアレだからちょっと心配だけど。
「もう、ホントにドキドキが止まらないの!」
ねー! と盛り上がっていると、授業の始まるチャイムが鳴った。アケミとゆかいな仲間達の中の数人が慌てて教室からバタバタと出ていくと、すれ違うように先生がやってきた。あら、一部は同じクラスじゃなかった? ……まぁ誤差みたいなもんね。
先生はそれを気にした様子もなく、授業をスタートさせた。まぁあの子達がギリギリなのはいつもの事だものね。けど、先生なのに一言も無いのはどうかと思うよ。
小さく溜め息をつくと、授業に集中する……なんて事はなく、先程の参考資料(アケミとゆかいな仲間達)のおさらいをしていた。
ドキドキが止まらない……か。私にはそういうの無いなぁ。ふと隣の席の男子を見てみる。確か……バスケ部だったかな? 身長は百八十センチ位かしら。いかにも運動部って感じの体格で、顔もどちらかというとイケメンに属するタイプだと思う。
うーんと、そうだそうだ。マネージャーと確か付き合ってるって聞いたような無かったような記憶がある。あれ、ない?まぁいいや。えっと、きっとドキドキが止まらない、そんな初恋? を経て、付き合ったのね。知らないけど。
色々と考えている間に授業が終わってしまった。今日も恋の事がわからなかったなぁ。
「恋、かぁ……」
学校も無事終わり、一人でトボトボと自宅に向かって歩き始める。
「初恋って気が付いたらなってるもんだもんね」
「もう、ホントにドキドキが止まらないの!」
ドキドキが止まらないとはどういう状態なのだろうか? まぁまだそんな事になった事が無い私には、まだ初恋の経験がないという事なんだろう。こんなに参考資料(恋愛小説、アケミとゆかいな仲間達)を漁っていてもわからないなんて恋とはなんと難解な問題なんだ。
私の心のように夕日が沈み行く中、私は前を向いて歩く事が出来ないのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます