ボクらのウタ

Keng

第1話 出会いは突然。

いつもと変わらない時間に、いつもの道を歩き、駅に向かう。

そして、いつもの最寄りの駅に着き、いつもの時間に電車に乗る。

いつもと変わらない、乗客の数。

車窓から見えるのは、いつもの景色。

いつもと変わり映えのない毎日。

電車に乗り、毎日仕事場に向かい、終われば家に帰るだけ。

帰れば食事が用意され(まぁ実家暮らしなので)、食べて風呂に入って、

仕事の疲れで布団に包まり、テレビで動画を見ながら、

スマホで呟きをチェックし、午後23時にもなれば寝て、また朝起きての繰り返し。

30歳も過ぎて、社員になる訳でもなく、アルバイトを続けている生活だ。

周りの同級生は、結婚して世帯を持つ人も増えたり、自分のやりたい仕事をして、順風満帆な生活を送っていたりしている。

特に、それを羨ましいとか、焦りが出ているとかもないし、

やりたい事がないという訳でもない。

小学生の頃から、絵を描いたり、漫画を描いたりするのが好きで、

漫画家、イラストレーターになりたいという夢は、今でもある。

特に漫画家が一番なりたい職業である。

だけど、今の今まで特別何かをしてきたか?と問われると、

「うん。」とは、胸を張って言えないのが、現実だ。

かといって、全く何もしてない訳でもなく、物語や、キャラクターを考えたり、

外に居る時も、脳内で物語を演じていたりする。

しかし、描きたいものが多過ぎたり、途中で話に飽きてしまったりして、中々纏まらず、パンクしてしまう。

それを繰り返してしまうこともあってか、中々投稿することにも踏ん切りがつかず、ズルズルと来てしまった。

他人からすると、「それは、言い訳だ。」と一喝されてしまいそうだが・・・。


話を元に戻そう。

そんなこんなで、平凡な変わり映えのない毎日を送り続け、今日も仕事場に向かう。

通勤電車にも疲れたし、在宅ワークに憧れる。

出勤前に、いつもの会社近くのコンビニに立ち寄り、飲み物を買おうと、

レジに並ぶ。

これも見慣れた光景だな。

「いらっしゃいませ。レジ袋はご利用になられますか?」

学生アルバイトっぽい、男の子が緊張したような口調で尋ねてた。

「ください。」

オレは、淡々と答え、レジを終えた。

『ちょっと可愛い感じの人だな。大学生だろうか。』

そう何気なく思いながら、仕事場に向かった。


オレは、高架下に構える小さい飲料系の卸問屋でバイトしている。

今日も、疲れた体に、眠い目を擦りながら、仕事をする。

注文リストを確認しながら、ケースをピックしていると、

先程のコンビのバイト君が、自転車を漕いで横切って行くのが見えた。

顔が、少し合ったようにも見えたが、特に気にすることもなく、去っていった。


次の日も、変わらず飲み物を買いに、職場近くのコンビニに立ち寄った。

「いらっしゃいませ。」

昨日レジ対応してくれたバイト君が、品出しをしながら、

接客御挨拶をしてくれた。

オレは、いつも買う飲み物を片手にレジへ向かうと、バイト君が

またレジ対応してくれた。

「レジ袋はご利用になられますか?」

「ください。」

オレは、相変わらず淡々と答えた。

レジ袋要る、要らないの質問するのも大変だなと思いながら、

また店を後にした。


それから、一週間くらいしたある日。

またいつもの様に、コンビニに立ち寄ると、バイト君が品出しをしていて、

「いらっしゃいませ。」と、接客挨拶をしてきた。

いつしか、マスクでこそ口元は隠れているが、目元で優しそうな雰囲気を出している感じを見ると、少し癒しを覚えてきた。

マスコット的な感じで。

その日も、レジ対応はしてくれたが、

いつもレジ袋をお願いしているせいなのか、それともほぼ毎日通っているせいなのか、覚えられているようで、

「レジ袋ご利用ですよね?」と聞いてきた。

「あ、はい。」

オレは、少し呆気に取られた感じになってしまいながら、答えた。

そして、お釣りを受け取る際に、少し指が触れた。

「・・・・!」

なんだか急に、ドキッとした感情に襲われた。

『なんだろう。この気持ち・・・』

その日から、オレは彼を少し意識してしまったのだ。


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ボクらのウタ Keng @keng-63

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