クッキー



 彼女は機嫌が良いと鼻歌を紡ぐ癖がある。だいたい、最近は噂の先輩さん絡みなのだが。


「先輩さんと、今度は何があるの?」

「へ?」


 目を点にする。どうして分かったの? と顔に描いて。分かりやすいことこの上ない。


「……あのね、先輩がパフェ食べたいって言うからお店探してて」


 本人は平静さを保ってるつもりらしいが顔は真っ赤。


「このお店は?」


 とクッキー缶を差し出す。


「え?」

「ケーキのお店だけど、パフェもやってるよ。とりあえず食べてみたら」


 無造作に口に放り込んでやる。甘くて、あっさり溶ける魔法の味。何て幸せそうな顔するんだか。



 このお店のクッキーは恋愛成就のジンクスがある。とっとと幸せになれって、ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る