数字の冒険

ライリー

[読切]

 あなたの家の近くにもきっとある、数字たちの島の話です。葉っぱが生い茂る64番の森の中にぽつんと建った赤い屋根の家から、1と8が出て来ました。町へ出て学校に行くところです。1本小道を出て十字路を右に曲がると、道の先に大きな0の校門が見えて来ました。1と8は校長先生に2っこりと挨拶して入っていきます。302の教室に入って席につくと、友達の2や3とおしゃべりを始めました。「昨日の素数会はどうだった?」「つまらなかったよ。一番年寄りののお爺ちゃんの話が長くってね、まず自己紹介で名前が、14889444572041325547806・・・」

まもなく先生が入ってきてこう言います。

「おはようございます、みなさん」

数字たちはおしゃべりをやめ皆一斉に起立し声を揃えて、

「おはようございます」

先生は着席と言うと25っと表情を緩めて言いました。

「今日は皆さんが待ちに待った遠足です。お弁当、水筒、タオル、しおり、忘れものはないですか?それでは行きましょう」

 皆んなは一列になって校舎を出ました。皆んなは楽しそうにガヤガヤと話しながらぐんぐん歩き、例えばこんな会話が聞こえます。

「5よお、素数会サボっちゃいけないだろよぉ」

「いいやい、どうせ年寄りの自己紹介で終わっちまうんだろ。それより777番の宝箱みるの楽しみだなあ」

「いや、7番の宝箱が良いよ」

「なにい、大きいほうが良いんだろ」

「でもあんまり大きいと良くないんだろ」

そんな様子でずんずん歩いていると、ふと8は、64番の森の木が少し減っていることに気が付きました。なんだか6ず6ず6か6かしていてもたってもいられなくなり、ついに列を抜け出して森の方へ走っていきました。先生や皆んなは驚いて8の後を追いかけました。

 8は森の木が何者かによって次々にバッタバッタと切り倒されてゆくのを見ました。その何者かは8の姿を見るや否やさっと逃げ出し、8も追いかけましたが直ぐに姿が見当たらなくなってしまいました。はあはあしながら辺りをキョロキョロ見回していると、1が追いつきました。

「そんなに151でどうしたんだい」

「今そこに悪いやついた。僕らの木をバッサバッサ切ってたんだ」

そう言って1のほうを向くと、1がいなくなっていることに気が付きました。8はなんだかゾッとしてその場に立ちすくんでしまいました。

 するとまもなく、今度は数人の友達と、見たことのない数字がやってきました。友達は言いました。

「大変だ、森の中入っていったら皆んなどんどんくっついてしまったよう!」

「足元を見るんだ!」

8は、地面に+や×や-や÷が落ちていることに気付きました。

「後ろの見たことない数字はいくつだろ」

「わかんない、先生はいくつだったっけ」

「知らない、」

ある友達がぱっとひらめいたように言いました。

「そうだ、どんどん÷すれば知ってる数字になるよ!」

「な、駄目だ!」

8が叫んで止めようとした時、その友達はいなくなり、後ろの数字が違った知らない数字に変わりました。8はその数字に何だかおぞましい感じを受けました。友達の一人が震え上がって叫びました。

「駄目だあ、逃げろ!」

友達は皆一斉に一目散に逃げ出しました。

「いや待て、危なぁい!」

友達は、足元の光った÷を踏んで、すぐさま後ろの数字に吸い込まれてしまいました。残ったのは8だけになってしまいました。

「我23.07936507936508成」

後ろにいた数字がもはや化け物のようになり8に襲い掛かろうという時、8はこんなことを考えていました。

(あーあ、僕らはみんな個性を持っていたのに、素数だったり偶数だったり平方数だったり、それが計算に吸い込まれて、まとめられて、こんな化け物になっちゃうんだなあ、でもあの切り倒された木のように日の当たらないとこに追いやられるのも僕は嫌だ。どうしようか。あ、こうしよう!)

8は手の平をパチっと合わせると、地面に横になって×の上に乗りました。たちまち8は化け物に吸い込まれてしまいました。しかし、化け物は木に体を5454擦らせながら苦しみます。化け物が取り込んだのが∞だったからです。それから化け物はギャアギャアうめきながら×を持って走り、森を抜け、学校の校門にぶつかり、門に吸い込まれてゆきました。すると門は消え、教室に生徒と先生が現れ、何事も無かったかのように授業を始めました。なるほど、抱え切れない計算は放棄されて元通りになるのですね。

 さて、生徒たちは皆一桁の数字で被りなし、割り算3回、掛け算2回、足し算引き算共に1回とすると、先生は幾つでしょう?

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数字の冒険 ライリー @RR_Spade2

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