YOU THINK
ヒロコウ
第1話奇跡の花
草木をテンポ良く揺さぶる風が吹いている。
街から少し歩いた所にある山には、青いバラが咲いている。
この花には願いを叶えることの出来る力があると、昔から言われている。
この山には、奇跡の花に願いを叶えてもらう為に毎日人が絶えない。
スニーカーの紐を結び直している俺は、17歳の学生だ。
「俺は……叶えないといけないんだ」
俺もまた、願いを叶えてもらう1人だ。
一歩一歩と進むたびに、体感温度が下がる。
重い足をゆっくりと持ち上げ、進んでいく。
10分程して、花のある場所に辿り着くことができた。
「こ……これが奇跡の花……」
俺の前には2人の人が願いを叶えるために並んでいた。
一番前の40代ぐらいの女性は、恐らく子供への願いなのだろう。
「どうか……どうか娘の病を治して下さい……」
涙を流して、消えてしまいそうな声で願いを言う。
雲が出てきて、周りが暗くなる。
奇跡の花が光り、少しして元の花に戻った。
どこかで電話が鳴る。
「もしもし……」
先程願いを言っていた女性の携帯だった。
「え?治った?ほんとに?よかった……」
女性は涙を流しながら山を降りていった。
恐らく願いが叶ったのだろう。
今度は俺より少し程若い、男の子が願いを言う。
「僕は昔から弱くて、いじめられていたんです。
だからいじめっ子に反撃出来るだけの力をもらえませんか?」
先程と同様に雲が出てくる。
だが、様子が変だ雲はさっきよりも黒く雷が鳴っている。
「どうして駄目なんですか?」
あくまで推測に過ぎないが、奇跡の花からこの子に言葉が聞こえているのだろう。
「そんな……なんで……僕の心が分かるとでもいうのか……」
次の瞬間光が俺の視界を遮る。
光が弱まり、目をあけると男の子が消えていた。
偽りの願いを叶えようとした事に花は怒りを表したのだろうか。
「お前は何を願う」
どこからか声が聞こえる。ただ耳から聞こえるのではなく頭に直接的に声が聞こえてくる感覚だ。
「俺は……その……」
言葉が出ないでいる俺に、花は言う。
「私はお前の心が息をするように分かるが、お前の口から聞きたい」
僕は雷に打たれる事への恐怖心を押し殺しながら口を開く。
「俺は……自分の生きてる意味を知りたいんです」
少しの間があり、雲が出てくる。
花は光を放ち話しだした
「自分の生きている意味なんてものは、誰しも分からないものなんだよ。」
風が少し吹いた。
「でもね。君がいて、隣に居る人が笑ってくれているならそれはもう、生きる意味なんじゃないかな」
俺は涙が出た。その涙が花を濡らす。
今朝とは違い空は晴れていた。
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