第3話

見ると見覚えのあるクルーザーが浜に打ち上げられていた。

警察によればクルーザーは、損傷らしい損傷はなかったのだが、誰も乗っていなかったと言う。

あととも綱が船の外に垂れ下がっていたので、なにかに船をつないでいたのが外れたのではないかとも。

そうなると、ふたりはどこかに取り残されている可能性がある。

どこに。

桐谷は警察などあてにせずに、それこそ必死で調べた。

すると、四か月ほど前に、クルーザーが漂着したところとそう離れていないところに、無人の小型漁船が流れついたことを知った。

――これはもしかすると……。

桐谷は考えた。

この二つの無人船の漂着。

もしかしてなにか関係がるのではないのか。

そして関係がるとするなら、同じところでなにかがあったのではないのかと。

ネットで調べ、最終的には海流の専門家に話を聞いた。

専門家はかなり迷いながらも、二か所の可能性を示してくれた。

二つの無人船の漂着が、同じ場所で何かあったと仮定をしたならと言う条件付きで。

桐谷はそこに行ってみようと思った。


桐谷は妹を探して海に出ることを、両親に話をした。

海に出れば携帯は繋がらない。

何かの時に余計な心配をかけないためだ。

仕事の方も大丈夫だ。

桐谷はそれなりに売れているデザイナーで、最近大きな仕事を終えたばかりだ。

貯えも充分にある。

しばらく仕事をしなくても、なにも問題はない。

――行きますか。

桐谷は早朝からクルーザーで海に出た。


最初の目的地に着いた頃は、昼を過ぎていた。

数時間捜索すると、あたりは暗くなってきた。

続きは明日にした方がいいだろう。

桐谷はクルーザーで一夜を過ごした。

日が昇ると同時に調査を再開。

専門家が示した場所は、広くはないが狭いとも言えない。

そこをくまなく調べる。

前後左右に常に意識を配りながら。

暗くなるまでクルーザーを走らせたが、これと言ったものは見つからなかった。

ただ海が広がるばかり。

桐谷はその日もクルーザーで一泊した。

朝、しばらく見まわったが、やはり海ばかり。

この海そのものが原因だとしたら、桐谷にはお手上げなのだが。

――一旦帰るか。

そのまま帰る。

暗くなるころには家にたどり着き、両親にも連絡を入れた。

明日はもう一つの候補地だ。


次の日、また早朝から海へとくり出した。

こちらも昼過ぎには目的地に着いた。

数時間探したが特に何も見つかることはなく、日が沈んできた。

今日はここまでだ。

桐谷は明日に備えて就寝した。

次の日、また早朝からの調査。

クルーザーを走らせること数時間、お昼が近くなってきたころに、桐谷の視界に島が飛び込んできた。

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