第5話 Side シスター・マルグリット(下)
祝福の儀の日が訪れました。
その日は何故か胸騒ぎを感じた私は、エディの祝福を受ける順番を一番最後にしようと決めます。
「エディ。ちょっとお願いがあるんだけどいいかしら?」
「いいよ何?」
「今日の祝福の儀だけど、終わったら片付けを手伝って欲しいから一番最後に受けてもらえる?」
「分かったよ。祝福の儀を一番最後に受ければいいんだね!」
エディが微笑んで答えました。7歳になっても天使のような微笑みは健在で、未だに私に様々な道を示してくれます。
ご近所でも微笑みの天使として有名になり、微笑み見たさに安くしてもらえたり、多く買えたりするので必ず連れて行きました。
そしてついに祝福の儀が始まります。
祝福の儀は、家格の高い家の子から受けるのが暗黙の了解となっています。今日は町長の所の次男であるユルゲン君が最初のようですね。
貴族の子たちは王都の教会まで行くのが慣例なので、この場にはいませんし、この町には貴族はいません。つまりこの町では町長が一番偉い事になります。
ユルゲン君が祈りを捧げると、私の目の前のステータスボードという名の石板に文字が浮かび上がる。
【名前】ユルゲン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】1
【HP】10
【MP】15
【ATK】6
【DEF】10
【INT】8
【AGL】7
【能力】魔:火
貴族でもないのに火の魔術の適性がついている。平民ではとても珍しいわね。
「ユルゲンは、火の魔術の能力を授かりました。ユルゲン、ステータスボードを確認しなさい」
私がそう告げると。
ユルゲン君はステータスボードを見てガッツポーズしています。
そうして次々一般の人たちが祝福の儀を受けていくと、最後に孤児院の子たちの順番が来ました。
孤児院の先頭はアレン君で、剣術の能力を授かります。アレン君はエディたちと冒険者になる約束をしていたので、剣術能力はきっと役に立つでしょう。
驚いたのは、メアリーちゃんに水の魔術の適性があったことではないでしょうか。
水属性の魔術が使えると、回復の魔術を覚えることができるので、冒険者になったら引っ張りだこでしょう。私のエディに付きまとう悪い虫の一匹ですが、エディの安全な冒険者生活のためには必要な能力ですね。
ついに最後の一人となり、エディが女神像の前で祈りを捧げます。祈りを捧げる姿も、とても絵になります。
ステータスボードが一瞬光ったので確認するとそこには。
【名前】エドワード・ヴァルハーレン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】1
【HP】10
【MP】300
【ATK】10
【DEF】10
【INT】300
【AGL】10
【能力】糸
【加護】モイライの加護、ミネルヴァの加護
「……」
ツッコミ所が多すぎて困りますね。ヴァルハーレンって、あの有名なヴァルハーレン家のことかしら?
【MP】と【INT】が300って! 成人した人族の平均が400ぐらいといわれているからかなり異常ね……
【能力】の糸も聞いたことない能力だし。【加護】って何よ? 初めて見たわ!
私が考え込んでいる時間が長かったため、周りがざわつき始めたので慌てて発表します。
「エディの授かった能力は糸です。エディ、ステータスボードを確認するように」
エディが立上りステータスボードの所まで歩こうとした瞬間!
頭を押さえて崩れ落ちます。
「がああああああっ!」
エディが苦しそうに叫びます。
「エディ! 大丈夫⁉︎」
私が駆け寄り抱き起そうとすると、そのまま気絶したのです。
焦る気持ちを抑えて、残っている人たちに言いました。
「これで祝福の儀を終わりますので、みなさん解散してください」
私は祝福の儀を終わらせると、エディとステータスボードだけを抱えて治療室へ急ぎました。
治療室のベッドにエディを寝かせると治療を試みます。
「精霊よ、傷つきし者を、癒し給へ」
しばらく待ちますがエディに変化などは見られず、熱も無いし身体の外見的異常も見当たりません。
「どうやら気絶しているだけのようね……」
少しだけ安心した私は孤児院に行って、子供たちにエディの目が覚めるまで治療室に寝かせておくよう指示してから、資料室へ向かったのです。
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