二百十六話:


 なるほど、狂っている。


「あはっ」


 と、『仙道 美愛』は思った。

 

「ベルゼ君、刀なんて持ってたんだね」


 闇夜に煌めく無数の赤い瞳。

 ゆらゆらと揺れながらこちらを包囲する。

 闘気を纏いスキルによる強化があっても、手にしていた刀はついに刃毀れを起こし、折れた。 そして、それだけで一瞬、心は恐怖に蝕まれた。


 情けない。

 目の前で狼の如く獲物を狩る男の子は、たとえその手に持つ武器が折れようともその牙で敵を屠り続けるだろうに、と。


「ふぅ……」


 疲労で動きが鈍る。

 『神鳴館女学院付属高校』での戦闘では極力囲まれないように、他の生徒たちと協力し連続戦闘は避けていた。

 決して自ら敵陣のど真ん中に降り立ち、『かかってこいや!』と言わんばかりに斬りこんだりしない。


 狂っている。


 戦闘狂である『仙道 美愛』をして『鬼頭 神駆』の戦い方は常軌を逸していた。


「いいね、いいねっ。 負けてられないよ!」


 新たな刀を握りしめ、戦線に復帰する。

 たった三人しかいない部隊。

 仲間は二人だけ。

 戦い方を変えなければ、順応しなければ肩を並べられない。


「大地の母よ、守護の力を、アースシールド!」


「ありがとう!」


 魔法使いの格好をした葵のワンドから魔法が送られる。

 淡い土色の光が部隊を包み込む。

 力が漲る。

 それに少しの攻撃程度ならかすり傷すら負わない。


 ただし体だけだ。

 刀には影響はないようで、刀の耐久力は美愛のスキルしだい。

 連続戦闘になれば集中力を維持し続ける必要がある。


「反りに慣れないとね……!」


 刀剣と竹刀の違い。

 美愛は竹刀に似た曲がらない刀を選んでいたが折れやすい。

 神駆に渡された刀は曲がりやすく反りは強いと、クセがあって使いづらい。 しかし以前のものよりも折れにくいだろう。

 戦い方を変えなければならない。


「突く、いなす、がメインかな?」


 スケルトンとゾンビを相手に美愛は試すように刀を振るう。

 体の使い方も変えていく。


「パパが言ってた、遠心力は使うなって意味、やっとわかったかも!」


 怪物の膂力で振るわれる武器をいなし、首を狩る。

 美愛の動きは徐々に小さくなっていくが、その技の切れ味は鋭くなっていく。

 

 開花する。


 無数の怪物の群れの中に放り込まれ、少女は己の才覚を存分に発揮し始めた。



◇◆◇



 パーティタイムだ。


「はっはっ!」


 地形によって進軍を阻まれたアンデット集団。

 指揮官不在なのか、侵攻拠点には無数の雑魚が集っているだけだ。

 つまりただのボーナスステージ。

 支配領域を巡回していくとたまに遭遇する。

 ひょっとして支配領域を拡大するには必要なことなのかもしれないな。

 土地からエネルギーを得ているのか、接続するのに必要な行為なのかも?


「シン!」


 葵を守りつつ、ツインテは放置しつつ戦闘を繰り返していたのだが。

 葵がツインテを指さす。

 その先には半分に折れた刀で奮闘するツインテがいた。


「はぁっ!」


 駆ける。

 この辺の雑魚には遅れは取らないだろうと油断していたが……。 俺と違って武器はしょぼいのだった。

 なんなら俺の戦闘力なんてガチャ産装備のおかげだしね!


「ベルゼ君! ごめんねっ、ありがとー!」


 汗を流し肩で息をするツインテを少し休ませる。

 さすがに敵陣の真ん中に突っ込んだのは厳しかったか?


「あは、楽しい~~♪ でも、刀が折れちゃった……」


 しょんぼりとトレードマークの髪が垂れさがる。

 具現化出来ている武器がいくつかあるので使えそうなのを渡す。

 ランク的にはUCと微妙な性能だが、ノービスソードよりかは性能が良さそうかな?

 反りの強いクセのありそうな刀だ。


「安綱みたい……!」


 気に入ったようで瞳をキラキラとさせている。

 そんなに凄い刀ではないと思うよ?

 刀に詳しくないのでよくわからないが。


 正直、武器はSRランク以上は欲しい。

 Rランクの槍とかも持っているが微妙だ。

 死蔵されている装備の使い道ないかなぁ……。

 ソシャゲだったら分解して強化素材とかにできるのにね。


「大地の母よ、守護の力を、アースシールド!」


「ありがとう!」


 葵の支援魔法。

 盾のようなエフェクトが一瞬見え、体を土色のオーラが包み込む。

 防御系の支援魔法なのかな?

 力の向上もありそうだ。

 

 プレゼントした装備もしっかりと着ている。

 ちゃんと使用者の体形にフィットしたようで安心した。

 ぶかぶかのローブじゃ歩きづらいからな。


「前より……範囲広くなった」


「ほう」


 魔法の射程と効果範囲が広くなったらしい。

 

「魔法書……ちょっとだけ、わかる」


 謎の言語で書かれた魔法書だが、少しだけ理解できるようだ。

 魔法を覚えているからだろうか? だとすると魔法のレベルが上がればもっと読めるようになるかな?

 ちなみに俺にはさっぱりわからない。


 スキルと同じで使っていればそのうち上がるだろう。

 魔物を狩りまくるしかないな。


「がんばる……!」


 課題としては魔力切れと自衛力かな。

 どうしても魔力切れが起こるから継戦能力が足りないし、葵はその……運動能力がね? ただ本人も自覚しているようで、地属性魔法を最初に選んだのもその為のようだ。

 攻撃よりも防御とサポートに向いている属性。

 パーティで足りない部分を補おうとした選択だった。


「はぁぁ……! うん、いいね! 面白いよ、この刀!」


 うん、ちょっと、成長早すぎない?

 すでに剣筋がよくわからんほど速いんだが?

 体の使い方なのかなぁ。 

 わからん。

 それに普通は魔物の群れに連れていくとへとへとになる。

 肉体的にも疲れるが精神的にボロクソに疲弊する。 

 最初の頃のミサなんか酷い物だった。 甘い物でつらないとベッドから動かないほどに。

 なのにツインテはウキウキと最初よりも元気そうにしているのだから、葵が変態を見る目で呆れるのもわかるよ。


「ベルゼ君! なに、この子っ、――――可愛いっ!!」


 ドロップアイテム拾いをする『シャム太』にメロメロなツインテであった。





――――――――――――


ご心配をおかけしてすみませんでしたm(__)m

まだまだカクヨム様に投稿できそうです!

応援ありがとうございます(o_ _)o))


ちなみに、裏バニーとお〇ん〇ん、あと近況ノートの梅香三曹がアウトでした(笑



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