※修正しました 二百三話:「……すき」


 葵は手に持つ鍵を空中に挿しこむ。

 そうすると目の前に扉が現れる。


「ん……」


 何も無かった空間にいきなりだとやっぱり不思議だ。

 彼女はもう行ったことがあるのだろう。

 おいで、おいでと手招きする葵。


「?」


 なにか叫び声が聞こえた気がする?


「くる」


「おう」


 ためらったと思われたのか、葵に手を引かれ部屋の中に入った。

 すでに戦闘態勢の下半身が葵の背中に当たる。


「……もう」


 わざとじゃないよ?


「お部屋……可愛い。 ありがと、シン」


「うむ」


 気に入ってくれたらしい。

 彼女たちの部屋の中は軽くみたけど、葵の部屋は落ち着いた感じでいいね。

 備え付けの家具はあるけど、物を持ち込むこともできるから自由に使って欲しい。

 モダンな照明の明かりが落ち着く。


 手を引かれ大き目なベッドに腰をかける。


「んっ♡」


 腰をかけた俺の膝の上に葵は乗っかってきた。

 どうしたのだろうか?

 いつもより大胆に積極的だ。

 二人分の重みで大き目のベッドが軋む。


「……気持ち、イイ?」


「ん……」


 近い。

 膝上の葵の体温を感じる。

 彼女はその細い指で俺の敏感部分をイタズラし続ける。


「あっ、……あっ」


 彼女はお腹に当たるナニかに悶えるように小さく腰を動かす。

 甘い声が漏れる。

 眠たげな瞳は閉じられ、小さな唇がキュッと引き結ぶ。

 『』の先端を器用に指先でいじりながら、自身の細い腰を動かしている。


「んあっ」


 我慢するように俺の胸筋に顔を埋める葵。

 『』を捕まえている手に力が籠められる。

 胸の中で震えている。

 普段エロ伯爵な葵はずいぶんと敏感なようだ。


「っふぅ……」

 

 小さな葵に押し倒される格好で俺はベッドに仰向けになる。


「「……」」


 垂れ下がった髪。

 ゆっくりと彼女の顔が近づいてきて、唇が重なる。

 その特別な行為に心臓はドクドクと動きを速める。

 胸に手を置いていた葵に伝わったのか、顔を上げた彼女は微笑んでいる。


「……すき」


 離れた薄い唇がそう動いた。

 そしてまた近づいてくる。


「んっ、はんっ、んんっ♡」


 いつになく積極的な葵ニャンコとしばらくベッドの上で戯れました。


・・・・・・

・・・・

・・



「おっぱい……なくてもいい?」


「うむ」


 すっきりした表情の葵。

 どうにもクレハの件で俺を見境の無いおっぱい星人と勘違いして焦ったらしい。

 それにミサからも何か聞いたようでいつもより積極的だった模様。

 つまり……葵のヤキモチ爆発か!


「また……しよ?」


 お尻を撫でながらそういう葵は嬉しそうだった。


「またね……」


 彼女に見送られながら部屋を出る。

 そうすると元の視聴覚室に戻ってきた。

 まだ外は暗く星が綺麗だっ――!?


「シンク君っ!」


 びっくりした!

 いきなり玉木さんが俺の胸に飛び込んできた。

 ギュッと背に手を回し抱きしめてくる。


「んんっ、やっぱり、葵ちゃんのにおいがするわ!」


「っ!?」


 においで個人の特定が可能だと!?


「ここで二人のにおいが消えたから、きっと部屋に行ったと思ったわ!」


 名探偵玉木さん。

 エルフさんは耳より嗅覚が優れているとでも?


「シンク君、私の部屋も見にいきましょ?」


 胸元からエメラルドの鍵を取り出す玉木さん。

 エメラルドの鍵越しに空色の瞳がおねだりするように見てくる。

 密着する豊満な双丘は早く行こうと押し上げてくる。


「ね? シンク君……」


「うむ」


 おねだり上手な玉木さんの誘惑に勝てるはずもなく。

 俺はまたしても現れた扉の向こう側へと進んでいくのだった。

 

   

◇◆◇



 はやすぎる。


「「「せい! せい! せい!」」」


「丹田に意識を集中しろ!」


「はい! 師匠!」


 すでにジェイソンに毒された若者たちが上裸で筋トレをやらされている。


「常に見られていることを意識し、気を張り巡らせろ。 一瞬たりとも気を抜くなッ!」


「「「はい! 師匠ッ!!」」」


 ……まぁ戦力強化になるからいいか。

 社会の崩壊した世界だ。 世間様の目を気にする必要もあるまい。

 もう好きにしてください。

 賢者たいむに入った俺は悟りを開く。


「おはよう、鬼頭君。 ちょっと相談があるんだけど、今いいかな?」


 なんですか?

 ジェイソンの苦情なら受け付けませんよ?


「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ!? 『神鳴館女学院付属高校』と『クラフトワークス』の代表者さんと会議をする予定なんだけど、鬼頭君も出席してくれないかな?」


「ほう?」


「目的は情報共有と連携の強化。 お互い有事の際に助けられるように親交を深めようって感じかな? それに今、道路整備をやっているけど……僕たちだけだと人手が足りないから、向こうにも手伝ってもらおうかなって」


 なるほど。

 服部先輩も大変だな。

 東雲東高校の運営だけでも大変なのに、周囲にまで気を配らないといけないとか。

 頑張れ!(他人事)

 いやぁ、押し付けてよかった。


「うむ」


「良かった! 先方からぜひ鬼頭君もって念を押されてたから……」


 念話で念を押されるとか冗談ですか?

 黒髪ロングも近いうちに領主と話しがしたいみたいなこと言ってたしね。

 『クラフトワークス』は誰がくるのか少し楽しみだ。


「それと、忍者さんたちなんだけど……」


 忍者の苦情は知らないぞ!


「僕の事、首領って呼ぶのやめてもらえないかな……?」


 服部首領。

 可愛い見た目の服部先輩には似合わないね。




――――――――――――


いつもお読みいただきありがとうございます!


今日はクリスマス・イブ!

皆様どうお過ごしでしょうか?

大舞はもちろん仕事です!!


人手の少ないブラッククリスマスイブ……(´・ω・`)


行ってきます~~('◇')ゞ

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