百八十九話:二体目


 「うぅ……どうしてこんな……」


 完全な被害者ゼロとはいかなかったようだ。

 亡くなった人たちを運ぶ彼女たちは泣いている。

 これまで辛い時を共に生き延びてきた仲間の死を涙しない者はいない。

 

>>>神々の祝福を発動しますか?


 神々の祝福を発動したいと念じると脳内に問いかけがある。

 さて、どうなるだろうか?

 

>>>神々の祝福を発動しました。

>>>ガチャSR以上排出率UP(3日)を獲得しました。


 残念ながら死者蘇生奇跡は起こらなかった。

 ガチャ狂いに世界は救えない。


「……」


 『ガチャSR以上排出率UP(3日)』を得たのにテンションが上がらないまま、藤崎女子高校に入っていく。

 なんだか、変な臭いが立ち込めている。

 淫臭。

 ミニオークのヤバいヤツ。

 死んでもなお人々を苦しめるのか。

 東雲東高校の方には来てほしくないな。

 藤崎大橋で食い止めたい。


 『クラフトワークス』に援助しつつ打診してみよう。


 

 各教室から音が聞こえてくる。



『おじあんっ! しゅごいっ、あぁ! あっ~~~~♡』


 山木さん……!

 助けるべきなのか!?

 逆に後で恨まれそうなので放っておこう。


「うひひ」「はぁはぁ……!」「うひょひょ!!」


 淫乱学園サバイバル……!

 俺は『朧風月』に着替え、【隠密Lv.1】を発動しつつ人気のない方に移動していく。

 さぽとアイリの居た教室にきた。

 彼女たちはチャイナ服のまま寝ている。


「2万ポイントくらいか」


 魂魄ポイントの残りは2万弱。

 あまり貯まっていない。

 いや、普通の人からしたら貯まっているほうだと思うけど。

 神々の祝福を発動する前にもっと貯めておきたかった。


 【ジョブ】用に取っておくべき?


「否」


 乗るしかないでしょう、『ガチャSR以上排出率UP(3日)』のビックウェーブに!!


 やけくそ気味にガチャをタップする。

 今回はどのガチャでも排出率UPなようでPOPがでかでかと表示されていた。

 

 『SR排出率5倍 SSR排出率10倍 UR排出率50倍』


 しかしこの倍率ってなんか妙だよな?

 よく考えるとおかしい。

 明らかにURを引かせようとしている……?


「……」


 前回のURはまさかの死神との無限バトル。

 もしあのまま死神を倒すことができなかったらどうなっていたのだろう?

 ずっとあの世界に閉じ込めれて∞ループ。

 考えただけで恐ろしい。

 きっとどこかで心が壊れてしまったに違いない。

 それともある程度したら出してくれたのだろうか……?


 URは出て欲しい、でもちょっと怖い。


「ハウジングガチャ」


 とはいえ今回は死神もいないので大丈夫だろう。

 いきなり死神出たら運営にクレームですわ。


「いけ!」


 エキゾチックショートヘアの猫さんが地球儀のようなガチャをその肉球を使って回転させる。

 なんてラブリーなんだ。

 魔術師のような恰好の猫さんの前で無数のカードが魔法陣から飛び出す。

 宙をグルグルとカードは回っている。

 色とりどりのカード。

 中には虹色のカードもある。


 エキゾチックショートヘアの猫さんが杖を構え肉球弾を発射する。 『ニャァ』という効果音と共にカードを捕らえる。

 捕まえたカードの色は赤!


「SRきた!」


 発光する筐体から少し大きいカードが飛び出し手元に納まる。

 カードの背面は赤く煌びやかだ。 このままコレクションしたいくらい。

 絵柄には……噴水?

 ちょっとおしゃれな猫の水のみみたいな感じかな?

 

「お?」


 カードを持ち具現化させようとするといつもと違っていた。

 位置を指定してそこに出現させるようだ。

 思ったよりも大きい。

 学校の机2個分くらいスペースが必要だ。


「おお?」


 試しに教室の隅に設置してみた。

 円形の台座の上に水色の丸い水晶が設置されており段々に受け台がある。

 イメージとしては噴水型の神社とかにある『手水舎』。

 やはり台座に宝石がありそこに魔石を納めると、ちょろちょろと水晶から水が出てきた。

 水晶の台座から少し伸びた部分から下の台座に落ちて水は溜まっていく。

 さらに下の台座にも落ちていきその後は溜まるだけだ。

 一番下の台はいっぱいになっても溢れることはない。


「うまい」


 試しに掬って飲んでみたが冷たくて美味しい。

 特別な効果があるかは不明であるが、これはいいぞ。

 ただ、この場所に固定されてしまったようで持ち運びできない。


「……まぁいいか」


 また当てればいいや。

 そういうこともあると、次は慎重に設置場所を決めよう。


「次だ」


 一回100魂魄のガチャを回す。

 だいぶ感覚が麻痺してきたけど、やっぱり脳汁フィーバーする。

 テンション、上がってきたぜぇええ!!


「こいこいこい!」


 ぐるぐる回るカードを狙うエキゾチックショートヘアの杖に振られるように首を動かしてしまう。

 『ニャァ』

 

「くは!」


 白カード。

 ノーマルかぁ、まあ仕方ない。

 ガチャだから基本ハズレだから。

 排出率UP仕事せぇよッッ!


「むっ!?」


 排出されたカード。

 その絵柄はまさかのドアップにゃんこ。

 このあざとい可愛さは……。


「エキゾチックショートヘア!」


 二体目の人形だ。

 魔術師の格好をしたエキゾチックショートヘアさんをゲット!

 ちゃんと動くぞコイツ。

 お顔がラブリーすぎる。

 

 シャム太も呼び出し二人を並べてみる。


 イケメンシャム猫剣士とラブリーエキゾチックショートヘア魔術師。

 いいねぇ!

 これはもっと欲しいぞ。

 各リミテッドガチャにマスコットが存在するのだろうか?

 そういえば、前に出た時も神々の祝福を発動しているときだった。

 関係はあるのだろうか。

 

 凛々しく歩くシャム太の後ろをエキゾチックショートヘアがおどおどと歩いていく……!


 名前も決めてあげないとな。


「玉木さんは……」


 次は誰に決めてもらおうか?


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