百八十一話:拠点の確認
思っていたより、離れている。
「……」
魔物の本拠点を確認しようと思ったのだが、結構離れているのか確認できない。
魚頭の本拠点は近かったけど、野犬の拠点は意外と遠いらしい。
「ふむ」
日差しが強い。
『ブラックホーンシャドウ』で空を飛んでいると、遮蔽物がないから特に暑く感じる。
アンデット系の本拠点を確認しつつお嬢様学校に向かう。
中級ポーション類と東雲東高校近くの【猫の手】で交換できる食材を運んでいる。
ちゃんと黒髪ロングは素材や魔石をくれるので特に損をすることはない。
市役所の件やクラフトワークスの存在についても教えたいしね。
「ぬ?」
アンデット系の支配地域に入ると、先ほどまでの日差しが嘘のように消え、闇が広がってくる。
まるで夜になったような暗闇だ。
厚い紫色の雲に覆われている。
以前に見た中継拠点。
足を絡め取られ重戦士に吹き飛ばされた場所。
骨の砦はさらに立派になっている。
高度を上げ上空から周囲を見ると、いくつも中継拠点が広がっていた。
「……」
俺が思っている以上に人類の被害は大きいのかもしれない。
侵攻スピードが速すぎる。
領地が増えれば魔物は強化され、さらにスピードは上がる。
早く対策を考えないと、取り返しのつかないことになるぞ。
とはいっても、やっと領地化できて防衛が落ち着いてきたところだ。
これは魚頭を潰した影響が多い。 魚頭の襲撃は0になり、野犬も警戒し襲撃を減らしている。
普通の避難所に余裕なんて無いと思う。
優秀な人材の多いお嬢様学校でも危機に陥っていたのだから。
「おお……」
上空から見る『神鳴館女学院付属高校』は広かった。
なんで田舎の私立高校ってこんなに敷地面積広いのだろうか?
特にスポーツにも力を入れている学校は広い。
野球グラウンド、サッカー場、テニス場……。 武道にも力を入れているようで体育館もたくさんある。 武道場と言うべきか。 劇場や映画館、裁判所もあるとか……なんで?
敷地が広いので色々な施設があっても、開放感はしっかりとある。
校舎の高さも驚く。
市役所ほどではないが10階建てだ。 地下もあり、森の中にはバーベキュー上やコテージ、それに秘密温泉もあると黒髪ロングが前に説明してくれた。
(ただなぁ……)
それだけ防衛は大変ということだ。
黒髪ロングの能力がなければ、どこからか敵に侵入されていたかもしれない。
敷地を囲む大きな壁はあっても、突破されたり侵入されないとも限らないしね。
不思議なことに大抵は門から突撃してくるのだけど。 ゴブリンを除く。
何か魔物側の理由があるのかもしれない。
『神駆。 常識は捨てろ。 先入観は足枷にしかならぬ』
サムズアップするジェイソンを思い出した。
そういえばあの爺、生きているのだろうか?
殺しても死なないような祖父であるが、やりすぎていないか心配である。
身内として彼の人の暴走を止める責任がある。
一度確認に行くべきか。
「……」
忍者フリークで女の子大好きバイオレンス爺。
賢く残忍で用意周到。
常識は皆無。
「行きたくねぇ……」
想定する敵の難易度は上がった。
祖父の特訓のレベルも引き上げられるに違いない。
思い出すのは引きこもっていた俺を学校に行った方がマシっ!と思わせた問答無用な地獄のシゴキ……(トラウマ)。
まぁたぶん死んでるから見に行かなくてもいいでしょ。
頑張れ魔物!
◇◆◇
メイドさんだ。
「お待ちしておりました。 シンク様」
お嬢様学校に着くと。
優しい笑顔の美人メイドさんがお出迎えしてくれた。
「う、うむ」
新しいハニートラップだろうか?
それにしては露出度が低いメイド服だ。
胸元はきっちりと閉じられ紐のリボンをしている。 白のエプロンに黒のロングスカート。
エロさより気品さに溢れている。
優雅に紅茶とか淹れてくれそう。
「伊織と申します。 ご滞在中の身の回りのお世話をさせていただきます。 なんなりとお申し付けくださいませ」
メイドというより秘書っぽい。
仕事のできる感じが半端ない。
無駄な会話は無く、俺の斜め後ろに控え存在感を消している。
できる……!
ただ俺の悪役感が増した気がするのだが……!?
「一ノ瀬様は睡眠を取っております。 恋人とはいえ許可なく寝所に入室は出来かねます。 ご了承くださいませ」
恋人ではないのだが……。
アンデット系の夜襲で寝るのが遅いのだろう。
俺の来た時間が悪かったな。
伊織さんに持ってきた物を渡すと魔石やドロップアイテムを渡された。
あらかじめ準備してあったそう。
取引を終えてまったりとしていると、伊織さんが紅茶を淹れてくれた。
めちゃくちゃ美味しいのだけど、隣に美人メイドさんが佇んでいるとなんか緊張するぞ?
「あ、シン兄ちゃん! 今日もゴブリンぶっ殺しに行く?」
リョウも元気そうだ。
なんだか羽の毛並みも良さそう。
肌もつるつるでぷにぷにしてるし、良い匂いがする。
「そうだ! あの石鹸まだあったら欲しい!」
円がちょっと困ってるんだよねぇ……と、義弟からおねだりされる。
円ちゃんへのプレゼントかな? お気に入りの女の子にプレゼントとはやるではないか。
今どきな中性的なイケメンだし将来はモテモテで女を泣かせまくるんだろうなぁ。
お兄ちゃんは義弟の将来が心配です。
「うむ」
「わぁ、ありがとっ! シン兄ちゃん!」
上手くやっているようでなによりだ。
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