百十四:


 効率だ。


「いやああああ!?」


 最高効率で雑魚を狩りつくす!


「ストップ! ストップ、鬼頭ッ!! ――――止まれえええええ!?」


 どうすれば効率を上げられる? 

 『エポノセロス』の突進はダメだ。

 遅い。 遅い遅い遅い、スロウリィすぎる。

 やはりブラックホーンリアの機動力を生かすべき。


「酔ったぁ……」


 しかし問題もある。

 それはブラックホーンリアのSP補充だ。

 いちいち東雲東高校に戻ってみんなから補充するのは効率が悪い。

 

「それに、なんなのこの服?」


 ならば思ったね、誰か一人連れてくればいいと。

 今の俺なら一人背負って移動するくらい余裕だ。

 SP補充、さらにドロップ回収要員として。


「ばか! エロ! へんたぁーーい!!」


 背中で騒がれるとうるさいが致しかたない。

 ミサよ。

 3日間付き合ってもらうぞ!



◇◆◇



「ええ? 鬼頭君がミサちゃんを連れてデートに??」


「うん。 大穴」


「大穴??」


 鬼頭君の姿が見えないなと思ったら、ミサちゃんと出かけているらしい。

 夜もいなかったみたい。

 最近あんまり一緒にいられないな。


「おやおや、アマミク様元気がないねぇ。 アメちゃんあげようね」


 寂しい。

 もっと一緒にいたいな。


「ありがとう、おばあちゃん」


 ……私って独占欲強かったのかな?

 鬼頭君がみんなと仲良くなるのは嬉しい。

 でも……二人でいる時間が減って、寂しい。


「シン、気合入ってた」


「そうなんだ」


 シン・・……いつの間にか葵ちゃんも名前で呼んでる。

 玉木さんは最初からだったけど。

 私も名前で呼びたいな。

 大丈夫だよね?

 いきなり呼んで変に思われないかな。 


「シンク、君」


 ん゛ーー!

 これは、恥ずかしいかも?

 男の子を名前で呼ぶのって難しいよ!


「おやおや、アマミク様お顔が真っ赤ですじゃ、アメちゃんでもどうぞ」


「ありがとう、おじいちゃん」


 東雲東高校の中の見回り。

 服部先輩から頼まれたのだけど、みんなやたらとお菓子をくれる。

 お菓子も貴重なのにごめんなさい。

 断ると悲しそうな顔をするので、笑顔でもらうようにしているよ。


「はーい、ちゃんと並んで。 みんなの分あるから安心してね」


 玉木さんの炊き出しが大人気だ。

 小さい子供たちから若いお兄さんたちにお父さんたちまで、人だかりができている。

 

「玉木さん、今日も美しい!!」


「あああああっどうして! 俺のカメラは死んでいるんだっ、この根性無しッッ!!」


 アイドルのコンサート並みの熱狂だよ。

 エルフになってしまった玉木さんの魅力は人の領域を超えている。


「うふふ。 シンク君が帰ってくるまで布教活動を頑張るわよ~~」


 玉木さんの炊き出しはママノエ尽くしだ。

 ママノエの鉄板焼き、ママノエのみそ汁、ママノエの踊り食い。

 ママノエ教ができそうな勢いだよ。


「あ! 雪代さんおはよう! 探してたんだぁ」


「おはようございます、服部先輩」


「ちょっと来てくれるかな!?」


「いいですよ??」


 どうしたんだろう?

 昨日貯水槽の水は祝福をかけたから大丈夫だろうし、誰か体調の悪い人でもいるのかな?

 急がなきゃ!

 私は小走りで服部先輩の後をついていく。


 すると巨大な神社が現れた。


「「ええ!?」」


 元は中庭だったはずの場所が神社になっている。

 神聖な空気に満ちて、本殿が存在感を放っている。


「領地メニューで信仰があるんだけど、すっっごい貯まっててね。 神社を建築したよ!」


「なんで!?」


「うん。 バフ……恩恵を得られるんだけど、今一番効果が高いと思ったんだ!」


 領地化して服部先輩が領主になった。

 その仕事をしているんですね。

 みんなから頼られてまた新しいことも始めて凄いなぁ。


「それで、雪代さんには宮司をやってほしいんだ!」


「ふぇえ!?」


 私が宮司に?

 なんでーー!?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る