十話:メニュー

「この淫乱ロリめ! 木実ちゃんに変な事を吹き込むんじゃない!! お仕置きだ、ここに座って尻を出せ!!」


 などと妄想しつつ、初めて入る女子更衣室の臭いに俺は顔をしかめる。


「臭い……」


「!」


 おしっこ臭い。


「ミサが我慢できなかった」


「ちょ!? 葵ぃいいい!!」


 だから、声でかいよ。

俺は水たまりを避け、腰を下ろす。


「朝から……ずっと我慢してたんだから、しょうがないじゃない……」


(俺もここまでか……)


 このまま圧迫止血を続けても、たいして時間は稼げない。

じわじわと手は赤色に染まる。 ポタリと床に血が落ちる。

 俺の体格を考慮しても二リットルの血液を失えばアウトだろう。


「うぅ……もう、お嫁にいけないわ……」


「ミサうける。 オーガ聞いてないし」


(最後にガチャでもしよう……)


 一発逆転。

 超レアアイテムの出現で危機回避!!

 なんて、奇跡が起こったらいいのだけど。


(ガチャがしたいです……)


++++++++++++++++++++++++++++++++++

 ガチャ(レベル1)

★ノーマルガチャ

★リミテッドガチャ(ガチャレベル3解放)

★スキルガチャ(ガチャレベル5解放)


※ノーマルガチャ 一回 10魂魄

 リミテッドガチャ 一回 30魂魄

 スキルガチャ 一回 100魂魄

 一日一回、ノーマルガチャ無料

++++++++++++++++++++++++++++++++++


 フォン。 と現れたウィンドウ。

 ガチャを回すためには10魂魄が必要。

 魚頭をそれなりに倒したし、結構たまってるんじゃないか?


「ぉ?」


 魂魄がどのくらいあるのか確認したい。

そう念じると、別のウィンドウに切り替わった。


++++++++++++++++++

 メニュー


 鬼頭 神駆


★魂魄

 魂魄ランク:ノーマル

 保有魂魄:20ポイント

★スキル

 スキル購入

 スキル:【】

 固有スキル:【ガチャLv.1】

★魔法

 魔法購入

 魔法:【】

★マップ

『千棘のマーマンロード支配地域』

★称号 

【*****の発見者】


+++++++++++++++++


 どこのゲームですか?

そう問い詰めたくなるようなメニューウィンドウ。


(ガチャはスキルなのか……)


 それより気になったのがスキル購入と魔法購入だ。

 もう何を言っているのか分からないが、とにかくこの状況を打破できそうなのはそれしかない。


「ぐふっ……」


「だ、大丈夫!?」


「オーガ……死んじゃうの?」


 誰がオーガか。

 こんな金髪イケメンのオーガいるかね!?

顔は怖いがイケメンなんだぜ! 怖いの方が圧勝しちゃうけども……。


(おお!?)


 スキル購入をタップすると大量のスキル一覧が表示された。

 回復系。

今俺に必要なのは回復系スキルだ!!


・手当Lv.1

・自然治癒力強化Lv.1

・体力回復強化Lv.1

・内気功Lv.1

・超回復Lv.1

・エナジードレインLv.1

・自己再生Lv.1

・暴食Lv.1

・不死Lv.1

・房中術Lv.1


 回復系でソートしたらこんなに出てきた。

不死は回復系なのだろうか? 房中術……気になるけど、今はいらない。

 タップすると購入に必要な魂魄が出てくる。


・手当Lv.1 必要魂魄 10ポイント

・自然治癒力強化Lv.1 必要魂魄 20ポイント


 今買えそうなのはこれだけ。

 不死なんて一億ポイント必要だし。 買わせる気がないな、たぶん。

 

 魔法一覧も確認するが、回復系でソートしても魔法が出てこない。


「……?」


 回復魔法が無い?

もしくは、俺には覚えられない?

 魔法一覧で見てもスキル一覧より数は少ない。 

それに購入に必要な魂魄も明らかに高い。



>>自然治癒力強化Lv.1を20魂魄で購入しました。


「ふぅ……」


 自然治癒強化を購入。

 手当ってあんまり効かなそうだし。 自然治癒系もゲームじゃ地雷の確率が高いが、他に買えるモノもない。 

 

 え? ガチャが二回引けるだろうって??


 あんなシマシマパンティーが出てくるようなガチャに頼れるかよ!


 俺は脇を押さえ瞼を閉じた。

 体の中からポカポカと温まってくるような。 今までにない感覚を感じながら、瞼を閉じて傷が治るのを祈りながら、静かに待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る