短編ショートショート
サファイア
第1回 「いらない師」
ぼくは悩んでいた。
引っ越しをしようとして、物の整理を始めた途端、収拾がつかなくなった。
昔のもの、サイズの合わないもの、興味がなくなったもの。
普通に考えればいらないが、思い出があるので捨てられない。
現実逃避するように買出しに出かけ、駅に入った。
そこには、全身真っ白な女性がいた。
アルビノで全身真っ白な人がいるというのを聞いたことがある気がする。
あまりじろじろ見るのはまずいなと思い、目をそらした。
次の瞬間、その人はいなかった。
そこで、占い師のような姿をした人を見かけた。
もうやけくそになっていたので、つい声をかけてしまった。
「あの…占い師さんですか?」
おばさんは怖い顔をしてこっちを見た。
「占い師じゃない。いらない師!」
「へ?」
失礼だとわかっていながら、つい間抜けな声を出してしまった。
「いるもの要らないもの、整理をやる仕事さ。その私に何かようかい?」
僕は喜んで事情を説明し、家に来てもらうことになった。
「これは要る、これもいる。これも要るあれも要る…」
いらない師に任せて僕は今で休んでいると、40分ほどで出てきた。
「はい、整理できたよ。」
「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
僕は深々と頭を下げた。
いらない師が帰った後、部屋に戻って見た。
しかし…そこにあったのはあらされた部屋だった。
まるで泥棒が入ったみたいに。
僕は全てを理解した。
そしてそれは遅すぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます