18. 絶対に好きにならないもん!
「じゃあ
「え゛ぇえ゛!?」
めちゃくちゃ寂しそうな顔を浮かべている。
「琴乃、それはちょっと――」
あまりにもむごすぎる。
好きだの、好きじゃないだの、実に女子高生らしい会話が続いていて、中々
好きな人にそんなこと言われたら、誰だってショックだよそんなの!
同性愛とは言え、
「ほら、
「あなたの手伝いに来たわけじゃないわ」
今、お前のフォローしてやってるんだから茶々を入れてくるな!!
「
「そ、それは……」
お前のことが好きだからだよ。言わせんな。
同性の恋愛って難しいよなぁ……。
「ま、まぁ。今、お茶とお菓子でも出すから二人ともちょっと休んでてよ」
そう言って、俺は二人が綺麗にしてくれた台所に向かった。
※※※
「二人ともお茶でいい?」
「うんっ!」
俺の部屋から
「お茶っ葉、お茶っ葉は……」
「わざわざ、お茶っ葉で入れなくていいわよ。そこにあるティーパックでいいから」
テキパキとコップとお菓子を用意をしていく。
一応、ここ俺んちなんだけどね……。
そういう遠慮のなさが誰かに似ているような気がする。
そうだ! うちのオフクロだ! そういうことを人の家でずけずけとできるのはうちのオフクロとかオバハンのやることだ!
「今、失礼なこと考えていたでしょ」
「ぐっ」
若いのに鋭い! 思っていたことをズバリ見抜かれてしまった。
「ところで、あなたにはお礼を言わなきゃっと思ってたの」
「お礼?」
「
「琴乃のためにありがとうね。その包帯いつ取れそうなの?」
「い、いや当然のことしただけだし……。ゴールディンウィーク明けには取れると思うよ」
「そう。良かった」
この前のドタバタとはうって変わり、今日のこの子からはすごく大人びた印象を受ける。
「お礼を言っとくけど、
なんなんだ今日の
「大丈夫だよ。前にも言ったけど、俺にとって
「ふーん。男って簡単にそういうこと言えるからなぁ」
高校一年生の女子が随分ませたことを言ってらっしゃる。
「っていうかさ、ちょっと気になってたんだけど何であの日あそこにいたのさ?」
話題を変えてみる。少しだけ気になっていたことを率直に
「あそこ?」
「ほら、ホテルの前で――」
「あ、あれは! ただ思い出巡りをしてただけっていうか!」
「思い出巡り? ホテルの前で?」
「うぅーーー!!」
や、やっぱりヤバいやつじゃないかコイツ!
同性愛者の
あまり良くない想像が色々と膨らんでしまう!
「
「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ!」
心配になり、そう声をかけると
「じーーーーーーーーー」
う、後ろから熱い視線を感じる……。
※※※
「なんで
「してないしてない!」
「私が
「違う! 本当に違うの!」
そうなんだよ、違うんだよ
俺は、自分のことを好きになってくれた人にはなるべく誠実に答えてあげるべきだと思っている。
ならば……。
ならば俺ができることは……。
「
「だ、だって……」
「
「うっ」
「ごめんね
「さっきも言ったけど大丈夫だから。
何か余計な一言があった気がするが聞かなかったことにしよう。
「本当に本当?」
「だから本当だってば。だって私には好きな人がいるもの」
!!??
で、でたな! 匂わせ発言! 聞いているこっちがハラハラしてきてしまう!
「それ
「大丈夫、
「約束だからね。嘘ついたら針千本だからね」
「うん。針千本でも針万本でもそのときは飲むから」
とりあえず今の会話で二人とも納得したようだ。
ふぅ。場が収まって今日はめでたしめでたし。
「じゃあ、私は帰るから
「うん」
ど、同級生に言う言葉かそれは? 過保護というかなんというか。
形は違えど、
「ごめんな。つらい思いさせて」
俺は思わず
「えっ? 気づかってくれてるの?」
「一応」
「ふふっ。そういうところは私が好きだった人に少し似ているかも」
好きだった? 何のことだか分からないが随分変な言い方するなぁ……。
「
「知ってる」
俺がそう言うと、
※※※
「
二人きりになった室内で俺は
「そんなことないよ? 仲は良いんだけど……」
「良いんだけど?」
「何かね。私がやることなすことに色々言ってくるから、ちょっと困っちゃうときがあるんだ。まるでお母さんみたい」
はぁああああ!?
あいつがお母さん? あの女の子大好きっ子がお前の母親っぽい!?
お前の母親はな! もっと可愛くて、賢くて、可愛くて、美人で、おしとやかで、可愛かったんだぞ!
それをあんな変人と一緒にするなんて、お前の目は節穴か!
「そ、それは大変だね」
そうは思っても娘の友達の悪口なんて言えないので、俺はそんなありきたりなことを言うことしかできなかった……。
なんだか色々ドタバタしてしまったが、こうして高校一年になった
「ねぇねぇ、ところで
「ん?」
「お土産でお布団持って帰っていい?」
「ダメに決まってるだろ!!!」
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