第4話 那津との出会い➁
年の離れた姉の面差しによく似ている。
僕のせいで死んでしまった姉さん。敦人は胸をつかれた。そんなことも知らず那津は無邪気な笑みを浮かべた。
「先生、今度、私が作った野菜持って行きますよ。」
少し元気を取り戻した那津は玄関まで見送りに出てきた。
「僕は料理ができないので無理しないでください。それより何か必要なものありますか?僕、持ってきますよ。そうだ!」
敦人はかばんに手を突っ込むとスマホを取り出した。
「ラインしませんか?僕は身元が知られているんです。悪いことはできませんから。なにか困ったことがあったらいつでも連絡してください。」
ちょっと困ったような顔をしていたが那津はスマホを出し、敦人とラインでつながった。ニッコリと笑った敦人はペコリと頭を下げ、那津の家をあとにした。
叔父の家の離れに住んでいる敦人は帰りにコンビニに寄った。夕食を買い、車に乗り込もうとしてスマホが鳴った。見ると早速、那津からのメッセージ。
「先程はありがとうございました。先生の差し入れのおかげで夕食を済ませることができました。先生の夕食を取ってしまってごめんなさい。先生は夕食、どうされるんですか?」
那津が気にしている様子が思い浮かんだ。
「大丈夫ですよ。コンビニで前から気になっていたカップ麺を買いました。それより体調はどうですか?」
「もうすっかり元気です。」
那津はメッセージの最後に猫がガッツポーズを取るスタンプをのせてきた。
こんなかわいいスタンプ使うんだ。那津さんに明日、またメッセージしよう。
敦人はちょっと微笑ましい気持ちになった。
次の日の昼休み、いつもなら子供達とサッカーをするのだが今日は雨。敦人は用事を片付けながら那津に一言メッセージを送った。
「体調はどうですか?」
すぐ返事が返ってきた。
「昨日はありがとうございました。今日は雨なので畑はお休みです。今朝、畑仕事を教わっている方の奥さんから鯉を頂きました。鯉こくを作ろうと思っています。先生、良かったら持って帰ってください。」
鯉こく?敦人は首をひねった。
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