第2話 再会➁

 終業式を終えると同僚教師の誘いを丁重にお断りして、急いで車に乗り込んだ。エンジンをかけるのももどかしく敦人は釧路空港に向かった。はやる心をおさえて飛行機の座席に座る。釧路空港から羽田空港まで2時間弱。敦人はスマホを取り出した。


那津は人妻。それ故どれだけ愛していても那津の写真を待ち受けにはできない。薄幸な那津は不幸せな結婚をしていた。どこか哀しげな笑みを浮かべた那津。細面に大きな瞳。儚げな面差し。華奢で色白。初めて会った時、敦人は竹久夢二の絵から抜け出てきたのかと驚いた。那津を画面に表示させた敦人は思わずスマホの那津に触れていた。


あの日、羽田空港の第一ターミナルの2階、出発ロビーの北ウイング、JALのカウンター前の時計台で敦人は那津と待ち合わせをした。ぎりぎりまで待っていたが那津は来なかった。さらに那津からは何のメッセージも来なかった。

那津さん。僕ではダメなんですね。

力を落とした敦人は足取り重く一人、ゲートをくぐった。


 あの頃、那津との未来を夢見て、敦人はせっかく慣れた千葉での教員をやめ、北海道の教員を受け直した。見知らぬ土地でも愛する人と二人なら楽しく暮らしていけるだろう。農作業で忙しい那津は旅行なんてしていないだろうから北海道に行ったら、いろいろなところへ一緒に行こう。自分の給料では贅沢はできないだろうが少しは北の幸を那津に楽しませることができるだろう。裁判になっても那津の離婚をバックアップし、できるだけ早く正式な夫婦になろう。敦人は那津の喜ぶ顔を想像して胸を熱くしていた。


 そして今、羽田空港に着いた敦人は品川を経由して千葉に向かう。千葉駅近くのビジネスホテルに宿を取り、敦人はコンビニで買った弁当とビールで夕食を済ませた。シャワーを浴び、ベッドにゴロリと横になった。狭いビジネスホテルの天井を見上げ、敦人は那津と初めてあった日のことを思い出した。

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