056 調教の結果
そして、オレは知っています。伯父も、頑張っていたことを。貴斗の指示を、何一つ破らず、忠実に、執行していたことを。彼に壊され、過去に引きずり込まれ、退行してなお、「優貴を抱かなかった」こと。
オレが挑むのは、そういう二人です。
ねえ、ナオさん、重いですよね? 二人とも、重いですよね? オレ、そのこと知った途端、ぞくぞくしちゃって。そんな二人の間に割って入ったんですよ? ねえ、もう、これから先は、オレだって無事で済まないってこと、わかったんですよ。そしたら、愉しくて、震えが止まらなくて。
何度も何度も言われていますしね? 容赦はしないと。決して息子には背中を見せない。彼はそう言ったんです。
あの男は、オレに父殺しの覚悟をさせたとき、同時に子殺しの覚悟もしていたんです。
オレが伯父に本気になったのと同じくらい、父はオレを本気で殺しにくるつもりなんですよ。本気になってくれるって、嬉しいですよね?
敵が強ければ強いほど、ぞくぞくして、たまらないんです。挑みたくなったんです。そうなるよう名付けたのは父だから、思惑通りだし、遠慮なんて要りません。
さらに、父に似ているからという理由で、オレは自分の容姿を嫌っていますが。美形だということは、自覚しています。ほら、名は体を表すって言いますし。まあ、人間、必ずしもそうなるとは限りませんがね? 父の呪詛はとても強いから、見事に彼の期待に応える形になってしまったんです。
そして、ナオさんは……いえ、ここであなたの本名まで明かしてしまってはいけませんでした。明るく可憐で美しい響きなのに、なぜかちょっと、えっちな発想をさせてしまうお名前ですよね? そんな発想をするようなのは、僕やあなた、そして伯父のようなエロガキくらいだとは思いますがね?
失礼しました、ごめんなさい、嫌わないで? ちょっと、憧れを持ってしまっただけなんです。淡い恋心のようなものです。弄んで頂くのも、嘲るのも、あなたの好きになさってください。いずれ悦びに変わります。
父も美形ですが、若さはもう失いました。年季と若さは、両立できませんよね? 彼にはまず、生きることそれ自体がそろそろ難しくなってくるはずです。それは伯父も同じ事。最初から、そんなに長期戦を見越してはいないでしょう? ほら、夏休みはまだまだあったのに。
そして、それを思うとき。貴斗にとって、勝也は義兄弟であり、やはり伴侶なのでしょう。彼らは同い年なのですから。息子に伴侶を奪われるのは、最大の屈辱ですから。やってやりたくなるんですよ。いつか伯父に、父を捨てさせてみたいんです。お前、もういいよ。優貴が要るから、もう要らない。そう伯父に言ってみせたいんです。
老いた父を、普通は虐めません。僕はそうではないと、あの色目を使って教えてくれたときに、涙が溢れそうになりました。
ごめんなさい、ちょっと、長かったですよね? 興奮すると、止まらなくて。
まだまだ話は尽きないのですが。
監禁調教の後日談としては、一旦キリが良いので、この辺にしておきます。
***
さて、最後に、オレはナオさんに、感謝の言葉を贈ります。
大学生になってから、オレは伯父から、ナオさんのことを聞き出すのに成功しました。「悪い子」が誰なのか、ずっと気になっていたんです。
それで、伯父に、色々教えてもらったんです、あなたのこと。うちの伯父は甥に優しくて、昔話もよくしてくれるんです。
「あのとき、俺がナオとあんなことしてなかったら、ああいう冗談も出なかったし、貴斗も本気にならなかったよ。ああ、貴斗はナオのこと、知ってたからさ。全ての元凶は、あいつだよ。良かったな、お前、調教されて幸せなんだろう? 性癖を曲げられて、精神ズタボロにされて、それでもお前、俺のこと好きなんだろ? ナオにもきちんと、感謝しろよ?」
伯父に、そう言われたんです。
オレは伯父の言うことは素直に聞く甥ですから。
ナオさん、ありがとうございます。
あなたのことが大好きなんです。
会う前から好きになっちゃったんです。
こんな気持ち初めてで、ラブレターを書き始めたら、長くなって、こんなことになりました。
そして、またオレは、もしあのとき、最初の約束をしっかり守れていたら、どうするつもりだったのか、聞いたことがありました。
「ああ……聞きたい? もし、お前が、最初の約束、ちゃーんと守って、自分で目を瞑って、しっかり黙ってたらな。拘束して、脱がせて、舌はわせて、痕つけまくって、やらしー姿になったら、寝室の姿見まで連れていく予定だったんだ。ほら、見せたいものはこれだよって。鳴くなとは言ってないぞ、って途中で囁いたらさ……それも我慢してたみたいで……マジで可愛かった。それで、見せてやったら、うっとりしながら、最高のプレゼントだね、勝也くんありがとうって返してきやがったから、こいつマジでエロガキだわ、って思ったよ……」
ナオさん。伯父は上下関係には厳しい人ですよね? 後輩には必ず、勝也先輩、と呼ばせていたはず。いくらナオさん相手でも、普段はそれだけは徹底させていた。絶対に、そうですよね?
ええ、もちろん、お酒はたっぷりと飲ませました。ずるいことって、楽しいじゃないですか。
そして、また別の日ですが、伯父がこういう表現をしていたことも、ありましたっけ。
「道具はぜーんぶあいつが持ってきたんだけどな。俺、あの時初めて色々使い方を教わったのよ、あいつに。ナオの奴、蒐集家でもあるから、今のあいつの家行ったら、絶対お前もびっくりするぞ。まあ、絶対連れていかねぇけどさ。つまりさ、俺はナオに、調教の調教、されたんだよ」
ねえナオさん。オレ、今、調教されて、とっても幸せなんですよ。
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