赫濁（カクダク）

プロローグ

001 姉弟の手紙

姉さんへ

　この前、電話で言ってたラブレターを送ります。

「このテキストは、暴力的、性的、非倫理的な表現を多分に含みます」

　っていうのは強調しとくけど、まあ、姉さん、もちろんそういうの好きだもんね。

　人のいるところでケタケタ笑いながら読んでるとやばいよって意味。

　内容は、まあ、オレら、父さんと母さんの子だから。察して。

　けっこう長いんでしょ。いい暇潰しになると思うよ。

　順番は絶対に、飛ばさずに読んでね？　それだけは、約束してほしい。

　あと、全部読んでもらったあとさ、ちょっとした相談に乗って欲しいんだ。

　できれば、姉さんの意見も聞きたくて。

　よければまた、電話してねー！

愛をこめて、あなたの弟・健より

***

健へ

　こうして、お前に手紙を書くのは初めてだな。

　めんどくせーからいきなり言うけど、オレと勝負しない？

　これから、 ラブレターを送る。

　でも、最初はお前あてのじゃない。

　それが読めたら、次のやつを送る。

　どういうことかは、読めばわかる。

　順番に、全部読め。順番は、絶対に飛ばすなっていう意味だ。

　そして、最後のラブレターまでたどりつけたら、それができたら、お前の勝ち。

　あと、一通目の中にも書いてるけど……。

「このテキストは、暴力的、性的、非倫理的な表現を多分に含みます」

　ってやつだから、この時点で悪い予感がしたら、そもそも読まなくても別にいいよ。

　もしも全部読んだ上で、それでも良いってお前が言うんなら、こっちも友人付き合いについては真剣に考えてやる。

　あと、途中でしんどくなったら、「ラブレターギブアップ」って言って。

　次のラブレターはもう読みたくない、っていうときにも、その言葉を使え。

　まあ、終了条件の一つだ。わかるよな？

　長いぞー。せいぜい頑張れよ。頑張らなくてもいいけど。

　勝負自体、やりたくないんなら、そう言って。

　お前とは二度と会わないようにするから。