【石のやっさん旧作短編】異世界で僕が学んだ事。

石のやっさん

第1話 彼女を救う為に

いつも僕は虐められている。


暴力を振るわれたり、水を掛けられるのは日常茶飯事。


物やお金も良く無くなるし..見つかったとしても壊されている。


原因は、僕の片足が不自由だった事が原因だ。


世の中は凄く理不尽だと思う、僕は片足が不自由で親も片親しかいない。


貧乏とまでは言えないけど、働いて僕を養ってくれる母さんには、虐めの相談なんかして心配は掛けられない。


だから我慢するしかない。


僕だけが我慢すれば良い。


殴られても良い、悪口だって我慢する..物だけは勘弁して欲しい。


只でさえお金が無いんだ、母さんに「買って」というのは本当に辛い。




だが、、そんな僕にも一つだけついている事がある。


それは僕にも味方がいる事だ。


クラス委員の本条美香さん。


正義感の強い彼女は虐めにあっている僕を助けてくれていた。



だが、その結果が、本当の意味での地獄を招いていた。


僕はボコられた状態で、手錠を掛けられて床に転がっている。



そして、本条さんには黒田が覆い被さっている。


本条さんは手足を3人掛かりで押さえられて身動きできない。


「こんな奴庇うからこんな事になるんだよ..クラスの女もお前の事嫌いだからだれも助けにこねーよ」


「いや、いや、やめて、お願いだから..いやー」


「やだね! 俺がお前にこんなクズ庇うの辞めろって言っても、正義面して辞めなかったろう? 同じだ」


黒田は本条さんのブラウスに手を掛け破った。


「いやあああああああっ」



絶望しかなかった、この後、彼女は犯される、そして僕はそれを見続けなくてはならない。





だが、この時、時間が止まった。


本当に時間が止まるのを初めて経験した。


もしかして、打ち所が悪くて、僕は死んでしまうのだろうか?



「違いますよ、間守(はざま まもる)さん!」


何が起きたのか僕には解らない..本当に何が起きたんだ



「私が時間を止めました」



「貴方が?」


「はい、私の名前はノートリア、異世界では女神と呼ばれています」


「女神様! お願いです、本条さんを助けて下さい、僕はどうなっても構いません!」


「それは出来ません!」


「何故ですか? 女神様なんでしょう...お願いします、お願いしますから..」


「心優しき少年、だがその世界は私の世界ではありません、だから手は出せません」


「そんな、それじゃ...」


「安心しなさい少年...貴方の心に打たれて私が来ました」


「だけど、助けてはくれないんですよね!」


「はい、だけど、少年、異世界の転移に欠員がありました」


「何を言っているんですか! 異世界に行けば僕は助かるかもしれないけど本条さんは..そうだ、本条さんを異世界に連れて行って下さい..彼女は正義感が強いですから、勇者にだってなれます」


「無理です、欲しているのは男の1名です」


「そんな、それじゃ本条さんは」


「大丈夫です、貴方を異世界に転移して最長で10年で此処に戻してあげましょう..この時間に」


「本当でしょうか?」


「はい、その際には、その手錠を外して戻しましょう」


「それじゃ」


「10年待たずしても死んでしまったら、そこで終わり、この場所、この時間に戻します。 異世界は過酷です、魔物もいますし魔王もいる」


「そんな世界なのですか、特典や能力は?」


「残念ながらあげれません..勇者では無いのですから..ですがそんな過酷な世界で頑張れば強くなれると思いませんか? 冒険者や騎士にも頑張ればなれますよ? 如何ですか? 更に一つだけ加護の無い物を持ち帰らせてあげましょう..」



冒険者なら、この状況を打破できるかも知れない。


「解りました、お願いします」


「それでは、翻訳の加護だけは与えます..他には何も与えられませんが強く生きるのです」


「チャンスくれて有難うございます..女神様」


「貴方の人生に幸のあらん事を..」





【女神サイド】


強い勇者を作る為には複数のスキルを与えなければいけません。

今回は1人の勇者に2つのスキルを与えた為、「スキル無し」が必要でした。

他の女神は良く失敗しますが..困っている人間や死に掛けの人間に声を掛ければ良いのです..

そういう人間なら、藁を掴むつもりで受け入れてくれます。

「加護やスキルなんて要らない」そんな者も居るのです。


本来は神は救う者..だれかの欲望を満たす者ではありません..

「加護なし」でも救われる者が居る..その事を他の女神も考えるべきです。






「此処は何処だ?」



ポケットの中に手紙が入っていた。


(そこはルーテイシア、私の治める世界です、安全な街、メルトに転移させました)


僕が読むと手紙は崩れ落ちた。


僕の着ている服は、ゲームで言うと只の旅人の服みたいだ、しかもボロボロ。


他にはお金も、武器も何も持っていなかった。


(どうすんだ、これ、勝手にナイフや最低限のお金位持っていると思っていたけど本当に「何も無い」)





「お前は誰だ?」


僕より少し年上の少年が声を掛けて来た。



「俺は、マモル..途方にくれている」



「俺はトムだ、お前行く所も金もないだろう? 行く所が無いなら来い」



他に行くあてが無いからついて行くしかない。


トムの後について行くとドンドン汚い場所に変わっていった。


スラムだな...


その中でも一番汚い場所に小屋があり..そこには子供が2人程いた。


「トム? そいつ誰だ」


「新入りだ、マモルと言うらしい」



「そうか?俺の名前はオルトだ宜しくな?」


「私の名前はミーシャ、宜しくね!」



「宜しくお願いします」


全員が汚い、多分風呂に何日も入っていないんだろうな..



「マモル、お前随分と言葉が丁寧だが貴族の息子だったりするのか?」


どう説明しようか?


「昔は貴族では無いが裕福だった..だけど親父が死んでお袋が1人で育ててくれていたが、すぐに貧窮してな..それでこの足だ..迷惑も掛けれないから飛び出した」


「だから言葉が丁寧なのか..まぁ良いや、1人なのは変わらないからな、それでどうするんだ?」


本条さんの事が頭によぎる。


「強くなりたいんだ..だから冒険者になりたい」


「冒険者? 無理だな..保証人もお金もない孤児がなりたいなら、冒険者の下働きからしか無いが、競争率がたけーぞ」


「そうなのか?」


「ああっ体はきついが、住む所に困らない..飯にもありつける、スキルとかマモルはあるか?」


「無いよ」


「それじゃ、無理だ...マモルは強くなれれば良いのか?」


「うん」


「それなら、盗賊ギルドに入れば良い」


「盗賊ギルド?」


「俺たち、みたいな孤児はそこしか入れる所は無い..お金は要らないし、メンバーの推薦があればすぐに入れる」


「だけど、僕は仲間がいないから推薦は貰えない」


「居るだろうが? 俺にメルトにミーシャだ」


「良いのか?」


「良いよな!」


「俺は構わないぞ」


「ミーシャも良いよ」


「だそうだが?」


「それじゃ、お願いします!」



「ああ、宜しくな新入り、明日は登録に一緒にいこう」


「ありがとうございます」


「なぁ、マモル、それじゃ舐められるから、僕は辞めて俺にしろ、言葉も乱雑にしろいいな?」


「ああっ解ったよトム」


「それで良い..それじゃもう寝るぞ」


「トム、飯は?」


「お前、本当に良い所の出なんだな..普通は朝と夕方に食べておしまいだろう!」



「そうか、済まないな」


「まぁ良いさ、初めてなんだろうからさ...だが此処には何も無いから我慢して寝ちまえ」


「ああ、そうする」


「俺はボスだから真ん中で寝る、マモルはオルトかミーシャの好きな方にしがみ付いて寝るんだ」


確かにトムを挟んで川の字で寝ている。


毛布も無いから、こうして寒さ対策をしているのだろう。


男に抱き着くのは嫌なのでミーシャに抱き着いた。


「にひひっ、やっぱり女の子の方が良いよね..私はこれで背中が寒く無いから嬉しいし」


「女は得だな、俺は寒いままだ」


「マモル、遠慮しないで思いっきり抱きしめて良いんだ..変な事は駄目だが胸にしがみついたり、体を密着しても良いんだ..まぁあっちの方の処理は隠れてしろ」


「流石に女の子にそれは」


「やっぱり、マモルは良い所の出なんだな? 孤児はそうやって寄り添う者なんだ、そうしないと風邪ひくぞ」


「そうだよ? 私が可愛いからって遠慮されたら背中が寒いから、抱きしめて良いよ? あそこが押し付けられる位は仕方ないで済ますからね」


遠慮したらいけない、そういう気がしたので俺はミーシャにしがみ付いた。


初めて抱きしめた女の子の匂いは..浮浪者よりも臭かった..

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