8.5章 重慶攻撃作戦
基地が攻撃を受ければ当然、反撃をしろという声が大きくなる。空襲直後には、早くも重慶の敵航空基地への攻撃が計画された。しかし今まで実施した3回の攻撃では、航空機が全て飛び立って逃げた後のガラガラになってしまった基地を爆撃しただけだった。空戦も発生せず、空き地を爆撃するだけで実質的な戦果がなかった。敵基地攻撃への予定が決まった夜、本土から訪れていた永野大尉が、進藤大尉を訪れていた。
「お邪魔します。敵基地攻撃について、少しご相談があるのです。日本本土で私の友人と相談して、もう少し効果のある基地攻撃法について考えてきました」
進藤大尉は振り返ると、持ち前の大声で話しだす。
「実は我々も何か工夫をしないと、次の攻撃も空振りになるのではないかと考えていたのだ。いい考えがあるならば、ぜひ聞かせてもらいたい」
永野大尉は、ポケットから持参したメモ書きを取り出して、空技廠で、鈴木大尉から託された作戦について説明を始めた。やがて二人は隊長室に入っていった。関係者の作戦会議は夜が更けるまで続けられた。
数日後、重慶方面の基地攻撃が開始された。まだ薄暗い夜明けに九六式陸攻12機が爆撃隊として離陸すると、かき集められた零戦15機が護衛として続いた。零戦隊は横山隊長が率いる中隊8機と進藤大尉が率いる7機に分かれていた。坂井二空曹も進藤隊の第2小隊2番機として参加していた。この小隊は3番機がいない。先の迎撃戦で被弾して後方送りになったためだ。
爆撃隊は、6機の編隊に分離して、重慶市周辺の2ヶ所の敵航空基地を爆撃した。進藤隊が護衛する編隊は北側の基地を爆撃したが、地上を見たところ飛行場に敵機の機影はない。もちろん上空での敵戦闘機の反撃もない。爆弾が一斉に爆発するのは威勢がいいが、飛行場の格納庫と周辺の整備施設が破壊されたのみだ。滑走路にも爆弾は落ちたが、滑走路周辺も平地になっていて離着陸ができそうなところは、周りにいっぱいあるので効果は小さいように見える。
爆撃が終わると編隊は漢口方面に向けて帰投してゆく。重慶基地が見えなくなったところで、零戦の編隊はゆっくりと大回りの旋回を始める。爆撃機も帰投時の戦闘機隊の誘導のために2機が残る。1時間ほどして、零戦隊は先程攻撃した基地の方向に引き返してゆく。この時点では空戦が発生していないので、まだ全機増槽をつけたままだ。
敵基地上空に近づいてゆくと、坂井二飛曹は進行方向に対して10時の方向の同高度にシミのようなものを見つける。同時に、横山隊長の2番機がバンクを振っている。坂井二飛曹もバンクで知らせることにする。
『ジュウジ……クロタスウ……ジュウジ……クロタスウ』
横山隊長からの無線が聞こえる。進藤中隊長機が増槽を落とす。中隊の全機がそれを見て同じ動作を行う。
横山隊長機から無線で続けて指示が出る。
『シンドウタイ……ヒダリ……シンドウタイ……ヒダリ』
横山編隊は敵編隊が前方のやや右側に見えるように旋回してから上昇してゆく。進藤中隊長はそれとは離れて、敵編隊を左方向に見つつスロットルを全開にして、どんどん上昇してゆく。左側から攻撃せよとの隊長の命令に従っているのだ。
接近するにつれて、左下方の敵の機影がはっきりしてくる。ざっと数えたところ、20機以上はいるだろうか。高度が取れたところで、敵編隊に向けて、緩やかに旋回しつつ降下を始める。小隊長機が短く機銃の試射をしているのがわかる。数発の曳光弾がかすかに見える。敵機は寸詰まりのI-16だと判明する。彼我の位置関係から、坂井の小隊は敵編隊の左翼側を降下攻撃することになった。
もしこの空域の上空から眺めるならば、進行方向のやや左前方に敵機を発見した零戦隊は、8機編隊と7機編隊に分離して、8機編隊が敵編隊の右翼側に回り込み、斜め後方から接近した。7機編隊は左翼から回り込んで斜め上方から接近するように見えただろう。2隊に分離して、左右から敵編隊を挟撃したことになる。
進藤中隊が急角度で敵編隊上空に回り込んだために、坂井が所属する小隊は、左翼の敵機に向かってかなり深い角度での急降下攻撃となった。機速がどんどん増加して、既に300ノットをはるかに超えて、330ノット(611km/h)あたりから350ノット(648km/h)に近づきつつある。
敵編隊の中で、日本機の攻撃に気がついた機体があるようだ。坂井の目標とした機も右翼を持ち上げて、ロールから旋回急降下に移ってゆく。しかし、もう逃げても遅い。高度が優位で、速度も速い機体からの攻撃を避ける有効な手段はほとんどない。このI-16も旋回して左方向に急降下に入ったが、十分な降下速度に達する前に、高速で急降下してくる坂井機が射程にとらえた。
坂井は、敵機に合わせて、左にロールしながら高速旋回のGに耐えて降下に入ると、敵機がすーっと左から中央に移動して近づいてくる。照準環からI-16の短い主翼が急激にはみ出してくる。ほとんど無修正で短い射撃をすると、無駄弾もなく機銃弾が全部命中した。
I-16の胴体に機銃弾が命中すると、あっという間に火が出る。そのまま敵機の右を抜けて、敵編隊の下方に抜けると、坂井は小隊長機の機動に合わせて機体を思い切り引き上げて水平飛行に移る。自分を狙う敵機はいないか、素早く周囲を確認する。視界の範囲だけでも上空からの攻撃で、数カ所で敵の戦闘機が火や煙を吹いて落ちてゆく。
上空からの降下攻撃で、既に敵の大編隊はズタズタの状態だ。I-16の方が数が多いので、一撃目では無傷の機体も多数いるが、統制が取れず各機ばらばらに日本機からの回避をしている。急降下で逃げようとする機もあれば、急旋回して零戦に向かってくる機もある。
降下時の余力から高速の330ノット(611km/h)を超える速度で飛行していると、坂井は左翼側に2機の敵機が上空から降下してくるのを発見した。小隊長もそれを見つけたのだろう、軽くバンクして知らせてくる。左旋回して、軽く突き上げながら敵機の方向に向かってゆく。
降下してくる敵機の斜め下方から腹を見る姿勢となる。小隊長機がそのまま敵の1番機に向けて射撃をする。ほぼ同時に坂井は2番機に1連射をする。恐らく敵機は機銃弾が命中するまで、打たれたことに気がつかなかったに違いない。なんの回避操作もしないまま2機ともがほぼ同時に、機銃弾を下腹に浴びて胴体から火が吹き出る。そのまま降下から錐揉みに変わって、くるくると落ちていった。
その時、横山隊長機から無線が入る。
『テキヘンタイ……コウホウニ……クロ……コウホウニ……サラニ……クロタスウ』
後方に更に十数機程度の編隊が見える。横山中隊の機体は既に戦闘に入っているのだろう。被弾した敵機から吹き出した煙が遠くに見える。小隊長機が新たな敵編隊に向けて、全速で飛んでいく。こんな時、九六式戦では時間がかかるが、零戦は直ぐに駆けつけることができた。上昇したために先程より速度は落ちてきたが、それでも300ノット(555km/h)は出ている。敵編隊に近づくと、既に戦闘が始まっているのがわかる。
敵機はなんと複葉のI-153だった。坂井機は、直線的に近づくのではなく、緩く上昇しながら戦闘が発生している空域の上空に向かって飛んだ。恐らく新参のパイロットなのだろう。戦場で中途半端な速度で緩く旋回している複葉機は、戦場では無事ではいられない。次々と後方につけた零戦から射撃を受けて落とされていく。
その中でI-153の旋回性能を生かして零戦の射撃を急旋回でくるりと回って回避している敵機がいる。零戦が多数いても、一度に後方の射撃位置につけるのは1機のみだ。次々に零戦が狙っても後方の機の射線を急旋回で交わし続ければ、落とされることはない。坂井はその機の戦闘の様子を見ていると、なんとか落としてやろうと闘志が湧いてくるのを感じた。
上空から降りてくると、ベテランのI-153の後方に近づく零戦の更に後方につける。敵機から死角に入る位置になるように気をつけて、零戦の背後につけた。手前の零戦が射撃の間合いまで近づく。I-153はロールして左に機体をすべらせながら小回りに旋回する。目の前の零戦が発砲するが、敵機の旋回の方が早い。零戦の機銃弾が何もない空間を切り裂いていく。坂井二飛曹は左足でフットバーを思い切り踏み込んで、機体を左にすべらせて前方の零戦の背後から滑るように出てきた。前方にはこちらに背を向けて左側に旋回しつつあるI-153がいた。反射的に右のフットバーを踏み込んで横滑りを止めながら、I-153に向けて機銃の引き金を引く。機軸が安定するのを待たずに射撃したので、弾丸は広く分散して飛んでいくが、広がった弾幕に旋回中の敵機が突っ込んできた。防弾装備が弱いのか、すぐにI-153の翼の付け根あたりから発火する。2撃目を射撃することなく、そのまま機首を地上に向けて落ちてゆく。
攻撃されないためには、見張りが重要であることをよく認識している坂井は、頭を振って周囲をよく見まわすがこの時点で見えるのは味方の零戦ばかりのようだ。
零戦の空戦が終わりつつあるとき、別の編隊が基地に近づきつつあった。日本機の中では特徴的な固定脚と前縁フィレット付きの垂直尾翼を有する機体は、九九式艦爆だ。中国大陸に派遣されていた14空の12機の九九式艦爆が基地攻撃に動員されたのだ。
攻撃隊を率いる江草隊長は南北の航空基地に向けて、攻撃隊を6機ごとの2隊に分離した。江草大尉機は北側の基地に向かう。九九式艦爆が基地上空に達した時点で、地上には少数の敵機が駐機していた。偵察機など戦闘に参加しない航空機と退避飛行で燃料が残り少なくなった機体から着陸していたのだ。基地を守るはずの戦闘機隊は零戦に追われて上空にはいない。九九式艦爆隊はいきなり爆撃を行わず、低空に降りてきて、滑走路やその周囲を舐め回すように2週ほど旋回した。飛行場脇の林の中から、低空をなめきったように飛行する1機の九九式艦爆に向けて機関銃が発砲する。一連射を旋回でかわすと、後部銃座が即座に反撃する。機銃発射の発光した地点に向けて、3連射すると林の中から何かが爆発して、黒煙が吹き上がる。恐らく機銃座の弾薬が爆発したのだろう。
江草隊長機が軽くバンクして、指示を発する。
『アツマレ……コウド・トレ……アツマレ……』
九九艦爆隊は一度上空で高度を取ると上空で旋回を始めた。江草隊長から、あらかじめ決めた機番により無線電話で攻撃目標を指示する。
『イチバン……キタハヤシ……ニバン……カッソウロ……サンバン……ヒガシ……ハヤシ……』
しばらくして、各機が順番に急降下して指示された目標に投弾する。ある機が林に向けて投弾すると、25番(250kg)爆弾の爆発直後に、赤黒い炎とそれに続いて黒煙が吹き上がる。明らかに石油類に引火した炎と煙だ。
別の機の爆撃では、もっと小さな炎が吹き上ってその場に隠蔽されていた航空機があったのが判明する。滑走路脇に駐機していた敵機も爆撃を受けて破壊される。一連の爆撃が終わると、再び江草機は低空に舞い降りて、林の中に向けて機銃掃射を始める。他の機も隊長機にならって、機銃掃射を始める。ところどころ林の中で爆発が発生する。樹の下に隠された物資や機体がまだ残っていたのだ。江草大尉は、上空を回って、今回の基地への攻撃成果を確認すると帰投を命令した。もちろん、林の中から射撃を受けた機体以外は友軍機の被害はない。
江草大尉は、基地に帰る機体の中で、最初は半信半疑だったが想定以上にうまく行ったなと感心していた。誰か知らないが内地から来た士官の立案した作戦が知らされのは昨日だった。教えられたのは時間差による敵基地攻撃作戦だった。江草の艦爆隊は敵が基地に帰った頃を見計らって、後半戦で攻撃するように命令された。加えて攻撃前に森の中に偽装した敵のガソリンや敵機を発見してから破壊せよとも命令される。しかも基地の活動を封じるためにはガソリンタンクが優先とのことだ。発見のためには、地面につけられたタイヤの跡を観察して怪しい場所を見つけるのが有効だと教えられた。
実際に基地に到着して、自ら低空に降りてよく見てみると林の中に続いているタイヤの跡が至るところにある。特に深い轍になっているところは、何かの重量物を積載した車両が通過した跡に見える。そこの先には隠された資材があるとの見立てで攻撃してみたが、結構な確率であたりがあったようだ。
……
基地攻撃の翌日、九六式陸攻が偵察のために敵基地上空を飛んで戦果を確認してきた。重慶攻撃の連合軍の司令官であった山口多聞少将と参謀長であった大西瀧治郎少将に一連の戦いの結果について調査分析した結果が報告された。
漢口基地の迎撃戦については、敵爆撃機は14機が飛来したと考えられ、そのうちの7機を撃墜して、4機を撃破したとされている。撃墜戦果は全て新鋭の零戦の戦果であり、撃破は2機が零戦で2機が九六式艦戦の戦果と判定された。戦闘機については、飛来した敵戦闘機は全てI-16と確認され、8機が目撃され、零戦による4機の撃墜が報告された。一方迎撃した零戦と九六式艦戦は、1機も撃墜されておらず、この日の迎撃戦闘は、日本側の一方的な勝利となった。
迎撃戦を成功させたのは電探による早期の敵探知と零戦の性能が大きな要因であったが、無線電話による、戦闘機隊の誘導も効果的であったことがわかっている。迎撃に発進した全ての零戦が会敵できて、しかも基地からまだ距離のある地点で迎撃できた。基地航空隊だけでなく、空母機動部隊も電探を備えれば、同様の迎撃戦が可能であり、電探は大きな効果がある。すぐにでも電探配備を進めることを広く進言しようと大西は誓っていた。なんと言っても、大西は漢口基地にいて実際の戦闘を目の当たりにしたのだ。
重慶周辺の敵基地攻撃については、空中で遭遇した敵戦闘機は33機と想定され、そのうちの27機を撃墜したと判定された。この戦いでも味方戦闘機の損失はゼロであった。更に、重慶周辺の北側基地と南側基地で、林の中に隠蔽した敵機8機を破壊したと認められた。また、双方の基地でガソリンの集積所を破壊したとされ、北基地では林の中に偽装した弾薬の集積地を爆破したと判定した。基地を攻撃した爆撃機も損失を受けていない。この基地攻撃では、改めて作戦の重要性が確認された。
何度も攻撃を行いながら、芳しい効果が出なかったのをたった1度の作戦で、敵戦闘機隊を殲滅し、敵基地の作戦能力も奪ったのだ。しかも味方機に被害は発生していない。この作戦でも零戦の能力と制空権の確保の重要性が改めて認識された。2段時間差作戦以外にも、現地での状況の観察の重要性と敵航空機以外の物資や燃料への攻撃の有効性も確認された。
山口少将と大西少将は報告書にざっと目をとおすと、山口少将がボソリとつぶやいた。
「恐れ入ったな、我々の作戦指導など全く効果がないことが証明されたようだ。電探と零戦の有効性については直ちに軍令部に進言しよう。それと重慶の攻撃作戦の立案者を表彰しないといけないな。我々以上に有能なその者が正しく評価される必要がある。むしろ我々が作戦指導を指南してもらう必要がありそうだな」
山口少将は今まで、多少の犠牲が出ても、力押しで攻撃を実施して敵を殲滅せよと命令していたのだから、味方の被害なく目的を達成できることが実証されたことの衝撃は大きかった。
大西少将が答える。
「なんでも漢口の迎撃戦で無線の指示をしたのも、重慶基地攻撃の作戦を進言したのも、空技廠からやってきた若い士官だそうです。しかも、その士官が本国を出発するときに、電探の活用方法と、今回の攻撃作戦での戦い方もあらかじめ考えて教えた技術士官が空技廠にいるそうです」
「うむー、和田少将のところか、かなり頭が切れる知恵者がいるようだな。ぜひとも会ってみたいものだ」
そこまで会話したところで、報告書を持って司令官室に控えていた進藤大尉が口を開いた。
「空技廠からきた技術士官は永野大尉といいます。彼が漢口基地の迎撃戦で無線指示を行いました。また、重慶基地攻撃に際して我々に時間差攻撃作戦の知恵を与えたのも彼です。永野大尉曰く、空技廠において同年齢の技術士官達が集まった折に、電探の活用方法と基地攻撃法の話題が出て、その場の技術士官から良い方法があると教えられたそうです」
横山大尉が会話を続ける。
「実は私自身も十二試艦戦の訓練を横須賀で行ったのですが、空技廠で彼らに会っています。お聞き及びと思いますが、昨年、十二試艦戦を改造して360ノット超の速度記録を達成した技術者達ですよ。永野大尉もその構成員ですが、中心人物は鈴木大尉という技術士官とのことです。なんでも現在は、超高速での飛行を可能とするタービンジェットという革新的なエンジンを開発しているとのことです」
すると横山大尉と同行していた艦爆隊の江草大尉が発言した。
「私は最近まで横空に所属していて、空技廠の試験機にも搭乗して試験飛行をしていましたが、十二試陸攻を改造してタービンジェットの実験をしているのを見ています。エンジンが好調ならば、革新的なエンジンですよ。これからは、450ノット(833km/h)の飛行も可能だと聞きました。その時、鈴木大尉にも会いましたが、人物はごく普通の優しい男です。但し、大変な物知りで、しかも未来の技術や出来事について、予言めいたことを言うこともあるようです。その予言が、またよく当たると評判のようです。今回の作戦も彼が予言したことではないでしょうか」
山口少将と大西少将が思わず見合わせて、江草大尉に質問する。
「予言というと、まさか占い師ではないよな? それと450ノットというのは冗談ではないよな」
「いえ決して、そのようなことはありません。例えば諸葛孔明は突拍子もない予言のようなことを言いますが、実は広い知識と科学的な論理思考の裏付けがあって予言を的中させますよね。ちょうどそんな感じではないでしょうか。タービンジェットの開発については大変焦っていると聞きました。何でも英国とドイツは同じようなエンジンを開発しているとの噂があるようです。英国でそれが先に完成すれば、我々の敵機が先に450ノットということになりますからね」
山口少将が発言する。
「おいおい、わが軍に孔明がいるのか。そうであるなら、孔明に作戦全部を任せればいいではないか。ますますもって会いたくなったな。本土に戻れば空技廠に行く時もあるだろう。是非とも覚えておこう」
この中国大陸での戦いは、海軍内で静かな変革をもたらした。日本側の一方的な勝利だった戦いの様子は、海軍上層部にも広く伝えられ、防空戦に対して電探の有効性が強く認識されることになった。加えて、空母機動部隊も電探を備えれば、同様の迎撃戦が可能であり、艦政本部も空母や直衛艦に装備できる対空電探に興味を示すことになった。
実戦部隊では、電探と無線電話を使用して、要撃戦闘において戦闘機を如何に的確に誘導して会敵させるかの研究が行われることになった。赤軍と青軍に分けて、空襲を模擬して、赤軍が複数の方向から飛来すると、空襲を電探で発見して、検知した複数の飛来機に迎撃戦闘機を割り当てて、効率的に迎撃する訓練も実施されるようになった。
基地攻撃戦については、基地の偵察がまず重要と認識された。事前に敵基地を写真撮影して、偽装された森や林の目標を写真から分析する方法が研究されることになった。更に基地能力を奪うためには、直接的に敵の兵力を撃破することも必要だが、弾薬や燃料の爆破による効果が大きいことが改めて認識された。
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