第26話 【ボクノシマデアソボウ】

「ガチでねみぃ」


 全く起きる気配けはいのないリーくんを必死ひっしにたたき起こし、僕たちはやっとまさやんの作ったゲーム島【ボクノシマデアソボウ】のゲームスタート画面にログインできた。一階のリビングにはテレビもある。僕のゲーム機をテレビにつないでテレビ画面に映し、リンも一緒いっしょに何かヒントがないかを探すことにした。


「ガチでねみぃって」


 まだ完全かんぜんに目が覚めないリーくんにコントローラーを持たせ、ゲームが始まる合図あいずを待つ。テレビ画面には、リーくんの青いクマと、こうちゃんのしぶいサムライ、まさやんのマッチョなパンダに、僕の戦士がまさやんの作ったゲーム島の入り口ゲートに立っている。


 まさやんの作ったゲーム島は、島の真ん中にでっかい火山があるジャングルみたいな島で、まさやんがいうには、先住民せんじゅうみんのゾンビがおそってくるのをよけながら、火山のふもとにある神殿しんでんにフラッグを立てるという、鬼ごっこみたいなゲームとのことだった。


「先住民のゾンビにやられないように進むんだ! それでね、ライフは一人5フラッグ! 」


「とにかく、できるだけいろんなところに行って、何かヒントがないか探さなきゃね! 頑張がんばってってね!お兄ちゃん達!」


 ゲームスタートを知らせるカウントダウンの数字が画面に映し出される。それと共にカウントダウン音も流れ、僕の心は一気にゲームモードに切り替わった!


——3・2・1・GOスリー・トゥー・ワン・ゴー


 スタート地点は島のはじっこにある砂浜だ! 僕たちは砂に足を取られながらもジャングルの中に入っていく! 濃い緑の大きな葉っぱがしげるジャングルはツルのようなものが木に巻きついていて、それをくぐって進まなきゃいけない。


「お兄ちゃん! 遅いよ! はやくリーくん達についてって!」


「うっさいな! こういうのはスピードだけじゃないんだぜ!」


 それにしても葉っぱが邪魔じゃまでなかなか前に進めないや!


 僕は目の前に現れた大きな岩のかべを登って進むことにした。僕の戦士は岩にり付いてどんどん岩山を登っていく。って、あれ? なにか下から汚い棒みたいなものが伸びてきたぞ?!


「う、うわぁ! なんだこれ!?」


「あ、ガッくん、それが先住民のゾンビだよ! 気をつけてね!」


「うそだろ、うそだろ、すんごい数でやってくるぞ! って、やめ、やめっ! あああ〜!」


 先住民のゾンビに足をつかまれ無残むざんにも引きずり下ろされて、僕のライフがひとつ減った。スタート地点にワープしてもどる僕の戦士……。でも、その状況じょうきょうは僕だけじゃなかったみたいで、他のメンバーも同じ場所に戻ってくる。


「ガチで?! まさやん、これガチでむずくね?」


「うん!」


「えへへ、だってみんなフラバト強いからさ。ゾンビの設定最強にしたんだよね」


「「「「バカなの?!」」」」


 まさやんの作ったゲーム島【ボクノシマデアソボウ】の敵キャラ、先住民のゾンビは一度出たら消えることがないらしく、最初のスタートの時にはいなかったゾンビが白い砂浜にまでジャングルの中からあふれ出してくる!


「これどうやってクリアするんだよー!」


「だって、こんなことになるなんて思ってなかったしっ! でも大丈夫! 誰か一人でも玉座ぎょくざにフラッグ立てればゲームクリアだから!」


 大量の先住民のゾンビから逃げながらまさやんがそう説明すると、リーくんがさけんだ。


「こうちゃん今すぐプロコンだ!」


「「「それな!」」」


「リン! 二階の僕の部屋のこうちゃんのカバンの中からプロコンとヘッドフォン持ってきて! はやくっ!」


「ぷ、プロ、って?!」


「もういい! こうちゃんのカバンすぐに持ってきて! って、あああ、だめだ僕、もうライフ一個しかない!」


「俺っちも!」


「僕も! めっちゃ多いねゾンビ!」


「「お前が作ったんだっつーの!」」


「うん!」


「リン! 急げ!」ともう一度僕がリンに声をかけた時、僕たち四人はライフを全て失い、ゲームオーバーの文字が僕たちの画面にデカデカと現れた。


「ガチで、これは無理ゲーだ。まさやん、ゾンビ多すぎるって! 俺っち目がすっかり覚めちまったぜ!」


「だって、多い方が面白いかなって」


「「「ないわ〜」」」


 とりあえず、手汗てあせがぐっしょりの自分の手をズボンのすそでいて、リンが戻ってくるのをまった。本当にこんなんで、あの島の真ん中にある神殿まで行けるのか?!


「ごめんね。へへへ。でも、誰か一人でも玉座にフラッグを立てればいいんだから大丈夫だよ!」


 白い目でまさやんを見る僕たち三人。そこへリンがこうちゃんのカバンを持って戻ってきた。


 カバンから、プロ仕様しようのコントローラーを取り出して装着そうちゃくしたこうちゃんは、真っ赤なヘッドフォンを耳につけて、完全武装かんぜんぶぞう完了かんりょうした。ついでに、テレビ画面に映っている僕のゲーム画面をこうちゃんのゲーム画面に切り替える。


「こうちゃん、イケるよな?」


「ったりめぇだろ」


 リーくんの問いかけに、こうちゃんがメガネを指で押し上げ、反応する。口調くちょうが変わっているから、もう覚醒かくせいしているんだ! いけぇ! こうちゃん! たのんだぞ!


——3・2・1・GOスリー・トゥー・ワン・ゴー


「オラオラオラオラァ〜! かかってこいやぁ〜!」


 ものすごいスピードでジャングルを走り抜けているこうちゃんのサムライ! そのテレビ画面をチラチラ見ながら僕も必死でジャングルを進む。


 くそっ! なんでこんなに先住民のゾンビがいてくるんだ! それに、時間が経つごとに増えてくる!


「ガチで多すぎだって! ガチで多すぎだって! ガチでガチでガチで! ああ、俺っちライフあと三つしかねぇや!」


「俺が玉座につけばいいだけだぜ! ほらほらほらほら! ゾンビなんて大したこたねぇなぁ!」


「「「「こうちゃんかっけー!」」」」


 僕たちがそうこう言ってるうちにも、こうちゃんは「オラオラ」言いながら、どんどんどんどん玉座のある神殿に向かっているようだった。僕はゾンビにやられ、ライフがもうひとつしかない!


「大丈夫だよ! お兄ちゃん達! こうちゃんもう神殿の中に入ったよ!」


「「「ガチで!?」」」


「オラオラオラオラ〜! 見えるぜ見えるぜ玉座が見えるぜ!ひょー! ここを登ればもう玉座だゼェ!」


 すげぇ、こうちゃん一個もライフが減らないでついに玉座に!?


「ゴーーール!」


「「「「おおおー!」」」」


 さすが覚醒バージョンのこうちゃんだ!

 僕たちが先住民のゾンビにてこずっている間に、一気に走り抜けて玉座にフラッグを立てた!


KING キング』の文字がテレビ画面にデカデカと映り、金色に輝く玉座にまるで王様のように座る渋いサムライの姿が映っている。


「で、どこにヒントがあったの?」


「「「「あ……」」」」


 すっかりゲームに夢中むちゅうで、怪盗キューピーのことをこれまたすっかり忘れていた僕たち六年男子は、リンの言葉に固まった。と、その時、テレビ画面の『 KING 』の文字が『 PASSWORDパスワード 』に変わり、その下に入力画面が現れた?!


「「「「「パスワード?!」」」」」

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