第22話 小柴山の夏祭り
「ガチすぐ
「ね、思ってたよりすぐに山の上まで来れたね!」
リーくんとまさやんが話している向こうには、
「すげぇ! ガチの夏祭り
「うん! でもお兄ちゃん! まずはシルクハットのマークを探さなきゃ!」
「だな!」
ここでシルクハットのマークがはやく見つかれば、僕たちは夏祭りを
「ガチ何にも見つからねぇ! てか俺っち腹減ってきたし!」
リーくんがそうぼやいて、そう言えばお昼ご飯におにぎりを食べたあと、アイスクリームを食べただけで、何にも食べてないことを思い出した。そう思うとお腹がぐうっとなる音が聞こえる。
リュックをおろし、お
うそ! そんなに使ったっけ?! バスに乗ったのがえっと、七回で、一回一五〇円だから、えっと……? と、とりあえず! バスと図書館で食べたアイスと、ロープウェーで千三百円使っちゃったってこと?!
「マジでやばいし!」
この予算では夏祭りを思いっきり楽しむなんて無理かもしれない……。
僕は急いでみんなを集め、この事実を話した。
「うわぁ、俺っち、二百円しかないかも!」
「リーくんコンビニでアイスと大きなコーラ飲んだしね」
リンが冷静に計算してそう言うと、リーくんが「マジか……」と肩を落とした。
「でも大丈夫! もしもの時のためにお母さんに私だけ多めにもらってきたから!」
「「「「おおー!」」」」
リンはもしも足りない時のためにと、千円
てか! どんだけ僕たちママーズから信用がないんだ?! 二年生の妹に多めにお金を渡すだなんて!
「電車乗り
「ガチかー……」
「みんなのお金合わせてみんなで分けたらどう?」
肩を落としているリーくんはこうちゃんの
「まじ助かる! こうちゃんナイスアイデアサンキュー! みんなもありがとな!」
こうして僕たちはひとり八百円のお
小柴山の夏祭りは、小柴山の
「リン、とりあえず焼きそばでいい?」
リーくんとまさやんとこうちゃんは、それぞれ屋台を楽しみに行ったみたいだけど、僕はリンのそばにいた。リンはなんだかんだ言ってもまだ小学二年生。知らない場所での夏祭りの会場で一人きりにはできない。
「ここ
小柴山の
焼きそばの屋台はそこそこ
「リン、買ってきたぜ!」
「お兄ちゃん、ありがと。本当はみんなと一緒に夏祭りまわりたいよね?」
めずらしく僕に気を使うようなことを言うリン。それを聞いて、僕はなんだか変な気持ちになる。
「別に、食べてから
「そうだけど」
ベンチに座ってキラキラ
「リン、どうした? 元気なくね?」
僕の問いかけにリンは、「だって」と言葉を返し、そこで下を向いて言葉を続ける。
「ここまで来たし、怪盗キューピーからの謎はだんだん解けてる気がするけど、でも、まだ怪盗キューピーにたどり着けてるわけじゃないし。それに、時間だってどんどん減ってくし。本当に変な
確かに、だんだん
「もしも、怪盗キューピーが見つからなかったら、どうしよう……。そしたらお父さんの会社のシステムが
僕はリンの
「大丈夫だよ。きっと見つかるよ」
それしか言えなかった。僕よりもずっとしっかりしてる妹がこんなに落ち込んでるのに、それしか言えない僕はお兄ちゃんとしてはダメかもしれない。でも、僕にはそれしか言えなかった。
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