ナナの結婚(4)
ナナの職業は、動物のカウンセラー。当然、ナナにも給料が発生する、ボランティアではない。ただ、いったいどんな名目でナナ用の鈴名義の第2の口座に振り込まれるのか、疑問は残る。
ナナのカウセリングには相棒がいる。もしかしたら仕事柄、鈴より仲がいいかもしれない。ただ、ナナが休みの時は、当然、相棒も休みになる。しかし、その相棒はめったなことではナナと休日を過ごすことはない。まぁ、いろいろとお互い考えがあるのだろう。
そのナナの相棒の名は、田中真奈美、年齢25歳。木村動物病院から車で15分の所にあるマンションに住んでいる。最近、事情があり彼氏と別れ、彼氏の存在すら知らない院内の従業員たち、鈴も知らない。ただ、ナナだけはカウセリングの相棒として知っていた。
翌朝、いつものように田中先生は、ナナを迎えに鈴の自宅に行き、キャリーバッグに入れられたナナと一緒に木村動物病院の2階に行くと。ナナをカウセリングの事務所、K事務室に下ろし、田中先生は女子更衣室に向かった。
カウセリングする動物は、主に猫と犬が多く、ナナが悩みを聞き、補助的に田中先生も助言をする。ただ、動物たちの悩みは、大半が人間によるストレスが原因となっている。
ナナと田中先生と2人でカウセリングをK事務室の隣のKルームで行い、ナナの正体を隠し続けている。
カウセリングは、「動物型人相学」という、ありもしない造語を使って、動物の表情で悩みを読み取り、悩みを解決していることになっている。嘘も方便対応、これもすべてナナを守るため。これか意外とカウセリングを依頼した飼い主たちには信じられ、ナナの存在は一切バレていない。そして、これが意外と予約が多く、動物たちもストレス社会に巻き込まれているのかもしれない。
これは人間の勝手だが、動物たちと意思疎通ができればという想いもあるようで、動物の気持ちを知りたい、ここにいて幸せなのか。その答えを聞くのが怖いが、知りたい飼い主たちが多い。
ナナの趣味はパソコン。その能力を生かしK事務室にある特注のキーボードと特注のマウスパッドを使い、本日のカウセリングの予約を確認していると。問い合わせメールに、以前カウセリングを依頼した飼い主たち数十人からメールが届き、その内容を確認すると、ほぼ同じない内容だった。
カウセリングから数日後、突然人間の言葉を理解し始め。もしかしたら、カウセリングが原因のような気がします。このままで大丈夫でしょうか。
1件目、雌猫のハルナの場合。今日は仕事で遅くなるねと話しかけると、うなずき。いつものご飯を買い忘れ、今日はこれでいいとつい聞き、またうなずき。この服とこの服、どっちがいいと思うと、つい話しかけると、前足でこっちだと答え。半信半疑で、私の言葉がわかるのと聞いてみると、うなずいた。
2件目、雄犬のトラの場合。半信半疑で、私の言葉がわかるのと聞いてみると、うなずき。試しに、○×カードを作り。こちらが○、こちらが×と教え、カードを2枚床に置き、○はどっちでしょうと聞くと、○のカードを前足で押さえた。ちょっと怖いような気がした。
この他にも、猫のそそうがなくなったり。猫が言うことを聞くようになったり。なんか聞き分けがいいようになったと感じたり。意思疎通ができている、そんな感じを受け、うれしいけど、なんかとまどったり。
この時、カウセリングの件数は、450件を超え。そのうちの1割程度の飼い主たちからこのようなメールが届いていた。
このことを田中先生は、すぐに鈴の元へ報告をしに院長室へ行き、鈴に報告をすると。この現象はいったいなんなのか、ナナと田中先生が出した答えと、鈴の出した答えは、ほぼ同じだった。
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