ナナの結婚(2)

 早川副院長、早川瞳はある想い胸に独身を貫き、31歳になる。鈴と早川副院長は幼馴染で、小中高と大学まで一緒、大親友だと豪語し、お互いよき理解者だが。鈴の両親を尊敬し、第2両親だと思っている。そして、木村動物病院と鈴の自宅が近いため、自分の母親が作る料理より、鈴の母親が作る料理の方があまりにも美味しいので、朝食と昼食は、鈴たちと一緒に食べている。これを許す、双方の両親たちも幼馴染だった。


 本日、鈴とナナは家でまったりと休日を過ごしていた。こんな時は、早川副院長が院長代理を務めている。

 楽しい休日なのに厄介なことが起き。ナナは、リビングの時計をちらりと見ると、午前11時55分を過ぎ、あと30分で早川副院長が昼食を食べに来る。


 鈴がナナのことを「ナナちゃん」と呼ぶ時は、鈴に逆らわない方がいい。以前もあった、鈴を怒らせると3日間口をきいてもらえなかったことが。

 ナナにとっては苦痛でしかない。大好きなお姉ちゃんとお喋りができなくなる、それは嫌だ、私の楽しみがなくなる。でも、瞳ちゃんと約束した、これは2人だけの秘密だと。ナナは黙っておこうと思った。しかし、いや、思い切って話した方がいいかもしれないと思い、あの秘密を話すことにした。


 幼い頃、鈴の夢は水泳のオリンピックの選手になり、金メダルを取ること。小中と向かうところ敵なし。ただ、ちょっと調子に乗ってしまうところがあった。

 鈴が中学3年になった頃、ある事情で生まれたばかりの雌猫を飼うことになり。その子猫に「リン」と名をつけ、まるで妹のように可愛がっていた。そのことがきっかけで、段々と水泳の練習をさぼるようになり、挙句の果てに、「私は、ちょっと練習しなくても天才だから大丈夫」と豪語していた。

 鈴は高校に推薦入学すると、練習をさぼっていたせいで、記録は伸びず、大会で不がない成績、周りの期待を裏切り、初めての敗北を味わい、そのことでついリンにあたってしまい。そのことがリンのストレスになり、そのせいでリンは亡くなった。

 その時、鈴は誓った。リビングで両親の前で土下座をし、獣医師になると。そして、結婚もしないと。しかし、鈴の父親は、リンへの贖罪つもりで獣医師になるならやめろと言い、お前の気持ちなど動物たちには関係ない。動物たちを救いたい覚悟がお前にあるのか。それに、幸せを放棄するようなことを言うな。あんなに優しい父親が激怒し、鈴は初めて見た。

 そのことを知った早川は、鈴の部屋でいつになく真剣な表情で、私は一生鈴について行く、私は鈴の味方だから、と言っていた。

 学生の頃から、美人でちょっと近寄りがたいが、早川に言い寄る男性は多かった。鈴と同じ大学の獣医学部に入り、勉強に集中する鈴を見ていると。ミスコンに選ばれるが断り、結婚したいと思う男性が現れ、両思いだとわかっても付き合わず。

 正直に言うと、鈴の両親に憧れている、あんな夫婦になりたいと。しかし、一生私は鈴について行くと誓った以上は、鈴が結婚しないなら、私も結婚しない、それが筋を通すというもの。そのことをつい最近ナナはここで知り、2人だけの秘密だと言われ。周りには、私は結婚に興味がないとウソを言い、鈴もそう聞かされていた。


 鈴は獣医師になり、動物たちのためにだけに生きる人生を選んだ。結婚が女性の幸せとは言わないが、結婚はしない、自分は幸せなってはいけないと思っていた。しかし、ナナと出会い、その気持ちが変わり、リンに対し失礼だと思うようになっていた、あの墓参りのあとに。この頃から、鈴の笑顔が増え、可愛さに磨きがかかり。結婚はしないとことを知っている鈴のファンクラブたちだが、角野教授を除いて、どこか鈴のことを諦めきれない。そして、鈴のためならなんでもすると言っている。但し、できる範囲内だが。そんな中、ナナと早川副院長は、心の底ではまだリンのことが、と思っている。

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