第17話【おすそ分け】

斎藤さんと同じ時間に帰れる。

実務研修が始まり、今までの日常から慌ただしくなる。

その事に気を引き締めていたが、斎藤さんと帰宅できる事で、少しだけ

日常が日常のまま存在している。

そんな気がした。


斎藤さんも人事部での初日、緊張はしたがランチを一緒にとれた事で、少しほぐれたようだ。


「西野君、今日の夕飯はどうするの?」

「今日は・・・何も考えてなかったです。米はあるので、オカズだけ買いに行こうかかな。」

「それならさ、家にこない?あの、ほら、昨日、ポテトサラダ沢山作り過ぎてさ。」

「そんな頻繁に伺って、迷惑にならないですか?」

「全然!む、むしろ皆がさ、ほら、呼べって感じだし!」

ちょっぴり慌てる斎藤さんが愛らしい。

「じゃあ、お言葉に甘えて。その代わり、デザートを持っていかせて下さい。ご家族の好み、教えて下さい。もちろん、斎藤さんの好みも。」

「え?いいのに、、って言っても気を使っちゃうよね。じゃあお言葉に甘えて、デザートご馳走になろうかな。」

「はい。そういえば、斎藤さんの好みとか、俺あまり知らないですね。」

「そんなもんじゃない?仕事で会うしかないしさ。」

「そっか・・・俺、斎藤さんの事、もっと知りたいです。」

「へ・・・」

「散歩以外でも、外で会えたら知れますかね。」

「う、う、うん・・・」

「今度の休み、どこか出かけませんか?」

「・・・うん///・・・」


最寄りにつき改札を出る。

斎藤さんが俯きがちになってしまった。

何かしてしまっただろうか…

考えても答えは出ない。


「あの」

「は、はい。」

「俺、なんかしちゃいましたか?」

「へ?」

「齋藤さん、喋らなくなってしまったので…」

「いやいや、何もだよ!平気平気!」

「良かった。」

「うん!」


それから、商店街のケーキ屋さんでデザートを購入。

齋藤さんのお父さんもケーキが好きなようで、まとめて購入出来た。

齋藤さんはフルーツタルトが好きなのだそうだ。

甘すぎないものが好みなのだと知る事が出来た。


また、少し歩き齋藤さんの家が見えてきた。

少し緊張するけど、ホッとする。

不思議な感覚に包まれながら、家に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る