第11話【阿修羅な斎藤さん】

「二人とも・・・」

まるで阿修羅のような顔をした斎藤さんがそこにいた。

二人のほうに目をやると、目を伏せじっとしている。

なんだかそのやり取りがおかしくて、楽しくて、思わず吹き出す。

「あっ、すいません。なんだか微笑ましくて。」

「馬鹿にしてるな・・・」

「いえ、そういうわけじゃありません。俺は、あまり家族と話すことがなかったので。」

「・・・そ、そっか。」

「お姉ちゃん、なんか焦げてない?」

ドタバタとキッチンに戻る斎藤さん。妹さん、ナイスです。


その後は斎藤さんが作ってくれたご飯ごちそうになった。

その間も色々聞きたい母妹、それを制す斎藤さん、という何ともほっこりする空間だった。居心地の良さに気付けば21時を回っていた。

「すいません、ごちそうになった上にこんな時間まで、そろそろ失礼します。」

「送っていくよ!」

「いえ、それだと家に帰って、心配だから僕が斎藤さんを送り届ける事になってしまうので」

少し顔を赤らめた斎藤さんを二人がまた冷やかしたような表情で見つめる。

「そ、そか・・じゃあまた明日!」

「はい、また明日。」


アパートにつき、風呂に入った。風呂上がりの牛乳はやはり旨い。

さっきまでの賑やかさが嘘のように、静まり返った部屋。斎藤さんの家は暖かった。

「楽しかったな・・・」

家族の団欒とはああいうものなのだろう、自分には縁がなかった、凄く暖かくて、優しくて、楽しい空間だった。

「また、お邪魔させてもらおうかな。その時は手土産をもって、事前に約束もさせてもらおう。」


布団に入り、明日を思い眠りについた。

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