第33話 罠

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」」


4人の前には、巨大な球体が転がって来ていた。


「有咲のせいだからな!!」

「楓のせいでしょ!!」

「お主ら、喧嘩しておらぬで走るぞ!!」

「そうですよ!!。何せあの球は破壊出来ないんですから!!」



何故、こんな事になっているかと言うと、今から15分前に遡る。


「ここが次のダンジョンか…」

「山の中にあるなんてね…」

「お主らなら大丈夫だろうが、気をつけるのじゃ」

「ソフィアの言う通りです」


4人は、勇者との出会って1週間後、目的のダンジョンに到着していた。

山の山頂まで登り、4人の前には、遺跡のようなダンジョンが佇んでいた。

楓、有咲、ソフィア、レイナの4人は、ダンジョンに足を踏み入れる。


「というかダンジョンって、どうしてうす暗いんだよ」

「慣れるまで時間かかりそうだよね」

「お主らは、人間なのじゃ。仕方あるまい」

「慣れたらあっという間ですよ」


うす暗いダンジョンの中を進んで行く。


「魔物は、今の所見当たらないなぁ」

「そうだね」

「ふむ…」

「どういう事なんでしょうね」


周りには、魔物が見当たらない。


「もう攻略済みか?」

「かもしれないね」


楓と有咲は、魔物が居ないため警戒を緩めた。

それが、問題だった。


ギギィ…


「「ん?」」


楓と有咲の足元は、他の地面と比べると数センチほど沈んでいた。


「「あっ、これヤバいかも…」」


ゴゴゴゴゴ…。


遠くから地響きのようなものが聞こえてくる。

その音は、徐々に4人の下に近づいて来ている。


「の、のう。お主ら…」

「ソフィア様…。何か来ていませんか?」


ソフィアとレイナは、ダンジョンの奥を見つめる。

2人の視線の先には、黒い影が迫っていた。


ゴゴゴゴゴッ…!!


「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!」」」」


巨大な球体が4人を襲う。


「打ち抜くか!!」

「楓、やっておしまい!!」


楓は、拳銃をホルスターから引き抜き構える。


「止まれってくれよ!!」


バンッ!!


楓は、引き金を引く。

赤い弾道が、巨大な球体に当たる。

しかし、速度は落ちない。


「やばい気がする!!」

「じゃあ私が!!」


有咲は、グレネードランチャーの引き金を引く。

赤色の弾丸は、楓と同様、球体に当たる。

しかし、破壊も出来なければ速度が落ちることもない。


「丈夫な球だな!!」

「みたいね!!」

「走るのじゃ!!」

「はい!!」


4人は、巨大な球体に追われながら、ひたすら走る。


ギギィ…。


「何の音だ!?」

「ごめん、また何か踏んだかも!!」


4人が走る地面の地形が変化する。

平坦だった道が、下り坂へと姿を変えた。

地形の変化により、球体の速度が上がる。


「「うっぎゃぁぁぁぁぁ!!」」


4人は、下り坂を急いで走る。


ギギィ…。


「あっ、やったかも…」

「えぇ!?」


ゴゴゴゴゴ…。


4人を追う球体とは別の所から、地響きが聞こえてくる。


「お主ら、背後から別の球じゃ!!」

「しかも3つほど!!」

「「いやぁぁぁぁぁぁ!!」」


破壊することも出来ない球は、4人を襲う。


「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」」

「有咲のせいだからな!!」

「楓のせいでしょ!!」

「お主ら、喧嘩しておらぬで走るぞ!!」

「そうですよ!!。何せあの球は破壊出来ないんですから!!」


そして現在に戻る。


「マジでどうするんだ!!」

「走るしかないでしょ!!」

「どうしたものかのぅ…」

「凍らせて足止めとかいかかでしょう!!」

「「それだ!!」」

「うむ、レイナ。頼んだぞい」


レイナは、振り返り、魔法を発動する。

多くの魔法陣が、球体の転がる地面に展開される。


「フリーズ!!」


レイナの魔法は、襲い掛かる球体を凍りつかせた。



「「おお~」」

「流石なのじゃ」

「ありがとうございます」


レイナによって、安全が確保され、一同安心する。


「それでこれからどうする?」

「そうね。来た道は戻れないし…」

「そうじゃな…。トラップで、地形もだいぶ変わっているみたいじゃ」

「このまま下って行きますか?」

「仕方ないし、進むしかないか…」


4人は、凍った球がある方とは反対の下り坂を進んで行くことにした。


「どこに繋がってんだろうなぁ」

「下って行くって、かなり深くまで行きそうだね」

「山の麓まで行くかもしれぬのう」

「歩くの疲れちゃいますね」


4人は、ひたすら坂を下って行く…。


「もうあんなトラップ無い事を願いたいなぁ」

「フラグなの?」

「嫌な予感がするのじゃ」

「そうですね…」


キィィィィィ…


「「「「あっ…」」」」


4人の足元にあるはず地面は、姿を消していた。


「「「「あぁぁぁぁぁ!!」」」」


4人は、暗い穴の底に落ちていく。









「いっ!!」

「きゃっ!!」

「うっ!!」

「むにゅっ!!」


4人は穴の底まで落ちてきた。


「重い…」

「あ?」

「楓殿、重いは禁句じゃ」

「そうですよ」


今の状況は、楓が下敷きとなり、その上に有咲、ソフィア、レイナの順で乗っている。


「どこまで落ちて来たんだ…?」

「分かんない…」

「何かあったら妾が飛べば良いじゃろ」

「流石です」


4人は、落ちてきた場所の周囲を見渡す。


「ね、ねぇ楓…?」

「何だ?」


有咲が、震え交じりの声で楓の名を呼ぶ。


「これ…骸骨じゃない?」


有咲の視線の先には、白骨化した人間が居た。


「スケルトン…って訳では無さそうだな」

「うん。完璧に死んだ人間だと思う」

「見たところ、かなりの時間が経っておるな」

「あの、これって非常にまずいのでは?」


レイナの一言で、現場が凍り付く。

この場所には、白骨化した死体がある。

つまり、脱出できなかった者がそのまま死んでいったことの証拠でもあった。


「とりあえず、周囲を散策。何も無ければ、壁を破壊する。良いか?」

「うん」

「うむ」

「分かりました」

「じゃあ調査開始だ」


4人は、それぞれ落ちてきた空間を調べる。


「(壁か…)」


楓は、壁に手を当て、壁沿いを歩く。


「(そもそもどのくらい広いんだ…?)」


楓は、さらに壁沿いを歩く。


「楓、何か分かった?」

「分からん。そっちは?」

「分かんない」

「そっか」


壁に手を当てて、歩いている楓に近づく有咲。


「扉とかもある気配は無いな」

「落ちてきた穴は、いつの間にか塞がってるしね」

「本当だ…」


楓は、上を見上げる。

そこには、確かに落ちてきた穴が塞がっていた。


「これは、本当に壁に穴でも開けた方が早いかもなぁ」

「いっそのこと、地面に開けてみる?」

「何でだよ」

「このダンジョンって、トラップが多いじゃない?。トラップを掻い潜るためには、仕掛けた者の予想外の動きをすることだと思うんだけど」

「なるほど」

「って事で、私たちは上からこの空間に振って来た。だから普通だったら、上を目指したり、この空間から脱出できる場所があるだろうと思い探したりね」

「という事は、俺はまんまと罠にかかるところだったのか」


有咲と楓は、脱出する術を考える。


「お主らの方は何か分かったのか?」


楓と有咲が話す所ににソフィアとレイナが近づいてくる。


「こっちは、何も分からん」

「そうだね。私の方もさっぱり」

「ふむ、お互い収穫無しみたいじゃな」

「私の方も何もなかったです」


4人は、落ちてきたこの空間を調べるも何も収穫は無かった。


「じゃあ有咲の言う通りしてみるか」

「えっ…本気なの?」

「本気も本気。超本気」

「何なのじゃ?」

「何をするんですか?」


楓が自信満々な姿をしていた。

そんな姿を見て、有咲は不安そうな目をした。

ソフィアとレイナは、何を考えているのか理解していなかった。


「じゃあ行くぞ」

「まっ…」

「何をする気じゃ?」

「何が起きるのでしょう?」

「穴をあける」


楓は、マスケット銃を地面に向けていた。


「これぞボーリング!!」

「ビームで穴を開ける奴がどこにいるのよ!!」

「ふむ、そういう事なのじゃな」

「楽しみです」


ソフィアとレイナの目は、わくわくしている様子だった。

対して、有咲は楓を叱っていた。

しかし、楓はそんな事を無視して引き金を引く。


ドゥシューン!!


楓は引き金を引き、地面に穴を開ける。

すると、地面にヒビが入り崩落する。


「「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」」

「こうなるって分かったでしょ!!」


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