第26話 キャンピングカー

「さてと、ダンジョン攻略の準備でもするか」

「ねぇ、楓」

「何だ?」

「この世界にキャンピングカーってないのかな」

「あるわけないだろ」

「やっぱりそうかなぁ」


これから10か所のダンジョンの調査をするため、寝る場所の確保をしたいのだが、今所有している車では少し不便なのだ。


「グーデルにでも行って、見てみるか?」

「そうしようよ」


グーデル、以前馬を買い求めに行ったら車を購入することになり、巨大アンドロイドと戦った町にもう一度行くことになった。


「じゃあソフィアとレイナを連れて行かなきゃだな」

「うん!!」


グーデルに向かうため、家で待っているソフィアとレイナと合流することになった。







楓、有咲、ソフィア、レイナの一行は、グーデルに向けて車で向かっていた。


「それでグーデルに行くのじゃな」

「そういうことだ」

「日帰りだったり宿がある町に行くだけならこの車でも良いけど、宿が無かったり今回みたいにダンジョンの攻略が目的だと、不便だからね」

「なるほどのぅ」

ポヨンッ…。


楓と有咲は、ソフィアにグーデルに行く目的とダンジョンの攻略について説明する。


「スケルトンって色んなところにおるのじゃなぁ」

「そういやソフィアの所にはいなかったのか?」

「前に聞いた時は、スケルトンが居たなんて聞かなかったよね」

「うむ。妾の所には居なかったぞい」

「というか、ダンジョンの魔物ってどうやって生まれてくるんだ?」

「まあダンジョンって魔物からしたら一つの町のようなものじゃ。他所からやってくるものも居るし、そこで子作りして生まれたものもおる。レイナは、ダンジョン生まれじゃ」

「そ、そうだったんだ」

「すげぇな」

「そうか?」

「「うん」」


ダンジョンに棲む魔物の誕生秘話を聞いた楓と有咲だった。


「ほれ、グーデルが見えて来たぞい」

「みたいだな」

「歩きだとそこそこ時間かかったのに、車だとすぐだね」


目的の地グーデルへとたどり着いた。








『オヤ、アノトキノオキャクサマ』

「「(めちゃくちゃカタコトだ!!)」」

「あの車の大きいのは無いのかのぅ?」


楓たちは、前に車を買った店に来ていた。

楓と有咲が以前聞いたはずのアンドロイドの言葉がカタコトに驚く間、ソフィアが話しを続けていた。

ちなみに、レイナは今回はソフィアの鞄の中だ。


『ソレデシタラ、コチラハ、イカカデショウ』


アンドロイドの店員が一台の車を勧める。


「「いや、もはやバス!!」」


楓たちが目にしたのは、キャンピングカーなのだが、トイレ、シャワー、ベッド、キッチン、食事スペースなどすべて完備してあり、豪勢なものだった。

そのため、サイズもかなり大きかった。


「こ、これ普通免許で運転できるのか…?」

「いや、この世界に運転免許証なんてないでしょ」

「のぅ店員」

『ハイ』

「これはいくらなのじゃ?」

『金貨100枚です』

「高いのぅ。お主ら、いくらまでなら出せるのじゃ?」

「「えっと…」」


楓と有咲は、お金には全く困っていなかった。

そのため、自分達がどのくらいお金を持っているのか把握していなかった。


「これくらいだな…」

「そうだね」


2人は、ソフィアに金貨が入っている袋を見せる。


「何じゃこの金貨の数は!!」

「「ふぇ?」」

「どこでそんなに稼いできたのじゃ!!」

「えっと…」

「転生の特典かな…」


楓たちは、3人と1匹暮らしなのだが、生活費は基本的に依頼の報酬で足りているため、転生時に家にあったお金はあまり手をつけていなかったのだ。

そのため、手持ちには金貨が100枚以上もあり、まだ家に大量の金貨が残っていた。


「それで、お主たちはこれを買うのかの?」

「えっと…」

「楓に任せるよ…」

「じゃ、じゃあ買おっか」


楓と有咲は、初めてのキャンピングカーを異世界で一括払いで購入した。










「前も思ったけど、すぐに納車するなんてなぁ」

「本当だよね」

「それで、どっちがこのキャンピングカーを運転する?」

「楓が運転して」

「まさかの即答!?」

「当たり前でしょ!!ようやくこっちの車にも慣れてきたところなのに、こんな大きさのキャンピングカーなんて運転できるわけないじゃない!!」

「俺もこの大きさは初めてだよ!!」

「でも譲るよ!!」


2人はどっちがキャンピングカーを運転するか揉めていた。


「のぅお主ら」

「ソフィアは少し黙ってて」

「そうだよ」

「お主ら…」

「ここまで来ると仕方ない」

「そうね」

「アレで決めるぞ」

「アレね」


楓と有咲は、覚悟を決めた顔をしていた。


「「最初はグー!!。じゃんけんポン!!」」


楓 チョキ

有咲 グー


「負けたぁぁぁぁ!!」

「楓はジャンケンだけは本当に弱いね!!」


楓は、有咲とこれまでに何度かジャンケンしたことあったが、勝率はかなり低かった。


「決まったかのぅ」

「ああ、俺がこっちのキャンピングカーを運転する」

「私が今までの車ね」

「ふむ。その前に一つ気になったのじゃが…」

「「ん?」」


ジャンケンに負けてショックを受けている楓と勝って喜んでいる有咲の声が重なる。


「今までの車は、魔法陣の中にに収納しておけばよかろう」

「「あっ…」」


こんな単純な事を楓と有咲は、思いついていなかったのだ。


「じゃあ俺が運転するわ…」

「ごめん、お願い…」

「本当に仲は良いようじゃな」


楓たちは、キャンピングカーに乗り込んだ。


「「広っ!!」」

「おお~。もはや家のようじゃ」

ポヨンッ…。


それぞれ感想を述べ、レイナは鞄から飛び出し、ソファに飛び乗る。


「じゃあこのままダンジョンに向かうけど、皆良いか?」

「大丈夫だよ」

「妾もじゃ」

ポヨンッ…


皆の了承を得て、車を発進させる。

運転は、楓、助手席には有咲。

その後ろにあるソファに、ソフィアとレイナが座る。


「じゃ、じゃあ出発~」

「お、お~」

「おーなのじゃ~」

ポヨンッ!!


こうして楓たちは、スケルトンが住む1か所目のダンジョンに向かう。


「魔法の車だから、運転は楽な方なのか?」

「私もキャンピングカーなんて運転したことないから何とも言えないかな」

「快適なのじゃ~」

「というか、このキャンピングカーにも冷蔵庫とか搭載されてるって、どんな異世界だよ…」

「刀の人みたいに、私たちと同じ世界から転生した人が、車を作ったんじゃないの?」

「だとしたら、俺たち以外にどのくらい転生してんだよ…」

「異世界転生って何番煎じだろうね…」


以前購入した車といい、今回買ったキャンピングカーといい、転生前の世界で見たことあるものがファンタジー感溢れる異世界で何度も目にしている。

さらには、この世界には刀も存在している。

つまり、楓や有咲と同様に異世界転生をしている者が他にいるのだ。


「まあ今は考えても仕方ないな」

「そうだね」

「とりあえず、今はダンジョンに行って調査でもするか」

「そうだね」






キャンピングカーを走らせること、30分。

目的のダンジョンに着いた。


「まずは、一か所目だな」

「そうだね」

「そうじゃのう」

ポヨンッ


楓たちは、ダンジョン攻略を始める。


「このダンジョンは、アレだな。採掘場みたいなところだな」

「確かに。これって何かの鉱石なのかな」

「ふむ、おそらくオリハルコンじゃな」

「「オリハルコン…?」」

「そうじゃ」

「いや、ゲームとかでかなり高価な鉱石じゃねぇか!!」

「ストーリー終盤に出てくるようなものよね!!」


オリハルコンとは、RPGゲームだとかなりレアな貴金属として、扱われる。

この世界では、武器や防具などに使われることが多いが、丈夫とは言えないため、装飾品として扱われることが多いようだ。


「確かに高価なものじゃが、全く手が付けられておらぬのぅ」

「これを売ればそこそこの金持ちになれたりするんじゃないのか?」

「危険だから誰も来ないとか?」

「まぁそれが理由になるよな」


このダンジョンは、街から離れており、魔物の住処でもあるため、腕のあるものでない限り近づかないのだ。


「お主ら前を見てみるがよい」

「ん?」

「あれって?」

「このダンジョンに棲む魔物じゃ」


楓たちの前に魔物が現れた。


「スケルトンではなさそうだな」

「ねぇ、あれってゾンビじゃない?」

「知能が無さそうな魔物じゃな」

「どうしたものかなぁ」

「攻撃して来たら、やり返す?」

「それがよかろう」


楓たちは、目の前に現れたゾンビを警戒する。


『グァァァ…!!』


ゾンビは、楓たちを目掛けて、噛みつこうとした。


「やっぱり攻撃してくるよなっ!!」

「そうだね!!」

「有咲殿から受け取った刀を今回は使うとするかのう」

ポヨンッ!!


3人と1匹は、戦闘態勢に入る。

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