Love and Macho

Take_Mikuru

パート1

〇ボクシングジム・中・昼


人が物凄い力で殴られている音がする。

それに呼応するように激しい叫び声が上がっている。

荒井勇気(25)が上半身裸の状態でパンチングミットの前に立っており、まるでゴリラのようにデカイ黒人に容赦なく腹を殴り続けられている。勇気は必死な表情で歯を食いしばり、両腕を後ろにあるパンチングミットの周りに回してある。

黒人はリズムよく、とてつもない力で勇気を殴り続けている。


勇気「うあ!うあ!うあ!うあ!うあ!」


黒人は一瞬勇気を見上げると、さらに早いスピードで勇気の腹を殴り始める。


勇気「うあ!うえ!うううううううううううううううううううう!!!!!!!」


勇気は今にも血管が切れてしまいそうな程真っ赤な顔で必死に痛みに耐えている。

黒人はただただ夢中で殴り続けている。

すると、突然勇気が何かを戻しそうな表情になる。

黒人はそれに気づくとパンチを一瞬やめ、大きく振りかぶって一発勇気の腹にパンチをねじ込む。


勇気「うううああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


勇気は大声で叫びながら大量の血と肉を吐き出す。

黒人は素早くそれを避け、横から勇気を見ている。

床に大量の血が広がり、その上に肉が散乱している。

勇気が吐き終えると、まだ呼吸が整っていないのにも関わらず、黒人は勇気の顎を強く掴み、顔を近づける。


黒人「オマエノ、モクテキワ、ナンダ」


勇気は肩を大きく揺らし、激しく呼吸していて、何も言葉を返せない。


黒人「オマエノ!モクテキワ!ナンダ!」


黒人は思いっきり勇気の顔面を殴る。

勇気はこの上なく辛そうな顔で黒人を見る。


勇気「女の子に、愛されます」


黒人「ハン!?キコエナイヨMannn!?」


勇気は大きく息を吸い、


勇気「可愛い女の子に!愛されまぁあす!!!!!!!」


〇駅前・外・昼


勇気が一人ジャケット姿で立っている。

勇気は緊張した面持ちでスマホを見ている。

スマホの画面にはマッチングアプリ上の女性のプロフィールが表示されている。

勇気がチラっと周りを見回すと、1人の若い女性が勇気の方に小走りしてくる。


女性「っあ!」


勇気もその女性を見て、


勇気「あ」


女性は勇気の目の前で立ち止まり、笑顔で会釈する。


女性「こんにちは、ゆうきさんですかぁ~??」


勇気「あ、はい」


女性「まゆでぇ~す、よろしくお願いしまぁ~す」


勇気「あ、こちらこそ、今日はよろしくお願いいたします」


勇気は固い動きで会釈をする。

麻友(19)は声を上げて笑う。


麻友「勇気さん、もしかして緊張してますかぁ~??」


勇気「あ、はい、ちょっと、、、すみません」


麻友「いえいえ~、こういうの初めてですかぁ~??」


勇気「・・・はい、そうなんです、、」


麻友「あ~、それなら緊張しますよね~、麻友も初めた頃はすんっごく緊張してましたもん!それじゃあ今日は私がリードしなきゃですね!」


勇気「あ、いえ」


勇気はスマホをポケットにしまいながら引き締まった表情で麻友に頷く。


勇気「そこは私が」


麻友はまた声を上げて笑う。


麻友「わ~男らしい!じゃあよろしくね!」


麻友は頭を横に傾け、可愛く勇気に笑いかける。

勇気は麻友に一目惚れした様子で強く頷く。


勇気「ハイ!」


〇おしゃれなレストラン・中・昼


勇気と麻友が向かい合って座っている。

2人の前にはそれぞれケーキとコーヒーが置かれている。

麻友は美味しそうにケーキを頬張っており、勇気はこの上なく緊張した様子で麻友を見たり手元を見たりしている。

麻友はそんな勇気に気づき、


麻友「勇気さん、ケーキ食べないんですかぁ~??」


勇気「あ、いや、食べます食べます」


麻友は声を上げて笑う。


勇気「すみません、実は話したりするのがちょっと苦手でして、、、」


麻友「へ〜、そうなんですね!じゃあ今日も勇気出して誘ってくれたんですかぁ〜??」


勇気「・・・はい」


麻友はまた声を上げて笑い、一旦手に持っていたスプーンをテーブルに置いて勇気に会釈する。


麻友「ありがとうございます!」


勇気はどうすれば良いか分からない様子で、


勇気「あ、や、いえ」


麻友はまた声を上げて笑ってから少し真剣な表情で勇気を見つめる。


麻友「勇気さん、いいと思うんだけどなぁ〜」


勇気は期待のこもった表情で麻友を見る。

 

勇気「え、いいですか?ボク?」


麻友「はい!真面目そうで、凄く素敵です!」


勇気はあからさまに照れ笑いしながら麻友と手元を交互に見る。


麻友「おしゃべりも出来るようになったら、ホンっトに、サイっコウの男性になれますよぉ〜」


勇気はこの上なく真剣な眼差しで麻友を見ながら大きく深呼吸する。


勇気「・・・サイっコウのダンセイ、、、」


麻友は満面の笑みで、

 

麻友「うん!」


勇気の鼻の穴が大きく開かれ、

麻友が勇気の方に顔を近づける。


麻友「ねぇ、麻友のお兄ちゃんに会ってみない??」


勇気の表情が一旦固まる。


勇気「・・・お兄ちゃん?」


麻友「うん!まぁ、本当のお兄ちゃんじゃないんだけど、東京のお兄ちゃん?みたいな?麻友実は田舎者でさぁ~、東京出てきた頃は全く友達いなかったんだぁ~、そんな中で行ったコミュニケーションセミナーで知り合った人~、もう何でも話し聞いてくれて、助けてくれて、もう麻友の東京のお兄ちゃんだなぁ~って!」


勇気「へ~、そんな方がいらっしゃるんですね〜」


麻友「うん!でさ、今日勇気さんと話してて、ゼッタイ勇気さんも得るものあるだろうなぁって思ってさ!だからさぁ!ねぇ!どぉお?会ってみない!?」


勇気「ああ〜、お兄ちゃんとですか?」


麻友「あ、麻友もいるよぉ!?3人で会うよぉ!?だからゼーンゼン緊張しないよぉ!?」


勇気は何か違和感を感じている様子で麻友を見ている。


麻友「もぉ!ムシですかぁ〜!?こういう時の話し方とかも沢山教えてもらえるよ!?勇気さん、女の子をメロメロに出来るコミュニケーションマスターになれちゃうよぉ!?」


勇気が居心地の悪そうな様子でチラッと麻友の手首を見ると、「Let’sコミュマスター協会」と書かれた黄色いブレスレットが巻かれている。

勇気は違和感が確信に変わった様子でゆっくり深呼吸をする。


〇ボクシングジム・中・昼


上半身裸の勇気の横に黒人が木製のイスを持って立っている。


黒人「コノ、マヌケヤロ!」


黒人は思いっきり木製のイスで勇気の背中を叩く。

イスは勇気の背中で砕け、勇気はこの上なく苦しそうに叫びながら床に四つん這いに倒れる。


黒人「ナニヲカンガエテルンダ!!Man!!!」


黒人は木製のイスをもう1つ持ち上げ、思いっきり勇気の背中を叩く。

またしてもイスが勇気の背中で砕け、勇気は体をプルプルさせながら苦しそうに叫ぶ。


黒人はスマホを取り出し、勇気の顔の前まで歩き、勇気の顔を覗き込みながらスマホの画面を見せる。


黒人「コレ!メチャメチャワカリヤスイ!ネットワークビジネス!!」


黒人は勇気の髪の毛を思いっきり上に引っ張り上げる。


黒人「Hey man!!!」

 

勇気は激しく呼吸しながら苦しそうな表情で黒人を見上げている。


勇気「・・・でもsir、、、」


黒人は目を思いっきり見開き、信じられない様子で勇気を見て、


黒人「HEY!!!!!」


黒人は思いっきり勇気を頭突きする。

勇気はこの上なく苦しそうに目を閉じて唸る。

 

黒人「キヲ!!!ヒキシメロ!!!!!」


勇気「・・・はい、、、」


勇気「アーン!?」


勇気「ハイ!!!」


黒人「オマエワ!ナニヲスル!!!???」


勇気「可愛い女の子に愛されます!!!」


黒人「ハーン!?」


勇気「愛されます!!!!!可愛い女の子に!!!!!!!!」

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