第7話 注文品が来た

「このカップがテーブルに置かれたときのカチャンという音がいいですね」

「そうだね」

「おいしい飲みもには必ずいい音色がついているものですね」

「おいしさというのは味覚だけではなく音も重要だね」

「そうです。たとえばサイダー。あのシュワーという音。この音を聞くと実に爽快感が感じられます」

「私もその音好きだね。実においしそうな音色だね」

「それからジュースの中で氷とコップがぶつかり合う音」

「カランカラン」

「風鈴の音色のようで実に涼しげです。あ、そういえば、風鈴の音を聞いて涼しいと感じるのは日本人だけみたいですね。外国の人はそう感じなかったと思います」

「そもそも風鈴というものは日本の文化だからね」

「これらの音はおいしくさせるための演出効果としてわざとつけているわけではもちろんないわけです。自然と出てしまう音なわけです」

「それなのに実にいい音色だね」

「それにしてもこのクロワッサン、三日月パンという名前は実におもしろいですね」

「クロワッサンというフランス語は日本語の三日月という意味だからね」

「このクロワッサンはブールですね」

「よく知っているね」

「クロワッサンには二種類あるようですね。バターを使用したこのブールとマーガリンを使用したオーディネールですね」

「そう。このクロワッサンは本当にバターのいい香りがするね」

「パンにバターを直接塗ることによって食べるのももちろんおいしいですが、最初からバターを生地の中に入れて焼き上げたのも実においしいですね」

「このサクサクした食感がとてもいいね」

「一口にクロワッサンといても、作る人によってそれぞれいろいろなクロワッサンができるのもまたいいと思います」

「味としては甘さが微妙に違うしね。甘みが強いのもあれば控えめのものもあったりしてね」

「それから食感もです。サクサク感が強いものがあったり、どちらかと言うとしっとりしたものがあったりです」

「大きさもだね。小さめだったり、大きめだったりね」

「それから形のデザインもです。はっきりとした形、つまりまさに三日月の形のものが原型ですが、その形も微妙に作る人によって変化しているのもおもしろいと思います」

「三日月の形というより三角形の形をしたものがあったり、ひし形があったりいろいろあるからね」

「同じクロワッサンといっても全く同じクロワッサンはないかもしれませんね。すべてどこか微妙に違いますからね」

「それがこのパンを食べる楽しみでもあるね」

「まさにその通りです」   つづく

 

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