傭兵君は個人主義

@sodecaxtuku

第0話 かつての記憶、戻らない物

鳥のさえずりが聞こえる、どうやら近いようだ。

そう考えて身を低くして少しずつ近寄る、音を立てないように。少しずつ、少しずつ。


「いた」


そう言う少年の視線の先には二羽の鳥が切り株の幹にいる、羽を休めているのか当分動く気配は無い。

そして、少年が飛びかかろうと身構えた瞬間。


「ハールート!」


バサバサバサ!

母が少年を呼ぶ声に驚き鳥は飛び立ってしまった。その光景を呆けた目で数秒見つめ、ようやく動いたと思ったら元凶の方を睨んだ。


「母さん、後もう少しだったんだ。もう少しでピヨピヨ鳥を捕まえれたんだ、それを。」


ハルトはそう言って抗議するが。


「ねぇハルト、今日こそ畑仕事やってくれるって約束だったよね?」


「あっ」


母との約束をすっ飛ばした事に気づき、ハルトは顔面がどんどんと青褪めて行った。


「とりあえず、ね?」


ハルトは覚悟を決めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


数分後、そこには真っ赤になったお尻を涙目になり方はさするハルトと一仕事終えた母の姿があった。


「ふぅ、ハルト?ハルトは賢い子だからもう約束破んないよね?」


「も、もちろんだよ!」


母からの強い圧力と先程の強烈な出来事が絡み合い、そこには断れない雰囲気が流れていた。


「とりあえず、もう暗いからお家に帰りましょう。ハルトもお腹空いたでしょ?」


「うん!僕お腹ペコペコで今ならなんでも食べれそう!」


そう言うハルトのお腹から本当になんでも食べれそうな程に大きい音が鳴り、2人は笑いながら家へ帰った。


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ガチャ

家の扉を開けて家の中に入ると飼い犬のパラが飛びついてくる。


「わあっ!」

「パラ、びっくりするじゃないか」


「ワンッ!」


ハルトが注意しても気にも留めず、そのままじゃれついてきた。


「わっ!やめろって!やったなこの!」


「ワン!ワン!」


「ふふっ」


じゃれつく2人の光景を見て思わず笑みが溢れる。


「ハルト、とりあえず手を洗ってらっしゃい。手が汚いと食べさせないわよ」


「えっ!それじゃ洗ってこないと、パラ一緒に洗いに行こう」


そう言うとハルトはパラを連れて洗いに行く、それを尻目に母エルザは調理を始める。


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調理を始めて早30分、あと少しで完成になる為かエルザがハルトを呼ぶ。


「ハルト、そろそろいらっしゃい。ご飯の時間ですよ」


「はーい」


そう返事を返すとハルトはいそいそと散らかした物の片付けを初めて向かった。


「母さん、あとどれくらいでできそう?」


「うーん、あと数「帰ったぞー!」あら、おかえりなさい」


「おとーさんお帰りなさい!」


エルザが応えようたした時に父であるベルが帰ってきた。


「貴方、とりあえず手を洗ってきて。ついでに倉庫からワインを取ってきたら最高よ」


「任せてくれ!とりあえず昨日の飲みかけのワインを持ってくる」


「さっすが貴方♡」


ハルトはそのやりとりに慣れているのかパラに。


「いいかパラ、あーゆーのは馬鹿ップルって言うんだ。賢者様の本で見た」


と、この先役に立つか分からない知識を犬に教えていた。パラはよく分かってないがとりあえず吠えといた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それじゃあ、食べましょうか」


「「「いただきます」」」


「ワン!」


3人と1匹は感謝を述べてから食べ始めた。


「ハルト、明日でようやく6歳になるがどんなスキルが欲しい?」


「うーん、やっぱり勇者様みたいなスキルが欲しい!」


ベルは食べ始めるなり質問をしてきた、それに対してハルトは自分の憧れを口にした。


「やっぱり勇者様か」


「勿論だよ!僕もいつかは旅をするんだ!そして大陸で大冒険をして、最後に魔王を倒すんだ!」


ハルトは目をキラキラと輝かせながらそう言った。


「はっはっはっ、貰えるといいな。そんな素敵なスキル」


「うん!絶対貰うよ!それでおとーさんと一緒に初めての冒険に行くんだ!」


「おいおい、流石にそれは無茶だぞ」


ベルはそう笑いながら無理と断るがそれでもやっぱり嬉しいのか赤面をしている。

それに少し嫉妬したのかエルザがハルトに対して。


「あら?私は連れて行ってくれないのかしら?」


と、少し意地悪な質問をした。

そこで勿論と言わんばかりにハルトが。


「おかーさんは2回目の冒険だよ!僕が強くなって守るんだ!」


「ありがとねぇ」


自信満々にハルトがそう言って見せるものだから母もじゃあ安心だねと言わんばかりの笑顔を見せる。


「パラにもついてきてもらうぞー!」


そしてハルトは息を吸い込み。


「               !」


ハルトのその夢は家族の輪を暖かくさせ、自然と笑顔が溢れて出して。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


懐かしい夢を見ていた。それはもう二度と手に入らない、暖かい思い出。


「おい、ハルト。こっちに魔物の群れがきているが、どうする?」


「どうするも何も。決まっている」


「鏖殺だ」


ハルトはそう言い切るといつの間にか流れていた涙を手で拭い。


剣を引き抜いた。



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