私はこれから死ぬ

@sodecaxtuku

私はこれから死ぬ

私はこれから死ぬ、きっとそうなのだろう。


私は突然そう思った、突拍子も無く、ただただ漠然とした予感ではあるが。

しかし確信はある、理由はないがそう思った。


しかし、私は何で死ぬのだろう。

自殺?いや、包丁を持つのすら怖い私がそんな事考える訳ないし実行出来ないだろう。

刺殺?誰に?

絞殺?だから誰に?

でもとりあえず他人の手によって死ぬのは確定だろう。


私はとりあえずの結論をつけるとお茶を取りにリビングへと降りていった。

そこで夕飯の準備中の母と会ったので最後の別れを済ませる。


「ママ、私多分死ぬからバイバイ」


そう言うと母は少し笑った後に。


「はいはい、そんなの80年後に聞かせてちょうだい」


と適当にあしらわれるだけであった。

少し寂しかったが父にも言わなくてはいけないのでそこでバイバイした。

次に父にその事について話したがこちらも同様で、少し笑った後にこう言ってきた。


「はは、そんな馬鹿な事言ってないで。とりあえず部屋の片付けしなさい」


「うっ」


父にそう言われてバツが悪い顔をする、確かにここ最近片付けサボりがちだけども。

しょうがないので部屋の片付けをしに戻る。


とりあえず適当に床を綺麗にしてゴミをゴミ箱に入れていく。

その時自分のスマホから電話が鳴った。


「うん?」


誰からだろうと確認すると幼馴染の翔太からだった。

こんな時間にかけてくるのは少し違和感を覚えるが出る事にする。


「どうしたの?」


『あ、あぁ。話したい事があるから外に来てくれないか?』


「いいよ?」


少し翔太が挙動不審だったのが気になるが服を着替え、荷物の準備をして行く。

家の玄関から出るとそこで翔太は待っており、こちらを見ると「ヨッ」と挨拶をする。


「どうしたの?こんな時間に」


私がそう聞くと翔太は「とりあえず歩こうぜ」と言って歩き始める。

私はそれにテクテクと着いていく。


十分程無言が続いた頃、翔太が何故呼んだか私は気づいてしまった。

もしかして翔太は私を殺すつもりなのだろうか、それなら色々と辻褄が合う。


こんな時間になんで呼んだかは殺してもバレない為に、挙動不審だったのは悟らせないために頑張ろうとしたが出てしまった動揺。

そして無言だったのはこれから殺す相手に動揺と殺気を悟られない為!

しかも私に見えないように箱を持っている!これは凶器!


私はその衝撃の事実に気づく、しかしもう逃げる事はできないので覚悟を決める事にした。

翔太は公園に着くとこちらを向いて深呼吸した後にこちらを真剣な顔で見つめる。

私は翔太がどんな理由で私を殺そうとも良いように私は気づいてる事を伝える。


「翔太大丈夫だよ、なんで私をここに連れてきたのか知ってるから」


私がそう言うと翔太は目を見開いて驚き、口をわなわなとさせて聞いてきた。


「ま、マジで?」


そう言う翔太の顔がこれから私を殺すとは思えない程に腑抜けていて可愛い。


「うん、私だって鈍感じゃないんだよ?それに、夜に二人きりで公園に呼び出されたんだもの」


私は刑事ドラマが好きで良く見ているので分かる、これは邪魔者を消す為に呼んだとしか。

でも見知らぬ人に殺されるより翔太に殺された方が何万倍もマシだ。

私は覚悟を決めて目を閉じる。

「えっ!?」と言う声が聞こえた、きっと翔太もこんなにあっさりいくと思わなかったのだろう。


私が目を閉じて数秒が経った。

すると翔太は「目を開けて欲しい」と言った。

目を閉じさせて殺した方が楽だろうにと思いながら私は目を開ける、そこにあったのは。


「えっ!?」


ペアルックのハートのネックレス。

私がそれを見て驚くと翔太は私を真剣な顔と熱い眼差しでこちらを見て言ってきた。


「もし、もし付き合ってもらえるなら。これを受け取って欲しい」


私はそれを見て先程までの勘違いと翔太からの告白で顔が真っ赤になる。

少し体が硬直する。

しかし答えはもう決まっている。


「ねぇ翔太、目を瞑って」


私がそう言うと翔太は訝しみながら従ってくれた。

私はちゃんと目を閉じたか確認した後に持ってきた荷物からある物を取り出す。

そしてそれを翔太の首に巻いてあげる。

そして巻き終わった後に。


「目、開けて良いよ」


そう言うと翔太は目を開き、「えっ」と言った声を出した。

それもその筈、翔太の首に赤色のマフラーが巻き付けてあったのだ。

私は驚く翔太を尻目にネックレスを手に取り、自分の首にかけ。


「はい、喜んで」


満面の笑みでそう答えた。








二十年後


私がいつものように夕食の支度をしていると娘が二階から降りてきて私にこう言ってきた。


「ママ、私多分死ぬからバイバイ」


私はそう言う娘にかつての自分を重ねて少し笑い、娘にこう言った。


「はいはい、そんなの80年後に聞かせてちょうだい」



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