私の手についた天職

苦贅幸成

第1話

 私は、今まで誰からも必要とされることなく生きてきた。だが、やっと巡り会えた。天命とも言うべき仕事に。私の仕事は、弱き人の願いに寄り添い、叶える仕事。


 深夜、依頼者の自宅の寝室。彼はベッドの上に仰向けになっている。私は彼の上に馬乗りになっている。今回のオプションは、首絞め。

「始めてもいいですか」

「…はい」

 私は、彼の首を両の腕で掴み、気道を塞ぐ為徐々に力を込めていく。

「う…」

 ぐっ。

「か…」

 ぐぐっ。

「…」

 ぐぐぐっ。

「…はっ」

 私は力を抜き、首から手を離した。

 彼は咳き込み、必死に息を吸っている。

「最後までやっていいんですよね?」

「…」

 私は彼の返事を待った。

「おねがい…しま…す…」

「わかりました」

 私はもう一度彼の首を両の腕で掴み力を込め、自分の体重も掛けながら圧迫する。


 彼は死んだ。彼の死に顔からは、苦痛の色しか見て取れない。私は、文字が書かれた小さな紙を彼の胸に置いた。


 R.I.P._


 紙に書かれた文字を一瞥し、私はこの場を去った。

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私の手についた天職 苦贅幸成 @kuzeikousei4

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