赤 ガントリーナは笑い続ける 7
3.従者は縦ロールツインテがお好き(2)
ところ変わって寮の部屋。王叶の自室。
おそらく管理人は死んだ。彼がここまで見つからずにいたのは彼が上位存在だったからだというシャスティークの想像を元に、そこからの行動を決めた王叶たち。
きっとこの建物には結界がある。だから色を保ったままなのだろう。
幸い移動用の簡易アームヘッドもある。食料もだ。
だが彼が死んだということは、守っている結界も解かれる可能性があるということだ。
ならばじっとしている暇はない。そのせいで結局眠らずに少しでも使えるものをまとめていたら、いつのまにか夜も開けあっという間に夕刻だったというわけだ。
それなりに、いやかなり、十分にお釣りをつけてもいいくらいに時間をかけたのだ。大体はまとまった。ついでに少し寝た。頭スッキリ。睡眠も大事な準備だと気づく。
制服。腕章。どれもこれも大事なもの。
彼女が
今日からこれが、もう一度共に歩む相棒の一着なのだ。
『これが主人の本来の姿ですか』
「ははは....姿っていうのはちょっと違うかな。.....まあでも、そうかもしれないね」
「で、ここからどこへ向かう?と言っても移動もあまり簡単には出来そうにないが」
機神には長く乗れない。おそらくだが、そう決まっている。ルグルフェンが管理人から聞いたことだ。だから移動には使えない。
となると移動は必然的にこの簡易アームヘッド「トゥリット」を使うことになるわけで。
「どうする、このおしゃべりロボ。静かにさせる方法はないのか?ワイは小さくなれるが、こいつは.....、どうしたって運べねえだろ」
「あー。忘れてた。どうしようかね?誰かいい考えある?」
聞いたところでどうしようもない。この場にいるのは王叶、ルグルフェン、シャスティークの三人だけ。それはただの意味のない会話のつもりだった。
「機神は別空間に収納できる。これは知っておくべき常識ですよ」
「誰だ!」
その場に現れたのは男。会話を問いに変えた男。その名は。
「ガントリーナ・ロールシャッハが従者、
彼は確か転王輪学園での等識理王叶の同級生である。
手には王叶と同じヴァークスパーク。それを天高く掲げた謝梨は呼び寄せるように、その名を叫んだ。
「さあ来い!赤の機神!ヴィファルコォ!!!!」
『ガッガァァァァァァンッ』
応えるように大地に響く声。空に赤い紋章が現れ、そこから這い出るように少しずつ姿を現した。
「とぅ!」
機神の中に入る謝梨。
「赤色の.....機神....」
それは鳥のような姿をしていた。だが肩に、足に、そして指に、いくつもの砲門。
一目見て、それがどういう機神なのかがわかる。
「_______これは、なんともまあ戦いにくそうな。でも先方がお望みなら、行くしかないね。でしょ?ルグル!シャスティーク!」
「そうだな!」
『ザッパァァァァァンッ!』
相手のヴィファルコの真似だろうか。サメだからなのだろうか。波しぶきっぽい掛け声を突如叫ぶシャスティーク。
「ねえ、何それ?」
『いえ、別にやつに合わせようとかそういうわけでは.....。いえ、なんでもありません。忘れてください」
「流石にそれはムリだろ.....」
「ひとまず行くよ。丁重に扱ってあげないとね。なにしろ.....、大事な大事な情報持ち様だ」
そう言って王叶はシャスティークへと飛び込む。ルグルフェンもそれに続こうとする。
「あ、そうだ。ルグルはそこで見てて。昨日のこともある。休んでて欲しい」
「だが....」
「大丈夫。もうああはならないから。それに機神同士のバトル。離れた方がいいかも」
「わかったよ。でも、無理だけはするなよ」
『貴方が言えた義理ではない気もしますが...。主人、前を見据えてください。ほら来ますよ!』
「敵を前にダラダラ話し込むとは...。こちらから行かせていただきます!覚悟しやがれやぁ!」
「なんかキャラ違うくない!???」
ヴィファルコの肩の砲門が光る。軌道は直線。これならば避けられる。
だがそう思って避けた矢先、それを見越してかやつは脚部に備えられた砲も発射していた。
避けきれない!
『「うわああああああああ!」』
機神のダメージは操縦者にも反映される。相手はなかなかの手練。どうやら様子見はしていられないようだ。
「踏み込むよ!」
「させません。このまま蜂の巣だぁ!」
盾を前に構え前進。その動きに合わせてかヴィファルコは、持てる全ての砲門から一斉射撃を行う。
「おいどうするんだよ王叶!」
「ルグルは見てて言ったでしょ!大丈夫。今から勝つから」
「寝言は.....寝て言えぇぇぇぇぇ!お嬢の恨み晴らさでおくべきかぁ!」
ただ前進。小さな射撃は受ける前提。盾は傷を最小限に抑えるためのもの。大した問題はない。
近づけば近づくほど、やつは不利になる。なぜならあいつは、王叶の見立てでは須磨梨謝梨は機神の契約者ではない。
なら、勝てる。
機神は、適合者では、契約者には勝てないのだから。
距離が縮まる。もう剣の間合いだ。横薙ぎに一閃。
ヴィファルコは後ろに飛び退きこれを避けるも、やはり動きが鈍い。これは銃火器が重いからではない。彼がまだ機神のフルパワーを引き出せていないからだ。
一撃、二撃とどんどん攻めに転じるシャスティーク。前回の戦いで使った技は必要なさそうだ。
その余裕ある立ち振る舞いが徐々に相手を追い詰める。
「しまっ_______」
逃げに転じ、慣れない動きが増えたからか。足元のバランスを崩したヴィファルコ。
切先が喉元に触れる直前でシャスティークは手を止める。
「くそっ。終わりか.....」
「さあ歯を食いしばれ。私は決めたよ。今を、そしてこれからのことを。_____だからキミもさ、決めなよ」
「俺に、何を決めろと?」
「ここで私に倒され従うか。抗ってお嬢とやらの恨みを晴らすか」
尋常ではない雰囲気。一歩遅れれば飲み込まれてしまいそうだ。答え次第では今にも振りかざすと言わんばかりの構え。
だが須磨梨謝梨はぶれない。彼もまた心に一筋決めている。
「______はっ、ははははっ!....なんだよ、それ。そんなのさ」
緊張が解けたのか。戦いが終わったことを思い知らされたからか。ひとしきり笑う須磨梨謝梨。だが覚悟を、そして考えるまでもないと見せつけるように。
「_______愚問だな。俺は、お嬢一筋だぁ!!!」
須磨梨謝梨は吹っ切れた。
「ふふ。ふははははは!!!気に入った!よーし。この戦いは終わりだ。で、勝敗なんだけど、私の勝ちでいいよね?」
決着はついた。機神から降り立つ二人。
「ああ!.....いや待て!まだお嬢の恨みが!」
「いや忘れてたらまじでごめん。私、ロールシャッハさんに何かしたっけ?」
単純な疑問。当の王叶に全く心当たりはない。どうやらその言葉は彼にとってあまりにも、信じられないものだったらしい。
「______な!?なんだと.......。貴様が今日学園を抜け出したことでお嬢が体育ペアであぶれ一人になったと言うのに!???」
『「「は?」」』
「え、それだけ?」
「それだけとはなんですかそれだけとは!お嬢に惨めな体験をさせるなど言語道断だ!」
「それ私に言われてもさぁ....。キミがどうにか出来なかったの!」
「体育は男女別だ!俺にはお嬢をただ遠くから眺めることしか出来ない!ああ、一人で柔軟するお嬢、身体が硬くて全く手が足に届かなくて......、可愛かった......」
なんとも言えない逆恨みだ。とばっちりもいいところだ。しかも須磨梨謝梨自身、砕けるとなかなかめんどくさいようだ。むしろ機神で戦っていた時よりも勢いがある。
「で、そのロールシャッハさんはこのこと知ってるの?」
「何だ?尋問か?お嬢は関係ない!俺が自らしたこと。むしろ従者ならばこれくらい行って当然!」
「いやドヤってもなんか色々おかしいからね、キミ」
「王叶?ワイが代わりにこいつを殴ってもいいか?」
ルグルフェンが呆れている。それもそうだ。一応、
だがガントリーナ・ロールシャッハ、こんなにも慕ってくれる従者がいたのか。周りに振り撒くタイプだ。若干、いやかなり迷惑だが。
「ねえ、ルグル。彼のあの真っすぐさ。あそこだけ見習ってもらえないかな」
「やなこった」
ちょっとだけ、そうほんのちょっとだけ、それこそ定規の1mmのあの間くらいだけ羨ましいなと思う等織理王叶であった。
否が応でも王であれ じほにうむ @Zi_honium
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