第26話


「 りさっちじゃない? 」


その呼び方は…


私とちあきは手を離すと、、二人同時に目を開けた。


色付きの眼鏡をかけた男子生徒が、私達の前にちょこんと立ってこっちを見ている。


「 どうしちゃったの!桜の木なんかに手を合わせちゃったりしてさ! 」


「 これはその~ 今日から学力テストがあるので、お願いを… 」


「 へぇ、運を天に任せるって感じかな? 上手くいくように僕も願っているよ! 」


確かこの人、森…


「 ありがとうございます!よしきさん! 」


「 覚えてくれてたんだ僕のこと、さすが理さっち、嬉しいじゃない? 」


「 あ、いえ… 」


この人、最初に会った時から、見かけはちょっと抵抗あるのよね、けど、笑うと可愛らしくて、それでもって私のことを、りさっちなんて呼んでくれるから、なんとなく親しみやすいって感じで、すごくいい人っぽい!


ちあきは、私の制服の袖をつまんでクイクイ引っ張りながら、恥ずかしそうにしている。


二度見しながら、よしきさんにちょこんとお辞儀をするちあきを、じっと見つめているよしきさんが囁いた。


「 入部、できるといいね…」


更にちあきをジッと見つめ直し、よしきさんは色付きの眼鏡を外した。


眼鏡を外すと綺麗な顔が現れ、優しい眼差しで私達にウインクを…


「 それじゃあ また 」


甘い声でそう言い残し、よしきさんは行ってしまった。


すると突然、ちあきは私の手を力一杯ギュウーーー!っと、


「 イタタッ!ちょっとちあき… 」


握りしめると、深く深呼吸をしながら囁いた。


「 わたし…ウインクが似合う人…初めて見た…カッコイイ…」


「 ほんとだね 」 ちょっとオーバーな気がするけど…


ちあきはよしきさんの姿が見えなくなると、また、大きな桜の木に手を合わせてお願いごとをしている。


「 ちあき? また、テストのお願いしてるの? 」


「 うん…テストがうまくいきますようにって… …軽音楽部のねッ! ♪ 」


やっぱりちあきは真剣に考えている、お願いします!


西島先輩…


「 ねぇちあき? 」


「 …何? 」


「 何でもないよ、学校遅れちゃうね!行こうか? 」


「 う、うん! 」

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