第6話 東高校タテモノ研究部
「でさ、先生がふざけて……」
「あはは、信じらんない!」
私と樹と結生は居間で談笑していた。研究部全員で片付けてくれた部屋は以前よりも明るくなり、昔はハエのたかっていたキッチンでは実月がスイカを切ってくれている。盆栽が趣味とか言う渋い阿辺は庭で草木の剪定をしていた。
私は樹が好きだけど、この気持ちは樹が死ぬまで心に留めておこうと思う。タテモノと付き合える男の子なんてそうはいないだろう。現に私は彼を利用してしまったんだし。
今はただ、この楽しい時間があるだけでいい。それでいい……
「スイカ切れたよ!」
実月の声に、皆でテーブルを囲む。私は嬉しくて、満面に笑みを浮かべた。
寂しいのは、皆が帰っていくときだけ。でもきっと、明日もまた来てくれる。そう思って、私は家の中から手をふった。
次の瞬間――目の前がブツンと暗くなった。
何……?何が起こったの⁉
しかし、考える間もなく、私は意識を失った。
僕が家から出た瞬間、メキメキと音を立ててタテモノが崩れた。
先輩たちがぽかんとタテモノを見上げる。
僕は手の中に潜ませていた、緑さんの人形を無造作に道に放り出した。
友達が人形しかいなかった緑さんの、核。
僕を好きだったか知らないけど、監禁しておいて許されるはずがない。
だから騙してやったのだ。
「ごめんね。生憎僕は、タテモノ研究部員じゃないから」
逃げたくて堪らなかった家が崩れるのを見つめて、僕は呟いた。
タテモノ 七々瀬霖雨 @tamayura-murasaki-0310
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます