バナナマン~腹筋ローラーでタイムリープ~

骨肉パワー

プロローグ 始まりのタイムリープ

第1話

 時間。それは不可逆なものだ。過ぎ去った時間は戻らない。そんなこと、子供だって知っている事だ。そう、当たり前の常識だ。


 もしもの話をしよう。もし過去に戻れたら。...なんて事は誰でも1度は考えた事があると思う。


 じゃあ実際に過去に戻れたと仮定しよう。あなたは未来を変える事ができるだろうか?結論から言えば、未来を変える事は可能だ。...ただし、常識の範囲内での話だけどな。


 俺の好きな言葉に「因果」というものがある。全ての物事には原因と結果があるという言葉だ。結局のところ、物事は積み重ねによって成立している。何かを成し遂げる為には、それ相応の積み重ねが重要だ。つまり、未来を変えようと思ったら努力をする必要があるという事だ。


 俺から言わせてもらえば、努力も立派な才能だと思う。1つの物事をただひたすらに繰り返すその行為は、狂気にも近い行動だ。だが、その狂気こそが未来を変える鍵になる事を、俺は知っている。常識という殻をぶち破らない限り、未来を大きく変える事などできないのだから。



20××/07/01 PM18:00


「.......」


「...んあ?」


 微睡から目を覚ますと、そこは見慣れた図書室だった。窓の外を確認すると、すっかりと夕方になってしまっている。


「確か、俺は小難しい哲学書を読んでいたはずなんだが...」


 周囲を確認すると、左側に時間に関する哲学書が無造作に置かれていた。


「結局、何が書かれているか半分も分からなかったな」


 頭の良い人だったらこの本の真意も理解できるのだろうが、残念ながら俺の脳味噌の偏差値は高くない。分かった事は、時間は戻らないという部分だけだ。俺は本を元の場所に戻して、帰宅した。



PM20:00


「...ふっ!!ふっ!!!」


 ただただ無心に腹筋ローラーを上下に転がす。腹筋ローラーは自重を利用したトレーニング機具だ。取っ手を掴み、ただひたすらに上下に転がす。たったのこれだけで、上半身に物凄い負荷がかかるような仕組みになっているのだ。


「...98、99!」


 100を目前にして、俺は一旦腹筋ローラーをストップさせた。この半年間、俺は100回を目安に毎日腹筋ローラーを転がしていた。そして、1週間前からだろうか、腹筋ローラーを100回転がすと、ある特異な現象が起こるようになった。最初は幻覚とかデジャブかと思ったが、今はもうその現象に関しての答えを確信している。


 ___つまりそれは、タイムリープだ。


「...100!」


 瞬間、水の中に落ちていくような感覚の後、俺の意識は暗闇へと飛んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る