最終話 殉職、パイロットフィッシュ達

「はぁ、なんか調子でないのよ、三号は?」

「わしもじゃねぇ、陰でひっそり生きてたんじゃが、パイロットフィッシュ故なんだか、あまり良い環境じゃない所に入れられたからか、環境の変化によるものなんだか、とにかく調子が悪い」

「ほかのパイロットフィッシュ達は、そこまでって感じはしないわね」

「あんさんも、女王気質がすっかり抜けちゃったんかい?」

「やめてよ、その女王気質って」

「結構、当てはまってると思ったんじゃが」

「違うわよ」

「そうか」

「あんたは、ジジイみたいなキャラのまんまね」

「博士と呼んで欲しいんじゃが」

「ジジイで良いじゃない」

「…これでも最近は、あの、でかいらんちゅうの姿が見えるのに、なぜか壁に当たって、それ以上進めないから、もしや、隠しダンジョンではないかと研究していたんじゃが」

「ただのゲームオタクじゃない?」

「…攻略出来るか、考えるのが楽しかったんじゃが、もう、時間がない」

「はぁ、付き合ってらんない」




その後、二号はひっそりと消えてしまった。

三号も、二号が消えた後、少し時間を空けてから、姿を消してしまった。

彼らは、死んでしまったのだ。

「殉職…で、合っているのだろうか、仲間の死って、なんか嫌な物だな、まぁ、イヤなのは当たり前か」

「一号ただ一人になってしまったようだな、ゴールデンアカヒレ」

「四号、そちらは?」

「なんとか三匹残ってるが、いつどうなるか分からん」

「そうだな」

「それにしても、ドジョウのジョウさん、随分と元気だな」

「あぁ」

「隠れてる事が、多いと思ったんだが」

「この間、水槽から飛び出してたな、ドジョウは飛んで水槽から飛び出しちゃう仲間もいると、話してたぞ」

「そうなのか」

「それで死ぬ仲間もいるんだとか、ドジョウの間での、有名な噂話らしいが」

「へぇ」

「それにしても、この水槽、落ち着いてるようで、落ち着いてないんだろうか?」

「個体の体調次第だろうな」

「いつかは、二号、三号のように、仲間を失ってしまうんだな」

「そうだな…」

「なんだか、パイロットフィッシュというのは、ほんと、ツラい運命、背負ってるよな」

「しかしな、それが俺らに課せられた仕事だ」

「そうだったな」




その後、ドジョウのジョウさんと一号が水槽内から姿を消してしまった。

ジョウさんは飛び出してしまい、見つけるのが遅くなってしまった為に、水槽外で死体が発見され、一号はそのまま水槽内で死んでいってしまったのだ。

さらには、黒い出目金が二匹入った後、一旦は落ち着き、隔離ボスも隔離されなくなったが、出目気味の金魚、白蝶が突然死をしてしまった。

元気そうに見えても、魚とは分からない生き物である、

現在、パイロットフィッシュはアカヒレ二匹だけの状態である。

石巻貝も導入されたが、気付いたら死んでいる個体が数匹いる。

金魚もボスと黒い出目金二匹が生きているが、これからがどれだけ生き残ってくれるかは、その生体が生き抜く力があるかどうかで、決まってくるのだ。

パイロットフィッシュであろうと、どんな魚であろうと、貝であろうと、生き物を飼うと言うのは、簡単な話ではない。

とくに魚というのは、小さい体で生きている。

その分、死にやすい生き物である。

それでも大切に育てれば、長生きする個体もいる。

観賞用ペットとして、生まれてきた魚たち

その命を守れるのは、飼い主だけである。

パイロットフィッシュ達の存在は、本当は主人公レベルで必要な役割であるのだった。


                    終わり

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主人公気取りのパイロットフィッシュ まるみ @marumi-tama

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