第三話 潜む! 増えるスネイル達
水槽内は、少しずつ水が出来上がり、魚たちは落ち着いた生活になってきている。
水草はまつもが入れられているが、後は特には入ってないようだ。
あるのは赤やピンク色の葉っぱを模した人工物である。
それでも魚にとっては、隠れ家になったりする為、水槽には必要な物である。
パイロットフィッシュ達も水槽を悠々と泳いでいる。
主人公レベルの魚が入ってくるのも、時間の問題となっている。
自分達が主人公と思っているパイロットフィッシュ達は、自分達が泳ぐには広すぎる水槽に、満足しながら生活している。
「良い水槽になってきたわねー、アタシ達が頑張って踏ん張って出しているおかげね」
「やめてよ、そういう言い方」
アカヒレのオス、六号に、ゴールデンアカヒレのメス、二号が話しかけた。
「あら、女王気質のゴールデンアカヒレのメスね」
「私はそんなんじゃないわ」
「学者に憧れてるんだっけ?止めなさいよ、合わないから、それに、水質向上の為のパイロットフィッシュっていう生活が合ってないようね、そういった所が、お城でワガママ言いまくってるような女王様みたいで、あなたにはお似合いじゃない?」
「なによそれ」
「見ればわかるわよ、元気無さそうだもの」
「うるさいわね」
「強い魚…といっても生き物だもんね、まぁ、パイロットフィッシュに選ばれたんだから、この生活でもしょうがないわよ」
「そうね…」
「さてと、アタシはまつもの方で、泳いできましょ!」
そう言い六号は泳いで行ってしまった。
二号は人工物の赤やピンクの葉っぱを模した物の所で休む事にした。
そろり、そろりと、六号のそばを動く気配があった。
水槽の水の中を泳ぐわけではなく、ソイルや水槽のガラス部分を移動しているようだ。
「今日も、美☆生物たちが歌っているようね」
六号は歌声に耳を傾けていた時だった、視界になにかが映った。
「あら?何かしら?」
六号は、何かが見えた方向に向かって泳ぐと、巻貝がガラスの上を這っていた。
「あら、巻貝ね、あの形は…サカマキガイね」
スネイルとは巻貝の俗称で、水草などにくっついている事があり、知らず知らずに水槽の中に潜んでいる巻貝である。
水が合えば大量に増える事もあるが、お掃除する巻貝である為、魚からしてみれば有害ではない奴らである。
人から見てみれば、見た目が悪かったりして、自分から入れる人はいないようだ。
魚から見れば無害でも、人から見れば厄介な存在のようである。
「スネイルちゃんって、小さくてかわいらしいわね」
六号はスネイルに対し、悪い印象はもっていないようだ。
「けど、見てる限り、増えてないし水かしら、人間の存在かしら?」
水が合うと大繁殖する…そんなスネイルが増えない事が、六号からしてみれば気になる事らしい。
「でも、まぁ、まつもにくっついてきたと考えると、それ以外に水草はないし、増えても人間がどうにかしているのかも知れないわね」
魚によっては、スネイルを食べてしまう魚もいるが、ゴールデンアカヒレも、アカヒレも、スネイルは食べ物ではないようだ。
六号は再び緩やかに泳ぎ始め、餌が入ってくるまで、好きに泳ぐことにした。
夜、餌が入ってきたころ、再びスネイルは何者かに捉えられた。
その事を魚は気が付かなかったようで、誰も慌てたりはしなかった。
魚たちは知らないが、この水槽内の主人公が現れるのは、もうすぐそこである。
スネイルも主人公ではない、では、何が主人公なのかは、魚の飼い主である夫婦しか知らない情報である。
第三話 終わり
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