第6話 初配信3 〜あと先考えず行動するのはやめましょう〜
「ナコたんと二人はどれくらい仲が良いの?か。あぁ、俺はかなり良いと思うぞ。お互いに。」
実際先日一緒に買い物に行ったくらいだ。仲が悪いわけがない。しかし、雪の方は……
「私とあの女の仲が良いわけないじゃないですか!ふざけてるんですか?あの女、普段の配信でつらつらとワタシに対する恨み言を並べているの知ってるでしょう!」
・まぁ、ジンくんと仲が良いのは当たり前だよな
・あれメアちゃんだったのかw
・でも、ナコたんの話ではもっと悪女みたいなイメージじゃない?
・あくまで、ナコたんから見た場合だから
・白崎ナコミ/そうだ!そうだ!普通に考えて仲良いわけないじゃん‼︎
・本人w
・なんか、普通に仲良さそうな雰囲気がする
・分かる
「はぁ、じゃあ次で最後にしますか。時間的に丁度良いですし。はい、ではなんかどうぞ。」
・めっちゃ疲れてて草
・え?もう一時間経つの?!
・めっちゃ早く感じたわ
・どこで配信やってるの?
「どこで、って、どっちの家ってことですかね?それなら先輩の家ですよ。先輩の家、防音室ありますし。」
・前提条件が同じ家で草
・防音室で二人っきり、何も起こらないはずもなく———
・白崎ナコミ/何も起きないで!!
・願望で草
・え?普通に家に防音室あるの?
「俺の母親がピアノやってたんだ。今は両親とも海外にいるから家にはいないけど、かなり有名なピアニストらしい。」
「先輩はピアノまったく弾かないですけどね。」
「うるせぇ。俺には音楽の才能がなかったんだよ。というか、お前がおかしいんだよ。なんでちょっと触ったぐらいでできるようになるんだ。」
そう、俺はピアノまったく弾かないのだが、なんとこの後輩、俺の家に来るついでにピアノをちょっと触っていたら弾けるようになってしまったのだ。それもかなりの上手さで。もう、驚きを通り越してため息しかでてこない。
「先輩だってちゃんとやればいいじゃないですか。ほら、私が座ったピアノでやれると思ったらやる気でません?」
「全くでねぇ。」
「またまた〜。先輩、素直になっていいんですよ?いつもいじっぱりですから。ほら、素直になってメアちゃんの胸に飛び込んできてみたらどうですか?」
「どうして、そんな話になるんだ!まったく。」
雪は両手を広げて、前に出す。こいつ、はなから俺が抱きつかないと分かっているくせして構えてやがる。しかも最高潮のニヤニヤ顔で。
……でもこれ、実際に抱きついたら面白くないか?
……………やるか。
一つこいつには学習してもらおうか。俺を舐めてると痛い目に遭う、と。俺はニヤリと笑い、
「でも、そうか、そうか。確かにな。うん。俺が悪かったよ。俺ももうちょっと素直になることにするよ。ごめんな。」
そう言って雪の体を思いっきり抱きしめた。雪は数秒間、目を白黒させた後、何をされたか理解したようで頬を真っ赤に染める。
「にゃっ⁉︎な、何やってるんですか先輩!?」
俺の背中をバシバシと叩く雪。
「いやー?お前が甘えて良いって言ったからなー。俺も心配かけすぎたよ。ごめんな。」
ふっふっふっ、作戦大成功!俺を侮るからこうなるのだ!
「全く感情こもってないじゃないですか!!私が悪かったですから!悪かったですからー!だから、とにかく離れてくださーい!」
その言葉を聞き満足した俺は雪を離す。はっはっはー!完全勝利!!俺を何も抵抗しない小動物と同じだと思うなよ!
雪は未だに少し頬が赤く、それを隠すように俺から目をそらしている。うん。大満足。
…………………。
……でも、あれ?俺かなりまずいことした?
……だってさ、いくら雪が煽ってきたからと言っても、こんな大人数の中いきなり抱き着いたわけでしょ?……どうしよう?何て声かけよう……。
俺は急に我に返り、だんだんと恥ずかしさがこみ上げてくる。雪も俺の顔を見て何か察したのか、何とも言えない空気が俺たちの間に流れた。
「…………」
「…………」
・へぇ、ジンくんのお母さんってピアニストなんだ
・てぇてぇ
・www
・メアちゃんもっと言ってやれ
・メアちゃんの胸にはわいが飛び込む
・変態ニキは帰ってもろて
・うぇ?
・え?
・まじで?
・え?まじで抱きついてんの?
・ジンくんのアバター止まってるしガチっぽい
・マジかよ!?
・うおーーーー!ノマカプガチ勢俺氏、大歓喜
・お、俺の場所が…
・変態ニキの場所は最初からありません。
・これもうカップルだろ
・ジンくん後先考えてないw
・てか、ナコたん圧倒的負けヒロインで草
・白崎ナコミ/うるせぇ!とにかく、わたしのジンから離れろー!
・www
・おめぇーのじゃねぇよ。
・大丈夫だ。俺は負けヒロインの方が好きだ
・お前に好かれてもどうにもならんのよ
・結局俺たちは何を見せられているのだろうか
・てぇてぇ
しばらくコメント欄が流れていくのを呆然と眺めていた俺だったが,流石にまずいと思い急いで配信をしめる。
「あ、と、とにかくこれで質問は終わるぞ!じゃあ次回の配信でよろしく。またな。お疲れ〜。」
ふぅ〜、これでとりあえずこれで配信は閉じれた。あとは————
「おい、大丈夫か?雪。」
俺は先程から俯いている雪に声をかける。すると、雪は顔をバッ、と上げ————
「大丈夫なわけないじゃないですか!なんでいきなり配信中に抱きついてくるんですか⁉︎馬鹿なんですか⁉︎」
俺への大量の文句を並べる。
「お前が散々煽るからお前の要望通りにしたんだろうが!」
「まさか先輩に配信でやるような度胸あるとは思いませんよ!」
「まるで俺がチキン野郎みたいじゃないか。」
「実際そうじゃないですか‼︎」
…………。確かに否定はできない。
まぁ、ただ、と僕は思う。
まだ微かに頬を赤らめている雪。こいつも口先だけで同じようなものだろう。結局俺たちはお互いがチキンで、お互い、人のことは言えない、そういうことだった。
ちなみにだが、その後、もう一度抱きついたら面白そうだな、と思った俺だったが、流石に気が引けてしまってやることができなかった。
……別に日和ったからではない。ないったらないのだ。
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